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「高卒×働く」を考える(その②)
やっぱり単発のエントリーで書ききれなかった「高卒×働く」
ということで(その②)です
ちなみに(その①)はこちら☟
就労する高校生を取り巻く環境を「社会」「会社」「学校」「若者自身」という4つの切り口から整理しています。
高卒就労に係る主なステークホルダーや押さえておくべき情報って何?という方はまずはこちらからどうぞ👍
高卒就労のアウトプットとアウトカム
高校生が卒業後の進路を「就職」と決めた場合、学校の進路指導担当の先生と相談しつつ、ハローワークを介して提供された企業の情報を検討しながら自分が希望する会社を選んでいくことになります。
また、より大きな視点でいえば、高校生の就職活動には、少子化や法制度と言った社会的な要因も影響します。
これら「高校生(本人)」「学校」「会社」「社会」の諸要素を就職活動のインプットと捉えると、結果(=アウトプット)と成果(=アウトカム)は何でしょう。
それぞれ人によって考え方が異なると思いますが、いったんここでは、出力されるアウトプットを「就職(の是非)」
アウトプットから得られるアウトカムを、若者本人に関するもので、一番想起しやすい「就職した会社で働き続けている」と考えていきたいと思います。
アウトプット、アウトカムをこのように考えた時、それぞれ数値として指標化すると「99%が高卒時点で内定」というアウトプット(結果)と「7割の高卒生が3年勤続」というアウトカムとして表現することができます。
ただ、ここでは敢えてアウトカムは「3割の高卒生が3年以内に離職」と表現したいと思います。
「7割の高校生が3年勤続」と言われるとそこに問題は無さそうに感じてしまいますが、実際はそうではなく、若者のために社会が関わっていくべき問題があることを感じてほしいという私の個人的な課題感が背景にあるからです。
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驚異の就職内定率99%!
高卒生の内定率は一貫して高水準
まずはアウトプットである高校生の就職状況についてみていきたいと思います。
厚生労働省の統計によれば、毎年3月末時点での就職内定率は令和6年で99.2%となっています。ちなみにグラフに記載されている最も古い年である昭和63年以降、90%を下回っているのは平成14年(たぶん)のみ。
それどころか、直近10年ほどでみるとほぼ99%を上回る水準で推移しています。
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この数値だけ見ると、ほぼ全ての就職を希望する高校生が就職できていると思ってしまいます。気を付けたいのは、グラフの下部に付記されている注意書きです。
注1 「求職者数」とは、学校又はハローワークの紹介を希望する者のみの数であり、就職内定率の算出に用いている「就職内定者数」とは、学校又はハローワークの紹介によって内定した者のみの数である。
この若干回りくどいような丁寧な注意書きを読むと、就職を考えている/内定した高校生には、「学校又はハローワークの紹介」ルートと「そうでないルート」の2通りあることがわかります。
高い就職内定率を支える仕組み
「学校又はハローワークの紹介による就職」は、現在の高校生の就職活動のやり方の中で最も普及しているスタイルです。その特徴を簡単にまとめると次のような特徴があります。
✅高校生の学業に支障がないスケジュール(7月1日求人解禁~9月以降選考開始)の中で、企業・学校・ハローワークが連携して、高校生の就職活動を支援
✅学校においては、進路指導担当の教員が本人の希望や特徴を理解したうえで、適切な企業群を絞り込んで生徒に紹介
✅高校生は最終的に自分にあった企業を1社選び面接に進む
ちなみに、企業と学校との間で求人情報のやり取りがありますが、その前に採用側の企業は原則ハローワークに求人票を提出し許諾を得ることが必要です。だからわざわざ「学校又はハローワーク」という文言があるのですね。
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このような形で高校生の就職活動を支援する仕組みは「一人一社制」と言われます。
なお、法律でこのように就職活動をしなければならない!と決まっているわけではなく、行政・学校・企業(経済団体)が協議して決めている”ルール”です。
法律ではなくルールであるがゆえに、全国一律で内容が同じというわけではなく、都道府県によって内容が少しずつ違うのも特徴です。
学校にも企業も一人一社制を支持
この一人一社制、学校から&企業からの支持が非常に厚い制度となっています。
高校の進路指導部の教職員を対象にした調査では、8割近い回答者が一人一社制について賛意を示しています。
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この結果を見ると、特に学校側の一人一社制を重視する傾向が印象的です。
学校が一人一社制に則って就職活動を支援することで、学校の本文である生徒の学業の支援と就職活動を両立しやすいというのが一番の理由だろうと思います。
私自身は就職活動を大学卒業時と大学院修了時に経験していますが、やはり自分の今後の仕事をどうするかで頭がいっぱいになり、学業に割くリソースは減りました。いわんや高校生をや、です。
※ちなみに私は新卒ラベルで就職活動を3回やっています・・・(大学4年・大学院1年・大学院2回生)
そんな、ともすれば注意が就職活動に向いてしまう高校生に、しっかり学業にも向き合ってほしいと思う先生方にとって、一定のルールの中で就職活動と学業を両立できる一人一社制は重要な仕組みなのではないでしょうか。
また、別調査ではありますが、企業側に実施した調査においても、高卒生の採用を実施・検討している企業の6割が現行制度を支持するという結果も示されています。
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企業にとって一人一社制に乗っかるメリットは、なんといっても人材の確保しやすさに尽きると言えるでしょう。
一人一社制に乗った就職活動は基本的に単願となります。そのため、自社に応募してきた高卒生が内定辞退ということにはなりにくい仕組みになっています。
また、人材難が深刻化している企業は中小企業に多いということを前回のエントリで紹介しましたが、そのような企業は採用に割けるリソースも限られています。
そのような意味でも、一人一社制による採用は企業の負担を軽減することができる制度と言うことができるでしょう。
3年3割離職をどう捉えるか
高卒生も一人一社制に肯定的
学校と企業から支持されている一人一社制度ですが、高卒生にとってはどうなのでしょうか。
厚生労働省が千葉県内高等学校で学校斡旋による愁傷活動を行った生徒約700名に対して実施したアンケートによれば、一人一社制について「現行の制度のままでよい」と回答した生徒は全体の62%となっています。
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現行制度を支持すると回答した人は、その理由として「履歴書や面接準備の大変さ」や「希望先の企業が重複して倍率が上がる」「断るのが大変」といった理由を挙げています。
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ともすれば、一人一社制は若者本人のニーズや気持ちを考えられていない仕組みなのではないか、という指摘も聞こえます。
しかしながら、こういった情報を見ていくと、必ずしもそう決めつけてよいわけではなさそうです。
むしろ、一人一社制が一定の役割・機能を果たしており、仕組を評価している高校生や、先生、企業が少なからずいる、ということを一つの側面として認識しておくことが重要なのではないかと思います。
”3年3割離職”の実態
もちろん、一人一社制に問題がないわけではありません。
よく言われるのは、一人一社制により高卒生の就職活動が制限された結果ミスマッチが生じ早期離職につながっている、という意見です。
確かに厚労省の統計でも、高卒生の3年以内離職率は3割を超えていることが示されています。
ただ注意したいのは、この「3年・3割」という状況は高卒生に特有のものではなく、大卒生も同様だったりすることです。
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当然ながら大卒の就活には一人一社制は関係ありませんので、一人一社制がすべての卒業生の離職の原因になっているわけではない
高卒就職者の早期離職の理由を尋ねた調査では、「人間関係によるストレス」がトップで半数を超え、次いで「長時間労働のため」「業務内容でのミスマッチ」がトップ3の理由を構成しています。
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理由の中で、いわゆる前向きな転職と言えそうな「他にやりたいことが見つかったため(13.5%)」「キャリアアップのため(3.3%)」を合わせても20%に満たず、かなりの割合の若者がネガティブな理由で早期離職をしていると思われます。
ちなみに、大卒生に対する同じような調査(実施主体が違うので一概に比較はできない)を見てみると、順位に前後はあれど、同じような理由が上位にきているようにも見えます。
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つまり「高卒であれ大卒であれ、同じような理由で・同じような割合の新入社員が辞めている」ということであり、早期離職という問題は高卒生の就労に限った話ではないということが言えると思います。
早期離職の多い業種、多い会社
少し視点を変えて、企業と離職率という観点でデータを見ていくと、高卒者の3年以内離職率は、規模が小さいほど高くなっていることがわかります。
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また、産業別にみると、
✅宿泊業、飲食サービス業
✅生活関連、娯楽業
✅教育、学習支援
✅小売業
✅不動産業、物品管理業
✅医療、福祉
といった対人サービス業が産業平均を超える傾向がうかがわれます。
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黄色線は全産業の平均水準
これらのデータから考えると、高卒生の離職率を一人一社制”のみ”が原因であるとは言いづらいのではないかと思います。
実際、職場の労働環境や業務内容自体が厳しければ離職率が高まるのは一人一社制に限ったことではありませんし、高卒生の主な就労先である特に中小企業・製造業など、高卒の就職先に多い業種では、人材不足の影響で労働条件が厳しいケースがあることは容易に想像ができます。
また、仕事を続ける中で「自分のやりたいことが違う」と気づくことは、高卒・大卒問わず一定数存在しますし、「職場環境がマッチしなければ転職」という考え方も一定程度根付いてきました。このような若年層の就労観の変化も一人一社制とは関係のないファクターです。
そういう意味では、3年以内に3割が離職するという問題が生じている背景には、採用側の企業の問題や、そもそもの相性の問題もあり、一概に一人一社制に原因を求めることが正しいとは言えないのではないかと思います。
高卒就労の本当の問題とは何か
もちろん、離職に関して一人一社制の影響がないわけではありません。
高3の夏以降、ハローワークによる許諾を得て、さらにそこから学校の進路指導担当の先生が選別した情報の中から選ばなければならないという条件にうまくはまらず、不本意な就職をした高校生もいるはずです。
その意味で、高卒離職という問題を解決するためには、一人一社制を含む様々な部分における課題設定が必要なのではないでしょうか。
次のエントリでは、高卒生の就職の本当の問題とは何かについて考えた上で、全国各地で行われている取組や、社会全体でどのように取り組んでいくと、より多くの高卒生が納得し、働き続けられるのかを考えていきたいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
子ども・若者支援について興味関心を持ったり、考えていただける機会になったのであれば嬉しいです!
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