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#29 やる気を出したいフリーランスが香港に移住するか本気で考えた結果

最初に香港を訪れてから6年の月日が経ちました。
これまでに何度も訪れてきた香港は、24時間運航しているバスがあり、空港から街中にでやすい立地もあって、気軽に来れる旅先の一つです。九龍と香港島をどちらも楽しみたくて、何度も繰り返し訪れたくなる魅力があります。今回はそんな香港で家を探し、しばらく暮らしてみた感想です。


私にとって香港は自然とやる気にさせてくれる場所です。

「このままじゃだめだ」「もっと頑張らないと」そんな風になんとなく思っているのに行動できない時、香港という都市とそこで暮らす人々のエネルギーは自分の背中を後押ししてくれる気がします。

香港に初めて訪れたのは6年前。まだ会社員の頃でした。
はじめはその雑多な様子にとても驚きました。都会なのに雑然としていて、お世辞にもきれいな街とは思いませんでした。けれどそれだけ面白いものが詰まった場所でもあって。
どこを見ても面白い、次はなにがあるんだろう、とわくわくしながら歩いたことを覚えています(そして遭難しかけた)今でも200m圏内を散歩しただけで、これだけ満足できる都市は稀だろうと感じています。

2023年9月。
海外就職がうまくいかず、自信をなくし、穏やかで包容力のある台湾での生活に浸りきって堕落していた私は、自分に喝を入れるつもりで香港を訪れました。そして期待通り(?)、まず家探しの段階からやる気を奮い起こされました。

近年は、自由な時間を重視して少ないお金でも自分らしい暮らしをするという生き方も注目されていますが、そもそも香港で最低限の生活をするためには、"稼がなければ"なりません。

「いまある仕事だけで暮らせるからいいや」
「最低限の収入でもそこそこの暮らしができれば…」
なんてのんきなことは言っていられないのです!

独房のような賃貸(誇張なし)の家賃15万円の表示をみて目が覚めました。私が向上心を取り戻した瞬間です。

そもそも人間は高い目標をもってこそ、生き生きと動けるという側面もあります。そのためには、自分を高めてくれる環境にいることが大切。

会社員に疲れ果て、20代後半にしてのんびりスローライフを送っていた私は、香港で暮らそうと試みたことで、中学・高校時代に猛勉強して未来を目指していたあの頃の気持ちを取り戻しました。環境を変えただけですが、効果は抜群でした。

人間が変わる方法は3つしかない。 1番目は時間配分を変える。 2番目は住む場所を変える。 3番目はつきあう人を変える。 この3つの要素でしか人間は変わらない。

これは大前研一さんの有名な言葉です。
そして私が折に触れては思いだしては、実践してきたことでもあります。

中でも、二番目は簡単にできて即効性があるので、ぜひおすすめしたい。これまでの経験から、環境を変えれば「時間の使い方」と「付き合う人」も自然と変わりました。

私のこれまでの引っ越し回数は二桁にのぼります。
2年以上同じ場所に住んだことがないというのはさすがに反省していますが…飽き性で三日坊主で、自分に甘いと自覚しているので、強制的に重い腰を上げさせるための私なりの方法なのです。

香港は私にとって最高の起爆剤となりました。
今回、移住したいとは思わなかった(とても思えなかった)けれど、また自分を奮い立たせるために定期的に訪れたい場所です。


さて、ここからは移住に至らなかった理由を端的に挙げていきます。

・湿気と寒すぎるクーラー問題

エアコンをつけなければ不快だし、つけていれば寒い。
夏の不快さはいうまでもなく、冬でも除湿をがんがんにつけて長袖を着なければ湿気をコントロールできません。快適な日というのがほとんどなく、外を歩けばじんわり汗をかくし、陽が照りつけているので、男女関係なく日傘(内側が真っ黒のやつ)が必需品です。正直、持ち歩くのがすごく面倒くさいです。次第に外に出なくなりますが、快適な家というのもなかなか手に入りにくいのが現状です。

・一般的な住環境と高すぎる家賃

香港の一般的な住環境は、お世辞にも快適とは言えません。人口に対して少ない土地問題を解消するために密集したマンションや公共住宅。基本的に窓は小さく、網戸ないので虫が入り放題。そして隣の部屋や建物との距離がめちゃくちゃ近いです。カーテンを開けていたら、お隣のテレビの画面からソファで寝そべっているおじさんまで見えます。でも誰も気にしません。

街中も歩道も、エリアによっては途上国並みに汚く、臭いです(失礼ですが本音)。
香港で潔癖症が最低限の快適な生活を望むなら、そこそこの富裕層を目指さなければなりません。
東京で6~8万円のワンルームに住んでいる人が香港で同程度の生活をしようと思ったら、家賃は最低15万円。それでも日本で借りるときと比べて2~3割快適さは落ちます。古い建物の狭い部屋で、配管の臭いとか水回りの害虫におびえなければなりません。

今回、私は月16万円のシェアレジデンスで、部屋の広さはなんと2.6畳。(初期費用と敷金で+20万円かかりました)ただきれいさだけは重視したので、毎日のように掃除の方が共用部に入ってくれて、なんとか快適に暮らせましたが、本当に狭かったです。

・広東語と北京語は全然違う問題

私が台湾と香港を移住候補に挙げたのは、そもそも中国語(いわゆる北京語・普通語)を勉強していたからです。けれど、香港の公用語は広東語でした(アホすぎる)

それなら広東語もちゃんと覚えようと意気込んだのですが、なんと広東語は発音や語彙が大きく異なり、中国人同士でも全く通じないほどだそうです。さらに声調が6つ以上あるという難しさ。

私は香港の方はほとんど英語を話せるんだと思っていました。しかし、ローカルなエリアでは意外なほど英語は通じませんでした。躊躇なく話してくれるのは観光地や流行のカフェの店員さんくらいで、ローカルなレストラン(茶餐廳)や 惣菜屋(ダック屋さん)は広東語か普通語がつかわれます。英語が話せる人は体感で3〜4人に1人くらいの割合です。

広東語を話して普通語がすこしわかる、が香港で暮らす人々の大多数だと感じました。そのため広東語が選択肢にないと、中国語(普通語)と英語でコミュニケーションを取ることになるのですが、相手も混乱するし、自分も非ネイティブ言語でどれが相手に通じるのか考えながら話さなければいけません。さすがに日常の中で3ヵ国語があるのはきつい。

広東語は普通語と全く違うのでそれが面白くもあるのですが、そっけない店員さんに雑に扱われたりすると、とても毎日会話を頑張ろうとは思えなかったです。また、英語か中国語のどちらかを極めたいなら、曖昧な環境にはいない方がいいだろうという結論に至りました。

【結論】香港で暮らす…え、無理無理。

香港でのローカルな日常は、1週間くらいなら非日常感を楽しめました。けれど、毎日はきついなと思いました。あとメンタルが元気な時じゃないと無理。

でも香港は大好きなのです。特に香港島が。
何度滞在してもやる気を奮い立たせてくれるエネルギーと、独自のノスタルジックさ兼ね備えている景観。唯一無二の都市だと思います。

これからも人生の折に触れて、何度でも訪れると思います。私が人生で行く最も多い海外旅行先が香港になる予感をひしひしと感じています。


数ヶ月ずつ滞在して「どの国に住みたいか」を考える自由研究をしているフリーランスの考察・感想です。このnoteは移住計画の頭の中を綴っています。よろしくお願いします。