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【話をきく技術】伝える力より受け取る力が重要な理由。

人生において、話す時間と聞く時間、どちらが多いと思いますか?

海外の調査ではこのような結果が報告されています。
人は目覚めている時間の70%をコミュニケーションに費やしており、
その内容は、
書くことに、9%、
読むことに、16%、
話すことに、30%、
そして聞くことに、45%、
ということでした。
話す時間より、聞く時間が長いという結果でした。

この結果をもう少しシンプルにすると、
書く話すといった伝える力は合わせて39%
読む聞くといった受け取る力は合わせて61%
といえます。

最近はプレゼン能力や自己プロデュース、書く技術など、伝える力を伸ばす書籍が本屋でもずらりと並んでいます。

でもコミュニケーションの60%以上が受け取る力に関わるなら、伝える力より受け取る力のほうが重要ではないか。と私は思うのです。

そこで今回は、あまり触れられていないであろう、人の話をきく技術を紹介します。

(話の聞き方なんて知ってるよって方は読んでも発見はないかな…。)

話の流れはこんな感じです。
・話をきくとは
・きく技術とは
・傾聴スキルとは
・傾聴の流れ・傾聴スキルの紹介
・実践編
・まとめ

では、いってみましょう。

話をきくとは

話をきくとはどういう状態でしょうか?
私は、多くの方が知っているけどできていないと思います。

言葉で説明するよりも、体験してもらったほうが早いので、すこしテストしてみましょう。
(テストといっても評価とかではなく、気軽な実験ですので安心してください)

【実験】以下のシーンを思い浮かべてください。

彼女「それでね、Aちゃんに言おうか悩んでるの。」
彼 「へー、そうなんだ。」
彼女「ねぇ、ちゃんときいてる?」
彼 「きいてるよ。Aちゃんに言おうか悩んでるんでしょ。」
彼女「・・・ならいいけど」

どうも彼女はスッキリしていないようです。
どうして彼女はもやもやしているのでしょうか?

(3秒だけでもいいので考えてみてください。

はい、これが”話をきいている状態”です。

これが彼女が求めていた姿勢です。

この彼氏ができないかというと、同じ実験を行えば彼氏も”きいている状態”になれるでしょう。しかし実際にはできていません。


いったいなぜでしょうか?


多くの人はここで労力が頭にうかびます。
例えば、大変だとか、難しいとか、めんどくさい、など。
あなたも労力が浮かんだのではないでしょうか?

「きくのが難しい」といわれるポイントは、どうやらこのあたりにありそうだと思えますね。

これについてはあとで書きます。

ではつづきをどうぞ。


”きく”という行為には、ヒアリング(聞く)リスニング(聴く)の2種類があります。

聞いたことありますよね?

ヒアリングとは、言語の記憶をすること。
リスニングとは、感情面を理解すること。

私たちは”聞く”と”聴く”を混同して使っているため、知っているけどできていない状態になりやすいです。

***

例えば、ビジネスシーン。

「部下から話をきいておいて」といわれたとします。

この場合、部下への情報確認をする「聞いておいて」と、メンタル面の考慮をする「聴いておいて」の2つの解釈ができてしまいます。

しかし、言葉で発する音はどちらも”きく”ですし、文章であっても”聴く”が使われることは、ほとんどありません。

では、英語で発音した場合はどうでしょうか。
「部下へのヒアリングお願いね」という依頼もまた、情報確認とメンタル面の考慮する解釈ができてしまいます。

「先方とヒアリングしておいてね」という依頼も同様ですね。「困りごとや悩みごとを掴んでおいて」という依頼かもしれません。
「リスニングしておいてね」はビジネスシーンで使われることは少ないです。

さて、ここまで大丈夫ですか。

このように、私たちは「聞く」と「聴く」を混同して使っています。

これに気づくと大きな問題に気づきます。ヒアリングコミュニケーションは推測で成り立っているということです。

●思い込み型コミュニケーション

上司「どうした売上達成してないじゃないか」(何か困ってないかな
部下「すみません」(使えない奴って言いたいんだな

●ショートカット型コミュニケーション

彼女「なんできたの?」(もしかして心配してくれた?
彼「わかった、帰るよ」(来てほしくなかったのか…帰ろ

これらをコミュニケーションが雑と言ってます。

相手の言いたいことが分かったフリをしたり、相手に確認をせず勝手に答えを出したり、これは対話とは言えません。

では、彼が「話を聴いた」場合の返答を考えてみます。素直に謝ると考える人もいますが、彼女からしたら何に謝ったのかわかりません。

彼女「ねぇ、ちゃんときいてる?」
彼 「きいてるよ、なんか不満そうだね」

と感情面に理解を示します。

彼女「だって聞いてる風に見えなかったから」
彼 「ごめん、つづけて」

と感情込みのコミュニケーションを行えます。どちらも素直になりやすいですよね。こういったスキルは後ほど紹介します。

ここでわかることは、良質なコミュニケーションとはリスニングであるということです。

想像してみてください。
もし、あなたが誰かに話をするとき、求める相手はどちらでしょうか?
一言一句ミスなくあなたの発言を覚えてくれる相手より、気持ちや感情の触れ合いを感じられる相手を選ぶはずです。

きく技術とは

では、どうすればリスニングを上手く使えるようになるのでしょうか?
ここでは、知っているけどできていない状態からの脱却方法を紹介します。

結論からいうと、必要なのは傾聴(リスニング)スキルです。

傾聴スキルは、カウンセラーさんや介護職員など医療従事者なら学ぶ機会があります。
しかし、一般の私たちは、日常で傾聴スキルを学ぶ機会がほとんどありません。
両親や先生、上司や友人も、間違ったコミュニケーションを教えられ、間違ったコミュニケーションを行い、間違ったコミュニケーションを覚えてしまいます。

その結果「上手く伝えるにはどうすればいいのか」と悩み、伝える技術を学びはじめるのです。

もちろん伝える技術も必要かもしれません。
ただもし伝える技術に限界を感じたら、その時は聴く技術を学んでみるのもいいかもしれません。


傾聴(リスニング)スキルとは

「ついなんでも話してしまう。
「聞いてもらってスッキリした。

そんな気持ちになった場合、相手は傾聴をおこなってくれた時です。
占い師さんやカウンセラーのように聴くことを仕事にしている人以外で傾聴できる方はそうそういません。
もしも、あなたの近くにそんな人がいたら幸運です。ぜひ関係を大切にしてくださいね。

さきほど「話を聴くには労力がいる」といったことを覚えてますでしょうか。これはあながち間違いではありません。

では、傾聴できる彼ら彼女たちは、私たちより耐久力があるのかというと、決してそうとは限らないのです。

彼ら彼女らは、シンプルに負担を軽くする方法を知っているだけです。

ヒアリングをするにも労力が必要ですよね。相手の言ったことを記憶するのだって大変です。
そんなときは、録音やメモといった負担を軽くする方法を私たちは知っています。

おなじように、リスニングであっても、負担を軽減できれば、誰でも傾聴を行うことができるようになります。

その方法が傾聴スキルです。

傾聴の流れ

傾聴スキルに入る前に、傾聴の流れを掴んでおきましょう。
傾聴にはクリアするMissonがあります。

●Misson1
『相手の伝えたいメッセージを探す』

●Misson2
『相手の感情はどういったものか探す』

●Misson3
『相手の話を感情を添えて要約し、相手から正解をもらう』

『あなたはこう感じていて、言いたいことはこうですね』
「そうなんです!」

これが傾聴のゴールです。
相手から「そうそう!」「そうなんです!」を引き出せれば傾聴はうまくいったといえます。


ここまで大丈夫ですか?

それではいよいよ傾聴スキルの紹介です。

傾聴スキルは大きくわけて3つの技術があります。
・観察する
・話をうながす
・感情をくみとる

この技術を駆使して、Misson完了を目指します。

傾聴スキル:観察する

コミュニケーションの85%は非言語的コミュニケーションである。

非言語的コミュニケーションとは、ことば以外のことです。例えば、しぐさや姿勢、表情、声のトーンなどです。

つまり、相手の言葉を聞くヒアリングコミュニケーションでは、たった15%しか受け取ることができないということです。


なので、傾聴ではまず、相手の姿がきちんと見えるよう準備します。

・相手とまっすぐ向き合うこと。
・相手との間にバックや食器、物をおかないこと。
・アイコンタクトをすること。

ここで、試しに相手の視点からどう見えるか想像してみてください。親身に話をきいてくれそうな人物に見えませんか?

話を聴く姿勢を示すことは、誠実に相手と接することにつながります。相手はとっても安心できます。

「きちんと聞きたいから、もう少しまってくれる?
「ちゃんと聞きたいから、近くにいっていい?

話に集中できない状態なら、ときに断ることも大切です。


準備ができたら、話を聴きはじめます。
仕草や表情、声のトーンを観察します。

・表情は曇ってないか?明るいか?
・声色はどうか?震えているか?ハキハキしているか?
・声のトーンは高いか?低いか?

いかがでしょうか?

ヒアリングとはまったく違うコミュニケーション方法だとわかっていただけると思います。

難しそうだなって思いますよね。

コツは言葉に惑わされないことです
次の例を見てください。

奥さんが「べつに怒ってないわよ!(ドンッ」と机を叩いた場合。
(口では怒っていないと言っていますが、しぐさは怒っていることを私に伝えています)

読み取れますよね?

じつは言葉と感情が一致することって少ないんです。

例えば、
照れくさそうに「そんなことないですよぉ」って言ったり、
つらいのに「大丈夫、平気だよ」って言ったり、
誰でも言ったことあるし、見たこともありますよね。

ヒアリングでは言葉を受け取って「そうなの?」「ホントに大丈夫?」と返答してしまいます。
でもリスニングでは言葉に惑わされず、「嬉しそうだね」「辛そうだよ」と表情やしぐさからの情報で応答します

少しずつ、リスニングの良さを感じられてきましたか?

このまま、話をうながすスキルにいってみましょう。

傾聴スキル:話をうながす

うながすというのは、話のきっかけを作ったり、適度な刺激を与えて、話を続けることです。

好きに泳がせるといった感じです。
悪く聞こえるかもしれませんが、どうぞお気になさらず、自由にお話しください。といったスタンスです。

うながすスキルを一部紹介します。

・相づちをする
・沈黙をする
・適度に質問する(※取り扱い注意)
・言い換えをする

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<相づち>
相づちで使われる代表的な言葉といえば、
「うんうん」「それで?」「つづけて」です。
この言葉を言われたら話が続きますよね。

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<沈黙>
沈黙が怖いという方もいるかもしれませんが、あなたが聴く姿勢でいる限り沈黙をしていても、相手は話を続けます。

ほとんどの人は他人の話を聴くときにしゃべりすぎる。

これを肝に銘じておくと丁度いいかもしれません。

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<言い換えをする>

相手の言葉を、自分の言葉で言い換えて確認をとる行為です。
「えっと、つまりこういうこと?」ってやつです。
これはMissonのクリアに必要な条件です。

『相手の伝えたいメッセージを探す』

ただし、勝手な決めつけはしてはいけません。あくまで言い換えです。
例えば、こういうこと。

『俺、男だけど男が好きなんだ』
言い換え「そうなんだ、女には興味ないってこと?」〇
決めつけ「それってゲイってこと?」×

決めつけは、ラベル付けやタイプ付けと言われ、コミュニケーションを破壊する行為ですのでくれぐれも気をつけてくださいね。差別やハラスメントにもつながります。
(言い換えが難しい場合は、一旦オウム返しでうながしのもアリです。)

言い換えによって、相手の話は進みます。
もしも、言い換えが間違っていても「いやいやそうじゃなくて」と相手は訂正してくれます。
相手にとっては話を理解してくれようとしている風に見えますので、言い換えたことが間違っててもまったく問題ありません。
(それってこういうことでしょ。と断定はNGですよ。)

この確認行為により、思い込み型やショートカット型といった、雑なコミュニケーションを回避することができます。

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<適度に質問する>
質問は会話において外せない要素ですが、取り扱いに注意が必要です。

クローズドクエスチョン(はい、いいえで答える質問)はあまり使わないようにしましょう。

NG「その日は雨だったの?
OK「その日はどんな天気だったの?

また、質問をしすぎると尋問になりますので、話の主導権を取らないよう気をつけます。

「その日どんな天気だったの?
「晴れだったんだ。誰といったの?
「そうなんだ、どこへいったの?

質問の難易度は高いです。

言い換えて確認する場合の、「それってこういうこと?」の質問に留めるのが無難かもしれません。

傾聴スキル:感情をくみとる

傾聴で最も重要なポイントです。
『相手の感情はどういったものか探す』
にあたります。

ここでは形容詞を使うことが求められます。

嬉しかったんだね。(嬉しい)
楽しかったんだね。(楽しい)
悲しかったんだね。(悲しい)

相手の表情やしぐさ、声のトーン、ボディランゲージから感情を読み取り、相手の感情を代弁してあげます。

ゲームの逆転裁判シリーズを知ってる方がいたら、王泥喜 法介(おどろき ほうすけ)の能力と言えば、分かりやすいかもしれません。

例えば、女の子から

「彼氏といても、なんか楽しくないの」

と話されたとします。

ヒアリングでは「彼氏といても楽しくないこと」を記憶しますが、
リスニングでは彼女が悲しそうなのか、嬉しそうなのかを把握します。

もし寂しそうなら、

「そっか、寂しいね」

となります。

もし嬉しそうなら、

「そっか、嬉しそうだね」

といった具合です。


詳しくはこのあとの実践編で行いますね。

傾聴スキルを要約すると、

・相手に自由に話させる
・仕草や表情から感情を推測して気持ちを代弁してあげる。
・もし確証が持てなかったら「こういうこと?」と確認をとっていく。


実践編

ここでは例題から実際の流れを一緒に考えてみましょう。

さきほどの

「彼氏といても、なんか楽しくないの」

を例題にしてやってみます。

この場合どちらが頭に浮かびましたか?

ヒアリングでは「彼氏といても楽しくない」と感じているんだな。
リスニングでは「悲しいのかな」「寂しいのかな」と考えます。

リスニングでは彼女の表情から悲しい・寂しいというネガティブな感情を読み取ります。

なので、

「そっか、悲しいね。
「そっか、寂しいね。

と相手の感情を応答します。

もし、この言葉が彼女の感情と一致していれば「うん、そうなの」と返ってきます。(当たった感触は感じ取れます)

でも、彼女がちょっと違うなってときは「うん…でもね」など、いまいちな反応が返ってきてますので、次の会話で別の感情を探してみましょう。

***

感情を感じとることはできても、言い当てることは難しいです。
寂しいと感じているときに「悲しいね」と言われてもピンときませんし、悲しいと感じているときに「寂しいね」と言われてもピンときません。

心の中でつぶやいているセルフトークを代弁してあげる必要があるんです。

話してる本人が「寂しい」と感情の言葉を出してくれればいいのですが、ほとんどの場合、自分の感情を読み取れません。

それを言い当てるからこそ、理解してくれてる!と感動するわけです。

リスニングは何をしているか、だんだん掴めてきたのではないでしょうか?

私が使う、ネガティブ返答語録集をご用意しました。『そっか、それは〇〇ったね』と使ってください。

悲しかったね、寂しかったね、へこむね、不安になるよね、苦しかったね、つらかったね、憂鬱だね
(ストックがあれば、当たる確率も高い)

もしも、感情の読み取りが難しい場合は、うながしスキルを使います。

「そっか・・・うん、つづけて」(相づち)
「そうなんだ・・・沈黙」(沈黙)
「寂しかったりする?」(言い換え確認)

すると彼女は話を続けてくれますので、引き続き感情を探してみてください。

文章で書くと難しそうに思いますが、誰でも基本ベースはできているので自信をもって大丈夫です。

ビジネスシーンの「部下にヒアリングしておいて」を理解できるのは非言語的コミュニケーションを読み取れているからです。

感情のドンピシャはなかなか難しいかもしれませんが、喜怒哀楽といった近しい感情を汲み取ってあげるだけでもぜんぜん変わってきます。

ぜひ挑戦してみてください。


なんか、難しそうだなぁって感じるのもわかります。
私もはじめはそうでした。

ちょっと、ここで労力の正体を明かしおきましょう。
おぼえていますか?

ヒアリングに慣れている方は無意識に相手の言葉を聞き洩らさないように注意してしまいます。

なので、リスニングって言葉を聞き洩らさないようにしながら、しぐさや表情に注目しないといけないって思ってませんか?


大丈夫です。
それ、フツーに無理です。

リスニングで重要なのは感情を当てることで、言葉はスルーで構いません。

感情はしぐさにあらわれる。

覚えておいてくださいね。

お勧めはしませんが、リスニングが得意な方に、『私いま何て言ったかおぼえてます?』と聞くと、たぶん答えられないと思います。
言葉は聞かず、しぐさや感情に注目してるからです。つまり、ヒアリングと逆のことをしてるだけなんですね。
(相手を試すようなマネは信頼を失うので、やめてくださいね)

まとめ

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

一言でまとめてみますと、

リスニングとは、相手の話を泳がせて、相手の話を要約して、相手の感情を代弁してあげるコミュニケーション方法です。

はじめはどうしても言葉に意識が持ってかれ、切り替えに苦労すると思います。

そんな時は、怒ってんのかな?寂しいのかな?楽しいのかな?と感情に耳を傾けてください。
そういう姿勢って非言語的コミュニケーションなのでちゃんと相手に伝わります。「あ、ちゃんと話聞こうとしてくれてる」って。

反対に口だけのテクニックは、簡単に見抜かれています。「あ、こいつなんか裏がありそうだな」って。でも相手には伝えませんよね。

人は自分に興味があるかないか簡単に見抜けますし、非言語的コミュニケーションによって気づかないうちに伝えてしまいます。

私が傾聴を実践して気づいたことは、
人が何かを話すのは、誰かに何かを伝えたいわけではなく、
自分の感情と意見の整理を手伝ってほしいだけってことです。

ただ耳を傾ける。
それが難しいのは聞く方も話したくなるからです。話して自分の意見を整理したくなってしまうんですよね。

毎回、この誘惑に勝つのに本当に苦労します。
傾聴で一番難しいのは間違いなくこれです。

でも、感情を汲み取ろうとしてくれる人って本当に少ないんです。

ぜひリスニングで相手の心に触れてみてください。
誠実で素直な対人関係をあっさり構築できちゃいます。

それではまた。

最後まで読んでいただきたありがとうございます。





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