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ハチミツはんぶんこ|シロクマ文芸部
「ハチミツはんぶんこしよう」
たっくんが突然言い出しました。
赤ちゃんのげんこつくらいの大きさの小さな小さな瓶に入れられたハチミツ。お母さんがこの間誕生日プレゼントでもらったもののようです。
多分外国のものなのでしょう。キレイな赤と金の瓶。もしかしたらクリスマス用なのかもしれません。
「いいよ、じゃあたっくんはこのくぼみのところまで食べていいからね」
さっちゃんはその瓶の真ん中のくぼみを指さしてたっくんに確認しました。半分こするにはちょうどいいくらいの大きさです。
たっくんは食器棚から無造作にスプーンを取り出し、早速その瓶からハチミツをすくおうとしました。
でもそのスプーンは瓶の口より大きくて中に入りません。ハチミツまで届かないのです。
「さっちゃん、もっと小さなスプーンなかった?」
たっくんはテーブルの上をぐるん、と眺めながらなさそうだと思いました。
「さっき食器棚にもそんな小さなスプーンは見当たらなかったよ」
「あるよ。でもこれはお母さんがとても気に入って大事にしてるスプーンなんだよ。確かティースプーンって言うんだって」
さっちゃんはどこからかそのティースプーンを持ってきたのです。
「スプーンを持ってきてあげたんだから、さっちゃんが先に食べていいよね」
さっちゃんのその何気ないひとことでたっくんはカンカンに怒ってしまいました。
「ずるいよ、僕だってさっきスプーン持ってきたじゃない。ただはちみつまで届かなかっただけじゃない!! ずるいよー!!」
たっくんは堰が切れたかのように突然大粒の涙を流しはじめました。
「ごめんね、たっくん。じゃあさ、交代ごうたいにしよ。たっくんから食べていいからね。さっちゃんはたっくんのあとで食べるよ」
やっと涙が収まったたっくん。急いでティースプーンでちょっとその高級なハチミツを平らげ始めます。
2人は仲良く椅子に浅く腰掛け、前のめりになってハチミツにむしゃぶりつきました。
いつの間にか2人の手にはそのドロドロした液体がまとわりつき、それぞれ洋服にまで黄色いシミがついてしまいました。
「あ、たっくん2回連続で食べちゃダメ」
さっちゃんはたっくんの手を止めようとしました。しかし2人の手はベトベトで床にまでハチミツの塊がいくつか零れ落ちています。
「何やってるの?2人とも」
お母さんが帰ってきてキッチンを覗くと、ちょうど2人が床に落ちたはちみつをティッシュで拭いているところでした。
「あら、ハチミツをこぼしたの?ティッシュで拭いたら余計引っ付いて取れなくなるでしょ。それにしても盛大にやってくれたわね!! でも、どう?2人とも美味しかった?」
「美味しかったよー」
たっくんとさっちゃんはお母さんに叱られるものだと思っていたので、ホッとしながら返事をしました。
「そのハチミツはお母さんの大事な人からのプレゼントなのよ。まあ、しょうがないわねえ。せっかくだからパンケーキでも焼いちゃおうか?その前に2人とも服を着替えてきてね」
そしてお母さんはテーブルの上にこぼれたハチミツをウエットティッシュで拭きました。もちろん床の上も。
「ふふふ」
たっくんとさっちゃんは笑いながらキッチンから出ていきました。
(1304文字)
小牧部長、この際もよろしくお願いいたします。
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ありがとうございます✨
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