バベルの廃墟でかくれんぼ

ポッドキャスト「バベルの廃墟でかくれんぼ」のnoteアカウントです。 文字と音声で使い…

バベルの廃墟でかくれんぼ

ポッドキャスト「バベルの廃墟でかくれんぼ」のnoteアカウントです。 文字と音声で使い分けていく、ということで。 Podcast :https://podcasters.spotify.com/pod/show/lhk3skqa7k X:@babel_no_haikyo

最近の記事

訓民正音例解本

23年9月に韓国旅行に行った際、見つけて一番感動したものです。 見てください。世界史の資料で何度も見たあのページです。 景福宮を見学した際に、敷地内の国立古宮博物館のミュージアムショップで購入しました(つまり、世宗大王像のすぐ後ろということですね)。 この素敵な商品、なんとたったの15000ウォン(くらい)。お土産用にもう何個か買えばよかったと帰国してから思いました。 白文なんて読めないし、これだけならただのオブジェになってしまうのですが、帰国してすぐ、ラッキーなことに

    • “大切なものを収める家”

      2024年3月16日〜8月25日まで、(東京・)日本橋の高島屋4F、高島屋資料館TOKYOで 「ジャッカ・ドフニ 大切なものを収める家 ーサハリン少数民族ウイルタと『出会う』」 という展示が開催されました。 かつて網走に「北方少数民族資料館ジャッカ・ドフニ」という資料館がありました。この名称は”大切なものを収める家”を意味するウイルタ語で、樺太に暮らしていたウイルタ人の生活文化を伝える資料館でした。 残念ながら2012年に閉館し、収蔵物は、北海道立北方民族博物館に移管され、

      • 泰流社の継承者

        泰流社が倒産した後も、粗製乱造の語学書作りは、途絶えることがありませんでした。泰流社から怪しい語学書を出していたのは、戸部氏ひとりではなかったのです。そしてその人物は、その後も活動を続けていました。 飯島紀氏 戸部氏がむちゃくちゃな本を刊行し続けている時期に重なって、(戸部本ほどのクオリティではないけども)「自習ノート」を出版しちゃったのが、飯島紀氏です。 著作にあるプロフィールによれば、1928年生まれ、京都大学を卒業、長く松下に勤めた後、松下グループの企業で顧問を

        • 『サンスクリット入門』を読んで

          24年7月、中公新書の新刊で赤松明彦『サンスクリット入門』が刊行されました。 *** 「仏教文献をがんがん読むぜ」なんて思い上がりは当然していなくて、どういう言語なのか知りたいんですよね、以前から。 かつて辻・鎧のゴンダ文法は難しくて挫折し、萩原『実習梵語学』はまんどぅーかさんのサイトで知り歯が立たなそうだなと敬遠し、それならばと東洋大のインド哲学科で教科書に指定されている上村・風間『サンスクリット・その形と心』だなと入手したものの、こちらもやはり途中まで読んでそれっきり

          泰流社

          はじめに 今回の記事は、98年に廃業した泰流社という出版社と、そこから出版されていた膨大な量のトンデモ語学書がメインとなります。 先日「まゆつばにもいろいろある」という記事を公開したので、関連して思い出したことをまとめました。 わざわざ昔のことを掘り起こしてブツクサ言うのもお行儀が良くないのですが、最近は随分と泰流社・戸部本の存在感が薄くなってきたように感じます。ひとりの好事家として「こういうことがあったんだよ」と文書にしておきますので、お暇なときにふーんと思っていただ

          まゆつばにもいろいろある。

          大学入学直後くらいまで、「言語についてとにかく知りたい、わかりたい」という気持ちが優って、でも知識もなかったので、いま思えばかなり怪しい本もたくさん読んできました。 中には、「俺様は正しいんだ! 既得権益にずぶずぶに絡め取られた学者たちは真実を隠している!」と主張するタイプもあって、その手合いはすぐにわかるからいいのだけれど、まぁそういうのは置いておいて。 朴炳植『日本語の悲劇』情報センター出版局、1986 事情をご存知の方には説明不要ですが、著者はその昔、この本とその後

          まゆつばにもいろいろある。

          甲骨文字を掘る!

          23年11月、数年ぶりに東京外国語大学の学祭にお邪魔してきました。 模擬店の料理やビールにももちろん興味津々なのですが、今回の目玉は甲骨文字を彫る体験、です。 「解読! アジアの古代文字(2023)」 11月6日から、外語祭最終日の26日までAA研で開催されていた展示です。 この展示はリベンジ的意味合いがありまして、コロナ禍のために規模を縮小して開催せざるを得なかった2021年の展示会を、2年越しで当初の構想通りに実施できた、とのことです。 お馴染みのエジプトの文字のほ

          リトアニア語名詞のアクセント移動について

          ご注意 この記事は、23年1月28日に行われた「言語学フェス」で行った発表内容を整理し加筆したものです。 そもそもの発表動機は、リトアニア語を復習していたときに、アクセント移動について「あ、わかった!」と合点した内容を誰かに聞いてもらいたい、ということであるため、この記事にはリトアニア語学上の新発見は(もちろん)含まれていません。私はただの学部卒です。 リトアニア語学習の動機は十人十色ですが(そうか?)、鬼門となるのは複雑なアクセント体系の理解かと思います。 日本語で利用

          リトアニア語名詞のアクセント移動について

          どぅなんちまぬはなし(与那国島の話)

          23年10月14日、15日に与那国町立久部良小学校にて行われた「危機的な状況にある言語・方言サミット」に参加してきました。これは文科省主催の催しでして、毎年行われているものです。が、いろいろな運の巡り合わせで私は今回が初参加でした。 ちなみに参加登録不要、参加費なしの催しなのですが、つまり今回は与那国島に渡航して宿を確保するというのが一番大きな障壁となるわけですね。 与那国島、一度行ってみたかったのですね。ちょうどいい口実ができました。 さて、私が最後に沖縄県に足を踏み入

          どぅなんちまぬはなし(与那国島の話)

          大野晋『日本語と私』

          『日本語と私』は、日本語学者・大野晋の自伝です(写真右)。 拾い読みするつもりで本棚から取り出すと、つい読み通してしまう、そんな本です。大野の文章を読むと、ははぁ、文章が美しく読みやすいというのは、こういうことを言うんだなと感じます。 大野は深川の砂糖問屋に生まれました。 下町の四季を彩る様々な催しに触れた幼少期の話に始まり、同級生に先生、お世話になった図書館の食堂のおじさんとのエピソード、読んだ本に進学の話、下町と山手の違いに恐れ慄いた学生時代、「少力」の苦悩、大学で知遇

          新旧ノシロ語読み比べ

          2023年9月、白水社さんの『ゴート語入門新版』が語学界隈の皆さんの注目を集めている一方で、V2ソリューションという会社から、水田扇太郎著『新ノシロ語 国際普遍言語は可能だ』という本が刊行されました。 V2ソリューションって、セレン・アルバザード著『言語学少女とバベルの塔』を出していた版元ですね。他に、最近では『ロシア語の3人称不完了体сяと副詞助詞接続詞他』っていう謎の本も出ている。謎、というのは誰に向けてどのような方針でまとめているのか不明ということです。資料としては便

          はじめに

          ポッドキャスト「バベルの廃墟でかくれんぼ」のnoteアカウントを始めました。 ポッドキャストに向いている内容と、テキストで発表した方がいい内容と、分けて扱うことにする、ということですね。 ポッドキャスト「バベルの廃墟でかくれんぼ」とは spotifyで聞けます。 https://open.spotify.com/show/1dYmlXLGpHdV9JRhgXDV6m