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小説・ゲームシナリオ・映像脚本・漫画原作の違いについて
小説家・漫画原作者の今井真椎です。
文字を書く系の創作物といえば、「小説」「ゲームシナリオ」「映像脚本」「漫画原作」などがあります。
同じ文字で表現するものだし、この4つ、似てると思いませんか?
私は昔、「小説が書ければゲームシナリオも映像脚本も漫画原作も余裕で書けるでしょ♪」と大いなる勘違いをしていました。
ところがどっこい!
全部仕事として経験してみてわかったのですが、この4媒体は書き方もアウトプットも全然違います。
例えるなら、バレーとバスケとテニスと卓球ぐらい、全然違うものなのです。
そこで本記事では、この4媒体を比較してそれぞれの特性を解説することで、「私はどの媒体が書きたい(書ける)んだろう?」とお悩み中の文字書きさんの参考になればと思っております。
ではではさっそくスタート!
①小説
まずは小説から解説していきます。
以下、童話「桃太郎」の冒頭を引用します。
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。
おばあさんが川でせんたくをしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。
「おや、これは良いおみやげになるわ」
おばあさんは大きな桃をひろいあげて、家に持ち帰りました。
そして、おじいさんとおばあさんが桃を食べようと桃を切ってみると、なんと中から元気の良い男の赤ちゃんが飛び出してきました。
「これはきっと、神さまがくださったにちがいない」
子どものいなかったおじいさんとおばあさんは、大喜びです。
桃から生まれた男の子を、おじいさんとおばあさんは桃太郎と名付けました。
桃太郎はスクスク育って、やがて強い男の子になりました。
小説は皆さん見慣れているので詳しい解説は不要かと思いますが、私は小説は「フリースタイルで書く一番自由な文字表現」だと思っています。
「それ単体で商品(最終成果物)になる」のは、4媒体の中で小説だけです。
<小説の書式の特徴>
地の文の頭を1字下げする
セリフの前にキャラ名を書かない
<小説を書く上でのポイント>
地の文に感情を書いていい
セリフは「音」で書くのではなく、「目で読むもの」用に書く
小説自体が「商品(最終成果物)」になるので、美しい文章であったほうがいい
②ゲームシナリオ
ゲームシナリオは実物を見た方が説明が早いです。
「桃太郎」の冒頭をソシャゲのシナリオ風に書いてみました。
//背景:家
@おじいさん
それじゃワシは芝刈りに。
@おばあさん
私は洗濯に行ってきますね。
//背景:川
@おばあさん
ふぅ……疲れた。
@おばあさん
あら? 何かしら?
@おばあさん
桃だわ! 川から大きな桃が
流れてきたわ!
<ゲームシナリオの書式の特徴>
1セリフあたり15字×3行以内など、文字数の指定がある
タップ数の指定もある(1シナリオ60タップ以内など)
背景は//で指定し、キャラ名はセリフの前に表示する
キャラの表情や、SE(サウンドエフェクト)、立ち絵のin/outを指定することもある
<ゲームシナリオを書く上でのポイント>
セリフとモノローグだけで構成することが多い
(地の文を入れてもOKなゲームもあります)素材がない背景や、立ち絵がないキャラを指定してはいけない
キャラのセリフは、「目で読んで」「わかりやすく簡潔」で「テンポのいいもの」にしなければいけない
③映像脚本
次は映像脚本です。
○家
かやぶき屋根の古民家外観。
N(ナレーション)「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」
籠を背負ったおじいさんと、洗濯物を抱えたおばあさんが、玄関から出てきて、それぞれ反対方向に歩いていく。
N「おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました」
○川
おばあさん、川岸に屈み、洗濯板を使って洗濯をしている。
N「おばあさんが川でせんたくをしていると……」
川の上流から大きな桃が流れてくる。
洗濯の手を止め、桃を見つめるおばあさん。
おばあさん「こりゃまたずいぶん立派な……(桃だね)」
おばあさん、目の前に流れてきた桃に手を伸ばし、
おばあさん「じいさんへのみやげにでもするかね」
と、桃を拾い上げる。
<映像脚本の書式の特徴>
柱は○で立てて、ト書きは3字下げする
セリフの前にキャラ名を書く
ナレーションはN、モノローグはMで表現する
<映像脚本を書く上でのポイント>
ト書きにキャラの感情を書いてはいけない(映像で映し出される『風景」『行動』のみを描写する)
セリフは「音」で書く
映像としての「動き」を常に意識しながら書く
④漫画原作
最後は漫画原作です。
○家
かやぶき屋根の古民家外観。
N(ナレーション)「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」
籠を背負ったおじいさんと洗濯物を抱えたおばあさんが玄関で会話をしている。
おじいさん「じゃあ行ってくるよ」
おばあさん「ええ、気を付けて」
○川
おばあさん、川岸に屈み、洗濯板を使って洗濯をしている。
と、川の上流から大きな桃が流れてきて、
おばあさん「ええー!?」
洗濯の手を止め、驚くおばあさん。
目の前に流れてきた桃に慌てて手を伸ばし、
おばあさん「こりゃまたずいぶん立派な桃だ」
おばあさん、嬉しそうに桃を拾い上げる。
おばあさん「じいさんへのみやげにでもするかね」
漫画原作は映像脚本とあまり変わりがないように見えると思いますが、コマに入る絵を意識して、より漫画的な表現にしています。
<漫画原作の書式の特徴>
特に決まりはない。(私は映像脚本の書式を踏襲しています)
<漫画原作を書く上でのポイント>
漫画家さんに原作の意図を理解してもらうため、ト書きにキャラの感情を書いてもいい
セリフは「目で読むもの」を意識するが、とにかく短く簡潔に
漫画ならではの誇張表現を意識して入れる(サンプル内で言うと、桃が流れてきて「ええー!?」と驚くおばあさん、のあたりです)
ざっとこんな感じですが、それぞれの違い、お分かりいただけたでしょうか?
自分が書いた文章をお客さんに直接読んでもらいたい人は、小説かゲームシナリオがおすすめです。
ゲームシナリオはレギュレーション(制約)が一番きついですけどね…。次点、映像脚本。
また、0→1(オリジナル作品を0から考える)が得意な人は小説か漫画原作、1→100(原作ありの作品を100に膨らます)が得意な人はゲームシナリオか脚本、といったような選び方もあります。
4媒体それぞれに特性が違いますので、ぜひ色々体験してみてください。
小説を書くのに苦戦していたけど、脚本ならスラスラ書ける~といったようなことが起こりますので、もしかしたらあなたの得意な媒体が見つかるかもしれません。
以上です!
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