【第2回】母音調和【クリミア・タタール語】
音の話はそんなに丁寧にできませんが、テュルク諸語でとても大事な規則の一つ、母音調和について学びましょう。
母音調和とは読んで字のごとく、母音が上手いこと調和しているんです。どういうことかというと、一つの語の中に仲間の母音しか来ないようにうまいことできているんです。仲間の母音というのは、その音が持つある条件が同じであるということですが、クリミア・タタール語で大事になってくるのは①舌の前の方で発音する母音か、後ろの方で発音する母音かということと、②①に加えて唇を丸めて発音しているかどうかというポイントがあります。
例えば、比較的下の前の方で発音するのはクリミア・タタール語の中でe, i, ü, öです。後ろの方で発音するのはa, ı, u, oです。以下の例をみると法則通り、仲間の母音しか来ていないのがわかります。
sözlük「辞書」öとü
yağmur「雨」aとu
しかし、外来語に関してはその規則に従っていないものもありますので、違う仲間の母音が来ることもあります。
areket「運動」aとe
kitap「本」iとa
これらは接尾辞をつけて語を拡張する時に必要な知識になります。ここまで読んで、ロジックなんて嫌いだという方は、下の表を覚えればクリミア・タタール語の母音調和は問題ないと思います。単に単語の最後の母音がどの仲間の母音であるかによって、次に付く接尾辞の母音を選べばよいのです。
先ほどの①は母音調和1と2、②は母音調和3に関係しています。
【あいさつ】
Selâm aleyküm.「こんにちは。」
Aleyküm selâm.「こんにちは。」(返事)
Meraba(ñız).「こんにちは。」
Selâm.「どうも。」
âの説明がありませんでしたが、キリル文字のЯと同様らしいです。つまりは/ya/と発音するようです。含まれる母音は/a/ですので、母音調和の時はaと同じ扱いをすればよいでしょう。
【今日の学習の感想】
前舌の母音の前にはkやg、後舌の母音の前にはqやğが来るのですが、これらをトルクメン語では両方kとgで表しているので、かき分けるのを忘れてしまいそうになります。実際の発音はそこまで変わらないと思われますが、書き方は各言語で決められたルールですから従わなければなりません。ただし、文字と発音が一対一の関係にあるという誤解は早めに解いておきましょう。