金属3Dプリンティングと残留応力のはなし
3Dプリンターは、データさえあればそのままの状態で綺麗なモノが作れちゃう、とは思ってなかったけど、パウダーベッド方式なのになんで金属はサポート必要なのー?ってずっと疑問でした。その理由がやっと理解できたので、ここにまとめておこうと思います。
その原因は、残留応力というのが働いてしまうかららしいのです。
Wikipediaによると残留応力とは、外力を除いた後も物体内部に存在する応力のこと。ここでは熱を加えた後も残っている力になります。
3Dプリンターでパウダーを溶かして造形していくと、レーザーを当たっている高熱の部分、既に造形された冷えた部分ができます。そこでは、溶かした金属が固まる際の凝固収縮、先に造形した部分が冷える際の熱収縮が起こります。ざっくりとは、その収縮の差や既に冷えた部分からの引張力、それが残留応力として働き、造形中に変形させてしまう原因だったという訳です。
パウダーベッドで造形していくタイプの3Dプリンターは、出力するモノがずっとパウダーが詰まった箱の中にいるので、パウダーがサポートの役目をしてくれます。けれど、金属ではこの残留応力が働くのでパウダーだけだとその力を支え切れず、変形や壊れてしまったりします。それを防ぐためにサポートが必要だったというわけです。
この残留応力の扱いが、金属3Dプリンティングを難しくしている理由の一つです。温度管理や造形角度と速度、サポートをどこに配置するか、それらのノウハウが無いとなかなか上手くプリントできません。だから、せっかく高価な3Dプリンター買ったのに全然使い物にならないじゃん!ってことになってしまいます。
厳密には樹脂でもこの残留応力は働くのですが、あまり大きくないためサポート無しで通常造形できます。ただ、厚い壁を造形しようとすると残留応力が大きくなり、変形が起きやすくなるので、なるべく肉抜きする工夫が必要だったりします。
この残留応力、熱溶融するときに生まれるので、熱を使わない3Dプリンターだったら考慮しなくてok。金属3Dプリンターにも、SLM、BJ、MJなどの種類があり、MJ、BJでは造形中に大きな熱が発生しません。これらのプリント方式の違いについてはまた別の記事で。
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