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1ヶ月だけの渡り鳥

大学時代は1ヶ月だけ部活動をしていた。一般常識的に考えると部活動に所属していたとはみなされない期間ではあろうが。その過去について書く。


大学入学前は何か必ず部活動をやろうと思っていた。私は高校まではずっと野球をしていた体育会系だったので、大学でもサークルではなく、しっかりとした部活に入ろうと思っていた。

野球は大学以降はもう嫌だと思っていたので、何に入るか迷った。アメフトやラグビーに興味があったが私の大学はどちらも強豪で高校時代から強豪だった選手が集まるところだ。というか私立大学の運動部はほとんどが推薦者のための活動場所のような感じだ。私みたいな素人は入部しても練習試合すら出られないだろうと思ったので諦めた。

他に大学から始めても大丈夫そうな部活を考えた。自転車(特にロードバイク)が好きだったので、自転車競技をしたかったが部自体が無かった。

そこで見つけたのが「ワンダーフォーゲル部」だった。簡単に言えば山登りをする部活のことだ。私は高校時代も浪人時代も山登りやハイキングをしていたので、これしかないと思い入部することにした。

ちなみに隣の部室には「山岳部」も存在したが、人影が無くヒッソリとしていたので入ろうとは思わなかった。「ワンダーフォーゲル」の方がネーミング的にもカッコいい。ワンゲルと山岳部の違いは「垂直方向の動き(≒クライミング)があるかどうか」とワンゲルの先輩は言っていた。(正しいかどうかは不明)


まずは、体験入部というか歓迎会があった。もちろん内容は立食パーティーなどではなくハイキングだ。大学の裏山をハイキングしながら、先輩に色々な話を聞くというものだった。

ワイワイとした雰囲気で登り、山頂でみんなでご飯を食べた。とても楽しかったので入部を決意した。「お盆や正月は基本自宅ではなく、山の中で過ごすことになる」と言われたが、基本的には活動が週3日(練習やトレーニング)だと言われていたので遊びや勉強とも両立できるかと思った。


だが、いざ活動が始まってみると思っていたような感じではなかった。語ると長くなってしまうので箇条書きにして書き出そうと思う。

①時間的拘束がキツい
 全員が講義が終わって揃うのを待つことになるので必然的に練習開始が19時前ごろになる。講義がお昼で終わっても夜まで大学に居続けなければならない。19時ごろから2時間程度トレーニングやミーティングをすると大学を出るのは21時ごろになる。帰るのがかなり遅くなって朝型の私にはしんどいなぁと思った。



②練習が理解不能

 ワンダーフォーゲル部の練習というのは基本的にはトレーニングが中心だ。(私が在籍していた時に知る限りでは)  筋トレをするのは理解ができるが、ランニングの練習で謎の30分間走的なのをさせられた。それも全力ダッシュの30分間走だ。浪人明けのなまった私の脚にはしんど過ぎた。

「果たして、このダッシュ力が長時間をかけて山登りをする際に必要なのか」と思った。どこか「しんどいこと」や「苦しいこと」「がむしゃら」という価値観で先輩たちは走っているようだった。山登りに必要なトレーニングというよりも、体育会的なノリでとりあえず苦しい練習をすることが美徳だとされているように感じた。この空気感にたまらなく嫌気がさした。

おそらく伝統的に代々続く練習や風潮に誰も意義を唱えられないからなのであろう。古臭い集団だなと感じた。


③装備品が高い

 これは下調べをしていなかった私にも少し非はあるが、最初に揃える装備品が高すぎる。靴やザック、その他の装備品をすべてで約20万くらいかかるらしい。「買えば一生使える物も多い」とは言われたが、すぐにそんな大金を用意できない。装備品にお金がかかることくらい部活紹介の時に言ってくれと思った。ましてや予備校通いや浪人の受験で多額のお金を使ってもらったところである。「山登りをするので20万出してください」とは親には言えなかった。


他にも、先輩が組んだ計画に沿って山登りをせねばならない、週3日の活動と言っていたのに、他の曜日も既定のコマ数は自主トレ(重りの入ったリュックを担いで階段を登るなど)をしなければならなかった。話が違うと思った。

今まで部活をはじめ、何かを辞めることが無かったので葛藤はあった。「辞める」ことが自分のプライド的にとてもカッコ悪いことだと思っていた。しかし、私は「山登り」だけをするために受験勉強をして大学に来たわけではない。部活動中心の生活はどうしても自分の中でイメージできなかった。

そして私はGW明けに退部を決めた。用品の注文を出す直前だった。全員の前で辞める旨を伝えさせられた。それもどこか気持ち悪かった。

私ともう1人女の子も同時に辞めるようだった。ミーティングが終わった後はその子と逃げるようにして部室を去った。その子は高校までは文化部で「ワンゲルの練習がきついから辞める」と言っていた。確かに女子部の練習もかなりハードだ。


とにかく、部活を辞めてよかった。山登りもプライベートで楽しみ、サークルで今も続ける趣味を見つけ、読書をしたり、色んな勉強をしたりした。

「部活動」とはそういうモノだという意見があればそれは確かにそうだ。私が軽薄に考えていた部分もあろう。ただ、そうではない。

この出来事から得たことは「辞める勇気」だ。続けることは確かに素晴らしいが、同じくらいに、総合的に判断し「辞める」を選択することもまた素晴らしいと思う。私は「辞めた」ことで得た喜びが多くあった。悩み抜いてのことであれば辞めてもいいのだ。そう思う。


飛ぶのを辞めた渡り鳥


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