見出し画像

アントン・ブルックナー

【ブルックナーの簡略的生涯】

1824年:オーストリアのアンスフェルデンでヨーゼフ・アントン・ブルックナー誕生。
1845年:聖フローリアン修道院の助教師に就任。
1856年:リンツ聖堂及び教区教会のオルガン奏者に就任。
1866年:交響曲第1番完成。
1868年:音楽大学の教授に就任。
1869年:交響曲第0番完成。
1872年:交響曲第2番完成。
1873年:交響曲第3番完成。
1874年:交響曲第4番完成。
1878年:交響曲第5番完成。
1881年:交響曲第6番完成。
1883年:交響曲第7番完成。
1887年:交響曲第8番完成。交響曲第9番の作曲に着手。
1894年:交響曲第9番第1、2、3楽章完成。
1896年:ウィーンで死去。


交響曲11曲】

  1. 交響曲第1番(ハ短調)WAB 101:リンツ稿(1866年)とウィーン稿(1891年)の2つのバージョンが存在します。

  2. 交響曲第2番(ハ短調)WAB 102:いくつかの改訂版があり、初期版と最終版で異なる箇所があります。

  3. 交響曲第3番(ニ短調)WAB 103:「ワーグナー交響曲」とも呼ばれ、彼がワーグナーに捧げた作品です。これも複数の版が存在します。

  4. 交響曲第4番(変ホ長調)WAB 104:「ロマンティック(Romantische)」として知られる有名な作品。多くの改訂が行われました。

  5. 交響曲第5番(変ロ長調)WAB 105:壮大な対位法が特徴の作品です。

  6. 交響曲第6番(イ長調)WAB 106:他の作品ほど改訂されていないため、比較的「純粋な」形で残っています。

  7. 交響曲第7番(ホ長調)WAB 107:ブルックナーの最も人気のある作品の一つ。ワーグナーの死を追悼して作られました。

  8. 交響曲第8番(ハ短調)WAB 108:「ブルックナーの第九」とも呼ばれる壮大な作品。

  9. 交響曲第9番(ニ短調)WAB 109:未完の作品で、通常は第3楽章までで演奏されますが、第4楽章の補筆版も存在します。

  10. 交響曲第0番(ニ短調)WAB 100:作曲者自身が「無効(Die Nullte)」とした作品で、正式な番号付けはされていません。

  11. 交響曲ヘ短調(学生交響曲)WAB 99:番号が与えられていない初期の作品。


ブルックナーの作品には、WAB(Werkverzeichnis Anton Bruckner)という作品番号が付けられています。これは、ブルックナーの全作品を整理した目録番号で、音楽学者のレナード・ディレンジャー(Renate Grasberger)が1977年に初めてまとめました。WABはブルックナーの全作品に適用されており、交響曲以外の宗教音楽、ミサ曲、モテット、ピアノ曲、室内楽曲などにも番号が付けられています。交響曲は「WAB 99〜109」に分類されています。

  • W: Werkverzeichnis(作品目録)
    ドイツ語で「作品目録」や「作品リスト」を意味します。

  • A: Anton(アントン)
    作曲者アントン・ブルックナーの名前。

  • B: Bruckner(ブルックナー)
    作曲者の姓。


交響曲第4番変ホ長調 WAB104
『ロマンティック』

▶敬愛する指揮者のラファエル・クーベリックと天下のウィーン・フィルハーモニー・オーケストラによる1971年のコンサートから。


超個性的なブルックナー演奏の大巨匠セルジュ・チェリビダッケの指揮によるミュンヘン・フィルハーモニー・オーケストラによる1983年のライヴ録音から。


ブルックナー演奏のスペシャリストとして一世を風靡したギュンター・ヴァント指揮、北ドイツ放送交響楽団による1990年のライヴ録音から。


ハンゼ交響楽団とシュテファン・ヴェゼルカ教授の指揮によるブルックナーの交響曲第4番は、力強く、雄大な音楽で、聴衆を魅了します。このライブ録音は、ブルックナーの交響曲第4番を、まるでコンサート会場で聴いているかのように、その臨場感と深みを感じることができる貴重な機会です。 ぜひヘッドホンを着用して、3Dオーディオミックスをお楽しみください。


2024年11月15日、パリのシャンゼリゼ劇場にて開催された「アントン・ブルックナー追悼」シリーズの一環として行われたコンサート。フランス国立管弦楽団、指揮はアンドリス・ポガ。


ブルックナー『ロマンティック』楽曲分析

アントン・ブルックナーの交響曲第4番変ホ長調『ロマンティック』は、彼の最も人気のある作品の一つであり、その壮大でドラマティックな音楽は聴衆を魅了し続けています。本稿では、この交響曲の楽曲分析を行い、その魅力を探ります。


作品概要

『ロマンティック』は1874年に作曲され、ブルックナー自身によって「ロマンティック」と名付けられました。彼は生涯にわたってこの交響曲を何度も改訂し、最終的な版は1888年に完成しました。この交響曲は、その壮大なスケール、複雑な構造、そして深い精神性によって特徴付けられます。


楽曲構成

『ロマンティック』は、4つの楽章から構成されています。

 第1楽章:アレグロ・モデラート

  • この楽章は、神秘的な雰囲気で始まります。低音弦のトレモロ(原始霧と喩えられています)の上に、ホルンが静かに主題を奏でます。この主題は、上昇と下降を繰り返す特徴的な旋律を持っており、後の楽章でも重要な役割を果たします。

  • 第1主題は、力強く雄大な性格を持ち、トランペットやティンパニによって奏でられます。

  • 第2主題は、優美で抒情的な旋律で、フルートやオーボエによって奏でられます。

  • 展開部では、主題が様々な形で変奏され、緊張感が高まります。

  • 再現部では、第1主題と第2主題が再び登場し、壮大なクライマックスを迎えます。

  • コーダでは、第1主題が力強く繰り返され、楽章は終結します。


第2楽章:アンダンティーノ

  • この楽章は、静かで瞑想的な雰囲気で始まります。

  • 第1主題は、チェロとコントラバスによって奏でられる、哀愁漂う旋律です。

  • 第2主題は、より明るい性格を持ち、弦楽器によって奏でられます。

  • 展開部では、主題が対比的に展開され、緊張感が高まります。

  • 再現部では、第1主題と第2主題が再び登場し、静かに終結します。


第3楽章:スケルツォ:アレグロ・モルト

  • この楽章は、活気に満ちたスケルツォです。

  • 主題は、木管楽器によって奏でられる、軽快でユーモラスな旋律です。

  • トリオは、より静かで抒情的な性格を持ち、弦楽器によって奏でられます。

  • スケルツォとトリオが繰り返され、楽章は終結します。


第4楽章:フィナーレ:アレグロ・ジレヴォーゾ

  • この楽章は、力強く壮大なフィナーレです。

  • 第1主題は、第1楽章の主題を基にした、雄大な旋律です。

  • 第2主題は、より抒情的な性格を持ち、弦楽器によって奏でられます。

  • 展開部では、主題が様々な形で変奏され、緊張感が高まります。

  • 再現部では、第1主題と第2主題が再び登場し、壮大なクライマックスを迎えます。

  • コーダでは、第1主題が力強く繰り返され、交響曲は終結します。


音楽の特徴

ブルックナーの交響曲には、次のような特徴が見られます。

  • 壮大なスケールとドラマティックな展開: ブルックナーの交響曲は、そのスケールの大きさで知られています。彼は、長大な楽章、複雑な構造、そしてドラマティックな展開によって、聴衆に強烈な印象を与えます。

  • 深遠な精神性: ブルックナーの音楽には、宗教的な色彩が強く、深遠な精神性が感じられます。彼は、神への信仰、自然への畏敬の念、そして人間の運命といったテーマを音楽に込めています。

  • 対位法の巧みな運用: ブルックナーは、対位法の達人として知られています。彼は、複数の旋律を同時に奏でることで、複雑で豊かな音楽を生み出しています。

  • 主題の変奏: ブルックナーは、一つの主題を様々な形で変奏することで、音楽に深みと広がりを与えています。



交響曲第1番ハ短調WAB101

交響曲第1番 ハ短調(リンツ版 - ノヴァク校訂)



交響曲第5番変ロ長調 WAB105

壮大な対位法が特徴の作品です。



交響曲第6番(イ長調)WAB 106

他の作品ほど改訂されていないため、比較的「純粋な」形で残っています。ハインツ・ボンガルツ指揮、ライプツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団、1964年12月、ライプツィヒ・ハイラント教会、エテルナ録音盤です。

※旧東独の名匠ボンガルツの遺した数少ない代表盤。金管、特にペーター・ダム率いるホルン・セクションの響きが印象的な剛毅な構えです。



交響曲第8番ハ短調 WAB108

1979年6月4日、ザンクト・フローリアン修道院1979「聖フローリアン」に於けるH.V.カラヤン × ウィーン・フィルOの特別なA.ブルックナーの《9th.-Symphony》。


2024年8月15日、リッカルド・ムーティ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ザルツブルク、祝祭大劇場にて収録。かなりわざとらしいけど、我慢して聴けとのこと。


コレ ↑ と、コレ ↓ は、同じではないの???後で確かめる。

2024.8.15 ザルツブルク。ウィーン・フィル×リッカルド・ムーティ指揮によるブルックナー 8th Symphony in C minor のライヴパフォーマンス。


ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン)、指揮はジュゼッペ・シノーポリ。


アントン・ブルックナーの交響曲第8番は、1884年7月から1887年4月にかけて作曲されました。作曲者は9月にスコアをヘルマン・レヴィに送り、演奏を期待しましたが、拒絶されました。その後、ブルックナーは1888年に改訂を開始しましたが、第3番と第4番の改訂作業に取り掛かったため中断しました。1889年から1890年にかけてフランツ・シャルクの助けを借りて改訂が続行され、1892年の演奏前に出版されました。第1楽章のコーダが書き直され、スケルツォが改良され、トリオが書き直され、アダージョとフィナーレが改訂され、やや短縮されました。また、管弦楽法が拡張され、洗練されたものになりました。

ミュンヘンでのフェリックス・ワインガルトナーまたはヘルマン・レヴィ指揮による初演は、リハーサル時間の不足やコレラの発生によって何度も中止されました。初演は1892年12月18日、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のハンス・リヒター指揮で行われました。この際のスコアはシャルクによるさらなる削除、ダイナミクスやフレージング、管弦楽法の変更が加えられていました。初演は非常に好評で、作曲者は月桂冠を贈られるほどでしたが、ブルックナーの生前に行われた演奏はさらに2回だけでした。ロベルト・ハースがシャルクの改変を取り除こうとして失敗し、両バージョンを混合した版を作成したことで混乱が生じました。この版は長らく最も普及していましたが、レオポルト・ノヴァーク版によってブルックナーが最終的に残した形が復元されました。

1891年にブルックナーがワインガルトナーに宛てた手紙では、第4番とは異なり詳細なプログラムは提示されていないものの、交響曲のいくつかの部分に対して超音楽的な関連を与えています。これらのコメント(分析で提供します)からは、死と宗教にますます関心を抱くブルックナーが見られ、それは捻じれた苦悩に満ちた非常に不協和で暴力的な音楽を通じて表現されています。作品をより広く知らしめようと「黙示録」という副題も付けられましたが、浸透しませんでした。ブルックナーが交響曲第9番を完成させることなく亡くなったことを考えると、第8番はその音楽の頂点であり、壮大さと表現・エネルギーの集中的な披露を兼ね備えています。


交響曲第9番(ニ短調)WAB 109

ピッツバーグ交響楽団、指揮:マンフレート・ホーネック。

交響曲第9番は、1887年9月に着手されましたが、交響曲第8番、第3番、第4番、ヘ短調ミサ曲の改訂や交響曲第2番の出版準備のため、すぐに中断されました。1891年に作業を再開しましたが、詩篇第150番やカンタータ『ヘルゴラント』の作曲のために再び中断しました。第9番の最初の3楽章は1893~1894年に完成し、フィナーレは1895~1896年に作業されましたが、1896年10月11日にブルックナーが亡くなった時点で未完成のまま、大量のスケッチが残されました。

完成された楽章は1903年2月11日、ウィーン・コンツェルト管弦楽団によってフェルディナンド・レーヴェ指揮で初演されました。この際のスコアには、作曲者の許可なくレーヴェが加えた多くの改変が含まれていました。1931年、ロベルト・ハースはレーヴェ版とブルックナーの原稿の違いを指摘しました。翌年、指揮者ジークムント・フォン・ハウゼッガーはレーヴェ版とブルックナーの原版の両方を演奏し、1932年4月2日、ミュンヘンでブルックナーの交響曲第9番の最初の3楽章の実質的な初演が行われました。

この作品を聴く前に、第9番が進行中の作品だったことを理解しておく必要があります。もしブルックナーがフィナーレを完成させる時間があったなら、他の楽章も他の交響曲と同様に改訂され、洗練されていた可能性が高いです。フィナーレを完成させる試みがいくつか行われましたが、いずれも完全な成功には至りませんでした。それでも、第9番の完成された楽章は、前の2つの交響曲の流れを引き継ぎ、不協和音と和声的曖昧さ(調性の限界を押し広げるまで)、伝統的形式の緩和、対位法の熟達、そして楽章間での素材の再現による統一性の向上が特徴です。深い信仰心を持つブルックナーは、この作品を神に捧げる予定でした。


いいなと思ったら応援しよう!