リフトアップ美容液「V フレーム セラム」リリースまでの1年4ヶ月(その1)
こんにちは。マスクマンです。
今回から3回にわたってお届けするのは、弊社ディレクターの森岡、デザイナーの菊池、新名の3名が関わらせていただいた、株式会社Emirise様の商品第1号となるリフトアップ美容液「V フレーム セラム」の開発プロジェクト。
ブランドの立ち上げからブランド方針と開発方針の策定、ブランドネームの考案、ロゴデザイン、ボトルや外箱のパッケージデザイン、そしてWebサイトのデザインまで、すべてのクリエイティブをワンストップで担当させていただきました。
マスクマンといえばWebサイトの企画・制作会社、というイメージをお持ちの方も少なくないと思います。でも、実は近年ブランディングから関わらせていただくプロジェクトが増えてきているんです。「え、マスクマンってこんなこともできるの?」と膝を打っていただく機会になれば幸いです。
クライアント
株式会社Emirise
プロジェクトチーム
MASKMAN Inc.
LIT Design
勝木幸子
MASKMANスタッフ
ディレクター / プランナー :森岡真実
アートディレクター/ デザイナー:菊池薫
デザイナー:新名聡野
01. 「新しいリフトアップ美容液をつくりたい」
ーーまずは、お客様について教えてください。
森岡 株式会社Emirise様は、化粧品の製造販売や美容系コンサルティングをされている企業です。
ーーどういったオーダーを受けたのでしょうか。
森岡 お声がけいただいた当初は「新しいリフトアップ美容液をつくりたい」という構想のみで、ブランドネームやロゴはもちろん、商品開発もこれからスタートするという段階でした。ですから、ブランドの立ち上げから商品の発売までワンストップで関わらせていただくロングスパンのプロジェクトになりました。
ーープロジェクトの稼働期間はトータルでどれくらいだったのですか?
新名 1年4ヶ月です。弊社はこれまで代理店様からの仕事が多く、ある程度ロードマップの定まった状態で関わらせていただく仕事が多かったのですが、ここ数年は直案件でブランディングから関わらせていただく仕事が増えてきています。とはいえ、これだけ時間をかけてお客様と直接意見交換をしながら並走したプロジェクトはそれほど多くなく、自分たちにとっても知見や視野を広げる良い機会になりました。
ーーこのプロジェクトでは、ディレクターの森岡さんとデザイナーの菊池さんを中心に、オブザーバーとして新名さんも加わっていますが、チームはどのような経緯でアサインされたのでしょうか。
森岡 お客様が構想されていた商品はリフトアップ美容液で、顔に塗ることでフェイスラインを引き締める効果が期待できる商品です。私たちも3人もアンチエイジングのターゲットに含まれますし、お客様も含めて全員が子育て中の母親ということもあり、共有できる感覚や話題が多いだろうと。それで、最初のミーティングからこの3人でうかがいました。もともと私は美容や化粧品にまつわる制作に関わることが多く、プライベートでもたるみやしわの治療について広く調べていたので、このプロジェクトに参画できることになってとても嬉しかったです。
菊池 森岡がお客様にヒアリングした内容を持ち帰り、骨子となるコンセプトを策定。それに対して私と新名が肉づけをしてご提案をする、というのが大きな流れでした。
新名 菊池は紙媒体やPOP、パッケージなどの制作経験の多いデザイナーです。私もパッケージデザインのプランナーとしての経験を活かし、後方支援という形でチームに関わらせてもらうことにしました。
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02. ブランドネームの考案
ーープロジェクトはどういうところからスタートしたのですか?
森岡 最初に考えたのは、「どうなったらこのプロジェクトは成功なのか」ということ。それを探るため、先ほど菊池がお話ししたようにお客様とコミュニケーションを重ねました。電話やLINEで会話をしたり、時にはお客様にオフィスまで足を運んでいただいたり。すべての仕事に通用するスタイルではないかもしれませんが、このプロジェクトにはその過程が絶対に必要だと思ったんです。仕事以外のお話をする中にヒントがたくさんあって、次第に「これはアリ、これはナシ」というお客様の価値観が分かってきました。
ーーヒアリングを重ねた上で、コンセプトを策定したと。
森岡 コンセプトというよりも、それ以前に「事業としてどのような運営をしていくか」といったインナー向けのブランド方針、開発方針にあたるものです。昨今の通販業界を鑑みて「仕組みで買わせる」のではなく「品質で買っていただく」を常に考えること。皆さんが限られた所得の中で「選ぶに値する商品」を開発することを大きな柱としました。そこから、リフトアップ美容液を手に取る方の年齢層や世帯年収、商品の価格帯などを具体的にリサーチし、「こういう人たちに刺さる商品開発をしましょう」とご提案していった感じですね。
新名 森岡がブランド方針、開発方針の策定を進めるのと並行して、改めて「自分たちがやるべきこと」を整理しました。具体的な作業内容は以下の8工程です。
ブランド方針、開発方針の策定
ブランドネームの考案
ロゴデザインの制作
美容液のボトルデザイン
ボトルを入れる外箱のデザイン
リーフレットのデザイン
お客様にお届けする配送箱のデザイン
Webサイト(ECサイト・LP)のデザイン
「来春にはリリースしたい」というお客様のご要望から逆算すると、思っているほど時間に余裕がないことが分かりました(諸般の事情により、発売は初秋に変更)。そうなるとデザインまわりをできるだけ前倒しで進める必要があり、菊池と私も森岡の策定したブランド方針や開発方針をリファレンスにして、ブランドネームの考案とロゴマークの制作にかかりました。
ーー2022年5月にプロジェクトがスタートして、ブランドネームが『EMIRISE』(エミライズ)に決定したのが翌6月ということで、けっこう早く決まったんですね。
森岡 そうですね。ただ、案についてはかなりの量をご提案しました。さっきもお話ししたように、まずはお客様の好みを知るところからスタートしたので、既存の英単語だったり、造語だったり、発音の心地よさを優先したものだったり、はたまたフィンランド語だったりと、思いつく限りのネーミングをお客様のところに持って行って、対面でひとつずつ検証して行ったんです。
菊池 リフトアップ美容液ですから、たとえば「UP」のような単語を入れた案もいくつかお出ししたのですが、そういう直截的な表現はあまりしたくない。なんとなく品性があって、フェミニンな感じも出したい。ご提案を重ねるうちに、お客様のそういう想いがフォーカスされていきました。
森岡 2回のミーティングで数十個のネーミングをご提案したのですが、お客様に刺さる様子がなく、タイミング的に「そろそろ決めないと」とあせり始めたタイミングで、新名から「“口角(笑み)が上を向く”という意味で、“EMIRISE”ってどう?」というアイデアが出ました。その時点では社内的には本命というわけではなくて、いくつかの案のうちのひとつという感じだったのですが、3回目のミーティングでご提案したところ、ほぼ即決で『EMIRISE』が採用されました。
03. ロゴデザインの制作
ーーというわけで、2022年6月からアウトプットのデザインが始まりました。最初はブランドロゴですね。
新名 はい。ブランドネームが決まったあと、お客様がすぐに登録商標を申請してくださって、そのままロゴの制作に入りました。
菊池 ロゴデザイン以降のアウトプットに関しては、森岡の策定したブランド方針、開発方針を参照しながら「ターゲットになる方たちが好む色は?テクスチャーは? フォルムは?」と考えていきました。デザイン案も、ブランドネームと同じぐらいたくさんご提案しました。私としては当初「EMI=笑み」のイメージから口角が上がっている唇だったり、「RISE=日の出」のイメージから丸くて曲線っぽいラインだったりをご提案したのですが、最終的にはサイエンスっぽさを感じさせるロゴマークと、シンプルなロゴタイプの組み合わせに落ち着きました。さまざまなツールへの展開も容易で、汎用性の高い案です。
森岡 美容液の分野には、医師による診断を受けた上で使用が許可される「ドクターズコスメ」というものがあります。「V フレーム セラム」はドクターズコスメではありませんが、クォリティを担保した商品であることを踏まえて、シンプルでサイエンスっぽい案を選ばれたのだと思います。
ーー菊池さんは競合商品などもけっこうリサーチしましたか?
菊池 リサーチはしましたが、実際にロゴを考える上ではあまり参考にしていません。ただ『EMIRISE』というブランドネームの7文字を見つめながら、イメージを膨らませていきました。「小文字の“e”って、形が笑顔みたいだな」とか「“E”を六角形にするとサイエンス味も出るな」とか。どこかに上昇するイメージを加えたかったので、最終案のように45度の斜線をあしらうことにしました。
第2回では『EMIRISE』のボトルや外箱、リーフレットのデザインに話を進めます。