暴風の調べに映るは闇(★1分で読める詩、小説)
※心に刺激があるかもしれない作品です。
荒ぶる風に前髪が鬱陶しく今日は一段と風が強い。
台風は穏やかに気づかれないよう、ゆっくり近づいて規則正しい生活を土足で乱していくのだ。
なんと迷惑なことだろう。そこに1人の男が空に向かって吐き捨てた。
「来るんじゃねー! 来るならもっと早くに……俺を刺し殺してくれよ」
風が荒れ狂う中、街中を走り堤防までやって来た男。すれ違う人々は気にせず帰路に急いでいる。
「知らせも要らない何も要らない。ただ、唐突に刺してくれ。そうすればこの世の終わりだ」
叫ぶ男に不審がる人もいない。なぜなら皆この暴風から逃げて家にいるからだ。
「ちがうな──俺の終わりだ。苦しみから解放だ。悲しむ者も誰もいない俺は」
呟く彼に答える者もいなければ暴風もスピードを早めるでもなく、ゆっくりなまま。
じわじわと、静かにやって来ては最後だけ荒れ狂う風で吹き飛ばし、残すものは凪いだ空気だけ。
「知らせなら吉報にしてくれ! 予定された降りかかるモノ……なんの罰なんだ」
天に振り上げた拳は、言葉と共にゆっくり落ちていった。
「一体俺はどんな罪を犯したんだ? おい、風。せめて最後に教えてくれよ」
結局その言葉もかき消されて……言の葉は風に飛ばされて落ちていく。
────堤防に残ったのは凪いだ風だけだった。
◇◇◇
暴風過ぎ去りし日には、何事も無かったかのように穏やかな風に吹かれた堤防。
風は今日も人々の営みを見守り続ける。
あなたを優しく見ているだけ──。
◇◇◇
1人の男が、ふと窓の風音のざわめきに瞳を開くと白い天井が見えた。
顔を横に向けると天使の笑みが見えた。
彼は風によって────目覚めた。
End...
あとがき
自然というのは壮大ですね。人為的なものもありますが……皆さま気をつけて過ごしましょう。
【魔法の書店 創作者L】
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