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【白の手帖】4頁「百合の色、白とそれから」
私は空腹でした。
当たり前で満たされているこの世界に
嫌気がさしていたのかもしれません。
欲というものは厄介で、
欲によってヒトは何か誤ちを犯したり
後悔してしまうのかもしれません。
これはヒトでいる限り
付き纏ってくるのでしょうか。
そんなことを考えながら私は、
乾いた唇をギュッと固く結びました。
「白、代わって」
声がしました。
「いいけど、何か食べたらね。」
私はしっかりと返事をしましたが、
この空間に声は必要ありませんでした。
私は一体、
どの私か解らなくなる時があります。
何かに憤怒しながら哀しくなり、
涙を流しながらやがて愛想を尽かして
笑みが溢れてくることがあります。
でも大丈夫。
まだ私は私だと自覚しているし、
名前の違いや感覚が違っても、
愛しいと思える日が来ると
信じています。―白散歩―
だからたまに嫌気がさす。
あなたは優しいから、否定をしない。
でもだから何かに負けて傷つきやすくて、
純粋でいて、眩しい。
あなたが迷っている時は危ない。
揺らいでいるのが伝わってくると、苦しい。
共に痛みを知る。それも全て理解している。
だから助けたい。
俺は私として、僕として、誰かの為に在って、自分のためにも在る。
この世界は憎い。
でもあなたが生きるというなら、
なるだけそう思っていられるように俺達がいる。だから生きる。―黒吞友梨ネ―