私の心に、Loving Words yei-yei
これは私の心に眠る、大事なおまじないの話。
私は高校3年の受験期真っ只中に
バンドのマネージャーをしていた。
マネージャーと言っても、
何かするわけではない。
デビューしていたわけではないし、
ただほんの少し練習にやっほーと顔を出して、
遊びに行っていただけ。
それでもバンドメンバーは
私のことを可愛がってくれて、
いつも笑顔で迎えてくれた。
そのバンドは、不思議な世界観の塊だった。
あの世界観はなんというジャンルに
分類されるんだろう…
それは今でも分からない。
でも、私はボーカルが作り出す
その不思議な世界観が好きで、
唯一無二のように感じていた。
私を可愛がってくれたみんなは、
私が受験生であることをもちろん知っていたし、
勉強しない私のことすら応援してくれていた。
そんなある時、
みんなが私にあるモノをプレゼントしてくれた。
"Loving Words yei-yei"
(ラヴィング ワーズ イェイ-イェイ)
それはボーカルによる完全に手作りのお守り、
おまじないのようなものだった。
それが一体どんなものなのか、
きちんと説明書も付属されていた。
これはいつも僕らを支えてくれる、
ましろを守る、応援するためのおまじない。
それは言葉かもしれないし、
絵や不思議な記号のようなものかもしれない。
どうしても必要になった時、これを開けて。
こんな文言だったと記憶している。
Loving Words yei-yei は、
バンドメンバー4人に合わせて4つあった。
見た目はサイズも含めて
本に挟むリボンのついた栞のようだった。
それらは全て画用紙で作られていて、
画用紙にリボンを挟んで折り、
のりで綴じられていた。
ボーカルは芸術に富んだ人だったので、
栞の両面には
その不思議な世界観を表現した絵や
私とバンドメンバーの似顔絵など、
素敵なアートがたくさん描かれていた。
Loving Words yei-yei は、
その内側に書かれていた。
のりを剥がさなければ見えない場所に。
アートな栞がお守りなのではなく、
その内側に込められた、
メンバーが私に向けて書いてくれた
言葉や絵、不思議な記号そのものが
おまじないなのだ。
なんて面白い発想で、
なんて素敵なおまじないなんだろう。
当時の私はそれをバッグに潜ませて
各受験に臨んだ。
試験の前にそれを取り出して、
勉強も大してしていないのに
なんだか合格できる気がした。
実際には
私は志望校には受からなかったし、
行くことにした大学もかなり嫌々決めた。
おかげでほぼ大学には行かなかったし、
4年生になっても
朝イチの授業を取らなければならないほど、
単位ギリギリで卒業する劣等生だった。
そのバンドとは
大学に入学する頃には離れることになったが、
私の手元には Loving Words yei-yei が残った。
しかし、今はどこにも無い。
それでも私の中に眠る、
大事な、大事な、おまじない。
もう開くことはできないけれど、
あの時みんなが私を思ってくれたことが
何よりも嬉しかった。
改めて伝えよう。
本当にありがとう。
Loving Words yei-yei は
時を経て尚、
私の心の、おまじない。