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イベリコ豚は食べ損ねたけど、あの日のことはきっと一生忘れない。

その昔私が福山雅治さんのライブに足繁く通っていたころの話。周りのましゃ友(福山雅治さんファンの友達のこと)には息子のことをよく可愛がってもらっていた。しかし息子をライブに連れていったことはなかった。なんせ爆音が苦手だったから。

当時息子はまだ小学生だった。小さい子供がいるからなかなかライブ以外では会えないなあと友達には言っていた。でもみんな「子どもも連れてきていいから、遊びに行こうよ」と言ってくれて。その言葉に甘えたことが何回もある。彼も彼で美味しいものが食べられるからといつもその話に食いついていた。

その日も息子を連れて大阪に出かけていた。息子の目的は「イベリコ豚を食べること」。私が以前イベリコ豚を食べてきたんだよという話をしたら彼が食いついてきたので、連れ出した。
 
しかしそれをいざを食べようとして一悶着が起きてしまう。お店にはその他の肉のメニューがあった。息子はどれを食べるか迷いに迷った挙句、黙り込む。そこで友人が「イベリコ豚食べるんだよね?」と優しくその方向に持っていこうとしてれている。

しかし彼のだんまりは続く。何を言っても口を開かない。せっかく友達も優しく言ってくれてるのになんでよ?あんなにイベリコ豚が食べたかったはずなのに、ここに来てなんで決められない?

なんでー?と私のイライラが沸き立ち沸騰してしまう。私は(親として本当に本当に失格なことに)「いい加減早く決めてよ!」とプチンと切れてしまった。

もちろん当たり前だけど、息子はますます捻くれてしまった。貝のように固く口を閉じた。こういうパターン、実は息子と私のお決まりのやり取り。ダメなことだといつも反省はするのだけど、結局いつも私がプチン、のパターンだった。

困ったのは友達でまあまあ、と私をなだめ続けてくれた。息子のフォローも欠かさずに。そこから結局どこで晩御飯を食べたんだっけ?今となっては覚えてない。息子に対して私がキレたことだけが大きな記憶になっていて。

帰りの電車の中でフツーに息子と会話していたのは覚えている。どこか吹っ切れるまで息子は固まってしまう子だった。それは夫から怒られた時もそうで、固く口を閉じて俯き微動だにせず下を向いてしまう。そんな息子のことを1番よく知っている私こそが、あそこでどうにかしなければいけなかった。

でもどうしたら良かったのだろう?「食べたいものが決められないのね。だったらこれにする?」とか?それでも微動だにしなければ「もう今日は帰ろうか?ご飯は食べられなくて残念だけど。また今度にしようね」とか?

幸いにも、今では息子はとても優しい大人になってくれた。今その話をしてもケラケラ笑って終わりにしてくれる。「あの時はひどかったなあ」と言いながらももう怒ってはいない。その当時は、知らんけど。
 



#書く部のお題で書いてみた
#お肉をテーマにエッセイを1本




今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次の記事でお会いましょう。

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春野  ましゃこ
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