謎の染みと幼きわたしのおまじない
寝苦しい夜、ふと記憶が蘇ってきた。
子どもの頃、
あまり眠れない日や怖い夢を見てしまった時、
よく母と父のベッドの間に入り込んで寝ていた。
両親は大きいベッド2つを
くっつけて寝ていたから、
私はその境目よりちょっとお母さん側で寝る。
それでもすぐに寝付けるわけではない。
古い家だったこともあり、
その寝室の天井は変な染みがいた。
それも私の頭の位置のちょうど真上だけ。
そんな風に記憶してる。
その染みが怖くて、
幼き私は自分で自分におまじないを課した。
・その日あった出来事を、
一字一句間違えずに、目を瞑り頭の中で唱える
・100文字以内で必ず数えること
・3回までを成功とする
・一字でも間違えたら、最初からやり直し
・数が分からなくなっても、最初からやり直し
・3回までに成功しなければ、怖い夢を見る
なぜこんなおまじないが生まれたのかは
分からない。
でも、いつからか
私はこれを間に挟まって寝る時は
当たり前のようにしていた。
1回目で成功すれば、もう安眠。
怖い夢はどこからもやってこない。
私はあの謎の染みに打ち勝つ。
1回失敗すると、
「あと2回ある、大丈夫…大丈夫…」
と幼心に自分を励ました。
2回失敗すると、
「どうしよう、あと1回しかない…どうしよう」
と怯えてくる。
次のラストチャンスを前に、
さっき間違えたところの「てにをは」を
慎重に慎重に復習したりする。
3回目をも失敗…
その後は布団を頭までしっかりかぶる!!
どうしよう、失敗した!!どうしよう!!
あの染みが襲ってくる…っ!!!
そう、
この恐怖と闘っているうちに
いつしか寝てしまうのだ。
成功しないまま、
指で数を数えている間に寝落ちだってする。
それがこのおまじないの狙いなのだ。
最初は発明した自分でも気付いていなかった。
だけど次第にその効果を感じ始める。
私は染みと闘っているのではなく、
数えることで睡魔を呼び寄せているんだ。
可愛らしいひつじが何百頭も押し寄せても
眠れはしないが、
怖い夢を見たくないという思いと文字数制限、
誤字を許されないという謎の環境が
私の幼い思考を疲れさせる。
それでも怖い夢を見たことだってもちろんある。
だけどそれはまたの機会に。
だって、未だに怖いからね。
みんなにも
今思えば謎なおまじないや
今でも使っているおまじないってあるのかな。
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