消えた課長の妻
その日は午後から会議があった。年度末が近く決算報告書も仕上げねばならかったし、俺は最近仕事に振り回されていた。
「おい、澤田。明日までに報告書仕上げてくれよな。そろそろ岩本部長から催促がくるんだよ。まだまだ年度末までは時間があるっていうのにせっかちなんだよ、あの部長は」
「えっ、小西先輩まだ3月の頭ですよ。そんなに急がなくても何も困らないはずですが」
岩本部長は本当にせっかちだ。まだ3週間も猶予があるというのになぜそんなに急ぐんだろう。
「あ、先輩はBOSSでしたよね。買ってきました。良かったら」
そう言って俺は小西先輩にBOSSの缶コーヒーを手渡した。俺の会社には自販機がある。以前その自販機で俺の好きなジョージアを買ったつもりが、WONDAが出てくるという珍事が起きて驚いた。今日はBOSSもジョージアもボタン通り正確に出てきたし、釣りも間違いなく落ちてきた。一安心だ。
「おう、ありがとう。気が利くな!おれはやっぱりボスだからBOSSなんだよな。そういえば澤田のとこ子供が生まれたばかりだったな。祝いは何がいいんだ?何でも言ってくれよ」
「ありがとうございます。そうですね、何がいいですかね。あ、生まれたのは次男なんですが実は長男が大食漢で困ってるんですよ。おやつにお金がかかって。なので、駄菓子菓子のセットなどをいただけたら大変助かります。厚かましいお願いですみません」
「なんだ、そんなに安いものでいいのか、お安い御用だ。明日にでも阪神百貨店から家の方に送ってもらうように手配しとくよ」
「小西先輩、本当にいつもお気遣いありがとうございます。妻も喜びます」
「じゃあ、澤田。決算報告書だけは明日までに必ず仕上げてくれよな。頼んだぞ」
―――
さて、書類も無事書き上げたことだし会社に行くか。俺は眠い目を覚ますために顔を洗い、黄色い虎のタオルで雫を拭いながら妻の方に目をやった。
「じゃあ、行ってくるよ。小西先輩が今日にでも駄菓子菓子のセットをお祝いに送ってくれるそうだ。やっぱり小西先輩、気が利くなあ」
―――
会社に着いてすぐ小西先輩のところに行き、徹夜で仕上げた決算報告書を渡そうとカバンを開けた。手でカバンの中を確かめた。あ、そうそう、このファイルの中に入れたんだよな。
「先輩、ちゃんと仕上げてきましたよ。はい、こちらです」
「おう!さすが澤田だな。ありがとう」
そう言い、先輩に渡そうとしたファイルに目をやった途端、俺は一瞬何が起きているのか分からなかった。ファイルの中の書類が…ない。
「先輩!書類がありません!ここに、このファイルに入れたはずなんですが、ありません!」
「どうせ家にでも忘れてきたんだろ。まあ、岩本部長も一日くらいの猶予はくれるだろう。明日きちんと家の中を探して確認してから持ってきてくれ。もしなかったら明日は残業だぞ」
「はい…承知しました。申し訳ありません」
どうしてなかったのだろう。家を出る時は確かにファイルの中に存在していたはずの書類が消えた。俺は一見仕事をしているようで心はファイルのことばかり考えていた。
そして俺は心の中でつぶやいた。
「返ってこいよ!俺の決算報告書!!返ってこいよ!!」
すると、その時突如としてコニシ課長のスマホから爆音がオフィス中に響き渡った。
「コニシ先輩、どういうことですか?とにかく音楽を止めてください!!」」
課長は急いで音楽を止めて、俺にこう言った。
「いや…俺のカミさん実は5年前に突然家出したんだよ。勝手に離婚届だけ送り付けてきてさ。仕方なくハンコ押したんだ。今頃どこで何をしてるんだろうなあ…」
そう言って俺に奥さんの写真を見せてくれた。
俺は全身から血の気が引いた。
なぜなら、そこに写っていたのは俺の今のカミさんだったから。
#なんのはなしですか
なんのはなしです歌
このお話、かなり前にプロットを作りコニシ木の子さんにも読んでいただいたのですが、ダメ出しをいただき&自分でも意味が分からなくなったので、大幅にストーリー変更しました。
笑いつつ怖がっていただければ幸いです(* ᴗ͈ˬᴗ͈)”
そして今日も一曲!!
私の大好きなnoterさんたちに影響され、藤井風さんを今聴いていますヾ(*´∀`*)ノ
中でもこちらの「満ちてゆく」がオススメということでした。
なかなか私には新鮮な曲ばかりで、心地いいです!
オススメしてくださった方、ありがとうございます(*´ω`*)
今日はさらにもう一曲!!
まるさんのリクエストにより、「LOVE PHANTOM」どうぞ〜💕
本当はこんな記事を上げている場合ではないのは百も承知でございます…。
少し来週は忙しく、今後本当に企画だけになりそうなのでこの辺でひとつ上げさせてください(* ᴗ͈ˬᴗ͈)”
息抜きに、どうぞ( 'ч' )
今日はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
どうか素敵な週末をお過ごしください٩(ˊᗜˋ*)و