最終日の追い込みとハイカーボの男
私が産後ダイエットを始めてから1ヶ月目という日が目前に迫っていたある日のこと。
ゆるゆるの目標を立てたにもかかわらず、あと0.3kgが減らせずにいた。
この誤差みたいな数字、たかが0.3kgされど0.3kg。
摂取カロリーを守ってアクティブに家事育児に勤しんでも、簡単には減ってくれないのである。
最初の1ヶ月、何としてでも目標をクリアしたい私は、強硬手段に出た。
主食を低糖質食材に置き換えよう。
夫が一緒だと文句を言われそうだが(言える立場ではないと思うのだが)、幸い週末で夫は息子と2人で自分の実家に泊まりに行くことになっている。
残る娘は1歳になりたてで献立は別なので影響はない。
男どもが出掛けた頃ちょうど昼食の時間だったが、娘に食べさせた後に用意するのが面倒になり、つい先刻の買い物でついでにカゴに入れたカップ麺で済ませることにした。
とはいえ、しっかり“ロカボ”と記載されている。抜かりはない。
あとは作り置きの副菜を添えれば十分だ。
さて実食。
一口すすって、私は目が点になった。
麺にコシがない…!
カップヌードルにお湯を注いでうっかり長時間経ってしまったような柔らかさ。
これがロカボ食材なのか。
小麦粉でないとこうなるのか。
スープの味は美味しい。
しかし食べ応えがない。
固形物を口に入れているはずなのに、全部食べても食べた気がしないのだ。
私は虚空を見つめながら思った。
これは私のようなゆるゆるのダイエッターが気軽に手を出してはいけない商品だったのだ。
もっとストイックに置き換えダイエットをしている、又は医者に許可されたインスタント食品はコレだ!という、そんな真剣な人に向けて開発された商品だったに違いない。
約1ヶ月に及ぶ摂取カロリーとバランスを意識した食生活で、最初のような「いつも足りなくて空腹」という感覚がなくなり、授乳期の8割程度の食事量で満足できるようになっていた。
そんな私でも、さすがに白飯をかき込みたい衝動に駆られた。
しかし、そんなことをしてはロカボ麺の立場がない。
企業努力の結晶を踏みにじってはいけない、と自分に言い聞かせ、白飯は夜に取っておくことにした。
晩ご飯は、以前大豆ミートで作って冷凍しておいたキーマカレー。それと、レタス多めのサラダ。
糖質って美味しい。
思えばこれまで数回あった一人飯は酷いものだった。
コロナ前で夫が当たり前に日中不在で昼食が自由だった頃は、納豆ご飯とか前日の残り物とか、単に“簡単なもの”で内容は悪くなかった。
しかし夫が在宅勤務になり一人飯の機会が消失すると、その反動はとても大きく出る。
休日に夫が息子を連れて出掛ける=好きな物を自由に食べるチャンス、そんな思考回路でスーパーに出向き美味しそうなお惣菜などを買うか宅配を利用していた。
授乳を免罪符に、好きな物を好きなだけ。
今は夫と息子が不在でも、できるだけバランス良く食べるようにしている。
スーパーで買う場合も内容を考えて迷ってウロウロしている。
宅配はやめた。
ちなみに、この産後ダイエットを始めて半月ほど経ったあたりで、娘がサラッと卒乳した。
母乳が出なくなったわけではなく、就寝前私が息子の相手をするのに時間を取られている間に、授乳していないのに娘が寝てしまったのだ。
これを機に卒乳とすることにした。
急だったので、母としてはなんだか寂しい。
そして、私のカロリー消費は自分だけで何とかしないといけない、そういう日々が始まる。
娘、今までありがとう。
話を戻そう。
ロカボ麺を食べたその日の夜、ちょっとワクワクしながら体組成計に乗ったが、体重は微塵も減っていなかった。
いや、大丈夫。こういうちょっと頑張ってみた結果というのは、だいたい翌日に反映されるのだ。
焦らない、焦らない。
と唱えながらもしっかり焦った私は、翌日スーパーに走った。
お昼は再度ロカボ食材にチャレンジするぞ、と意気込んだ。だが、保険として肉系のおかずも買っておいた。レバーの焼き鳥なら脂もなく、普段不足しがちな鉄分とビタミンAが摂れる。
お昼ごはんの他、最近話題のオートミールも買ってみた。どう使うかは後で考える。
そして、主食に選んだのは糖質0g麺。
色々種類はあったが、たれが付いているまぜ蕎麦風のものを手に取った。
ざるで水を切ってレンジで温め、付属のたれで和えるだけ。
それだけでは寂しいので、ストックしていた大豆ミートのそぼろと刻みネギをトッピング。より一層まぜ蕎麦感が増した。
しかし、私は再び食感の壁に激突する。
驚くほどの歯ごたえのなさ。
私、何を食べているのだろう。
まるで飲み物のように消えていく麺、大豆ミートと刻みネギだけを食べているような感覚。
後で知ったことなのだが、スーパーの棚に並んでいた糖質0の麺のうち、平麺タイプが最も食べ応えがある、とどなたかがレビューしていた。
それも、冷たい状態で食べるとのこと。
タレは付いていないので、自分で麺つゆなどをかけるそうだ。
私はタレが付いているという理由でまぜ蕎麦風の麺を手に取ったが、レンジで温めることで余計に食感が失われたのではないかと推察する。
次に食べる時は、平麺タイプを冷やしうどん風に食べよう。
次があるのかどうかは、今後のダイエットの進捗具合によるが。
とはいえ、温冷どちらにせよ夫には出せないメニューである。
平日の昼食に出してみようかなと考えていたが、先に自分で試して良かった。
これだと夫のお菓子の消費量が増えるだけになってしまうだろう。
「糖質0だった分、甘い物を食べてもいいよね」という思考の持ち主である。
まぜ蕎麦の他、レバーの焼き鳥と蓮根のサラダがあったのが救いだった。
特に蓮根。歯ごたえの代表みたいな野菜である。
噛むことで得られる満足感というのは偉大だなぁ、とこの時しみじみと思ったのだった。
15時頃、私の頭の中は「お腹が空いた…何か食べたい…」で一杯になっていた。
家にお菓子はあるのだが、あすけんの管理栄養士に「お菓子でカロリーを摂取しないように」と注意されてしまうので、手を出しにくい。
カップ麺など言語道断、冷凍庫のごはんもせっかくの糖質0麺を無駄にしてしまう。
悶々と考えていて、ハッ!!と思い出した。
オートミールを買ったではないか。
今こそ食べる時ではないのか。
試食という名目で!
数日前にSNSでどなたかがリツイートした、これぞうさんというオートミールレシピ本を出している方の、オートミール炒飯の作り方。
皆口を揃えて美味しいと言うので、気になっていたのだ。
早速作ってみることにした。
手順は実にシンプルである。
まず、オートミールに水を加えてレンジでチン。
そこに卵と調味料を加えて混ぜ、再びレンジでチン。
これだけで完成。
(分量などの詳細はこちら)
食べてみたら、炒飯そのものだった。
オートミールが白米のような食感。
これでわずか143kcalとは、素晴らしい発明である。
これならもしかしたらあの夫も食べてくれるかもしれない。
オートミール炒飯で満足したので、晩は納豆ご飯に浅漬け・味噌汁という質素な献立におさまった。
この日の夜の体重も変化がなく、翌朝あすけんのアプリを開くと『今日でダイエットを始めて1ヶ月ですね!』と管理栄養士が微笑んでいた。
今日中に何とかしないといけないのだが、土日のお泊まりを終えて今日からはまた夫も息子もご飯を食べる生活なのだ。
強引なダイエットメニューは繰り出せない。
だが、朝昼晩の献立を普通にした夜、突然体重が目標値を下回り、見事達成となった。
急なことで「へっ??」と驚くばかり。
ロカボ麺と糖質0麺の効果が遅れて表れたのだろうか。
布団の中でこの3日間を振り返って、劇的な違いに思い当たった。
月曜日だったこの日は、とにかくずっと家事をしていた。
息子はまだ幼稚園児なので、外に遊びに行く際は付き添わなければならない。
息子が遊びに行っている間に自分は晩ご飯を作って待っている、ということがまだ出来ないので、息子を幼稚園に送ってから迎えに行くまでの4時間半で掃除から夕食の準備、その他諸々の雑多な用事を済ませておく必要があるのだ。
その為、座っていられるのは昼食の間ぐらいで、その他の時間は常に立って動いているという状態である。
対して、土日は買い物以外の外出がなく、まだ歩かない娘と二人きりでまったり過ごしていた。
散歩に行こうとしたら天気が崩れたのも痛かった。
つまり、食べたメニューの影響ではなく、月曜日のカロリーの消費量が土日の2倍だったということだ。
あすけんでは、家事も運動として登録できる。
立位の軽い家事で10分29kcalの消費、3時間やれば500kcalを超え、一食分がほぼ消費される計算だ。
私はどんな家事が軽いのか重いのかいちいち考えるのが面倒で、家事は全て“立位の軽い家事”で登録しているため、もしかしたら実際はもっと消費していたのかもしれない。
家事以外では、7kgの娘をただ抱っこして揺らしているだけでも、けっこうな負荷がかかっているわけで。
ランニングやウォーキングなどをもっと出来たら効果が高いのだろうが、乳幼児を抱える身なので仕方がない。
家事でも消費できることがわかったので、これからも忙しく家事をこなしていこうと思った。
最後に、土日を実家の家族と過ごしてきた夫のことを少々。
土曜の夜は寿司で乾杯、日曜の昼はカレーうどん(外食)、夜はラーメン大盛(外食)を食べて帰還した。
とんでもない炭水化物祭りである。
野菜を口にする機会があまりなかった、と夫本人も言っていた。
息子の栄養の偏りについては、2日ぐらいではどうということはない。
メタボの体から脂肪を落とす方が遥かに大変なのである。
その日の夫の体重は、めでたく70kgの大台に乗った。
さすがリバウンド王。
この時点では単純に食べた重量が加算されて重くなっているが、翌日には夫の血肉となりメタボスーツがより強固な装備にパワーアップするのである。
せっかく半年もあすけんを続けてきたというのに、こうもあっさりとV字回復するとは。
とにかく私は私で産後ダイエットを続けるしかない。
実家にお泊まりさせると太って帰ってくることがわかったので、夫とできるだけ食事を共にして巻き込んでいこう。
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