アラブの衝撃
怒涛の2022年が終わり、混乱の2023年がスタートし早7か月。
メッシはメッシ自らが自身の終焉を受け入れ、
ロナウドはロナウド自身の夜明け前を迎えたクラブに背を向け
東へと歩を進めた。
チェルシーはまるで世界恐慌のように失速し、
ついにマンチェスター・シティがクラブ史上初のトレブルを達成した。
昨今のfootball界は世界情勢のごとく衝撃的なニュースが舞い込んでくる。
クリスティアーノ・ロナウドの大出奔、
ニューカッスル・ユナイテッドの大躍進。
昨今の話題の中心地はサウジアラビア
アラブの衝撃はどのような要因の下でどのように影響するのか。
筆者が目をバッキバキにして調査した内容をもとにまとめていきたい。
サウジアラビア概要
クリスティアーノ・ロナウドがマンチェスター・ユナイテッドから去り、カタールでの大会を終えサウジアラビアのアル・ナスルと契約したのは
2022年の終わりである。
年俸2億ユーロ(約280億円)で合意した。
彼が今現在も暮らしているサウジアラビアとはどのような国なのか。
サウジアラビアは中東に位置する絶対君主制国家だ。イスラム教徒の聖地であるメッカ・メディナを持ち、首都をリヤドとする石油輸出国である。
イスラム教スンナ派が主要宗教であるが
総人口の31%が外国人労働者であるので、
実のところ宗教はバラバラである。
高所得国の認定を受けているが、
教義を基とした女性の権利問題や信仰の自由の制限がある。
絶対君主制というだけあって、
やはり元首はサウード家である。
「サウード家のアラビア国家」であるのだ。
サウジアラビアのサッカー事情
そんなサウジアラビアでの国技はサッカーであると言える。
W杯でアルゼンチンに唯一の勝利を収めアジア諸国の奮起を促した。
アルゼンチンに勝利した次の日を祝日にしようとしていたのも
記憶に新しいだろう。
また、2021年のニューカッスル・ユナイテッドの買収、
C・ロナウドのアル・ナスル移籍、
カリム・ベンゼマ、エンゴロ・カンテのアル・イティハド移籍、
他スーパースターの青田買い。
最近の怒涛の移籍ラッシュは全世界に驚きを与えているに違いない。
明らかにfootballに対して異常な熱量を持っている国家である。
中東の雄がw杯へ初めて出場したのは1994年のアメリカ大会である。
W杯出場回数も6回に上っている。
その基盤を作ったのはアブファイサル・ビン・アブドゥラジーズである。
彼は1952年にサウジアラビアリーグを創設、1955年にはプレイヤーのための基金も設立、1956年にはサウジアラビアサッカー連盟を創設した。
彼が去ったあと、フランク・ライカールトなどが歴代監督を務めるほど
footballに熱が注がれていく。
昨年のカタール大会でも
フランス人監督エルヴェ・ルナールが指揮を執った。
さらに、国内においては
サウジ・プロフェッショナルリーグが創設され、
443名の選手がプレーする中、130名、
つまり全体に対して約30%を外国人選手が占めている。
(j1:14.6%、中国:15.9%)
世界リーグランキングでも26位の日本を抜いて19位に位置している。
まさに今最もfootballがアツいエリアだということだ。
VISION2030の存在
サウジアラビアのfootballの熱量の大きさはただ単に
巷の娯楽ということだけでは説明がつかない。
これほどまでの勢いは誰が作り出したのか。
それはまさに国家である。
2016年に、サウジアラビア皇太子のマフメド・ビン・サルマン氏は
VISION2030なるものを発表した。
VISION2030とは、中東の特産品である石油依存の経済から脱出するべく
策定された長期国家プロジェクトである。
主には、経済の多様性、国民のアイデンティティ、
サウジアラビア経済の刺激である。
サウジアラビア王家、または国民の
footballへの熱量はまさにこのVISION2030に詰まっている。
長期国家プロジェクトであるVISION2030の中で
footballは多様な経済の構成要素と認識されている。
雇用の創出、企業観光の促進、業界関係者の人材育成の機会創出、
スポーツツアーでの活用、スポンサーシップ、放映権など
footballの圧倒的人気による商業的効果を目的に、
国家がプロジェクトに含めているのだ。
サウジアラビア国内のfootballの強化、エンターテインメントとしての活用によってサウジアラビアの経済を多様化することを目指しているのだ。
インフラ投資の分析、世界的なタレント、主要なイベントの開催、次世代のスーパースターの養成により、サウジアラビアのfootballを商業的にも娯楽的にも促進し更なる国外ファンの増加や投資増加を図っているのだろう。
このVISION2030に沿って、サウジアラビアは活発に行動しているのだ。
VISION2030に向けたfootballの更なる活用
その一部が、
サウジアラビアの観光大使にメッシが就任し(PSGの練習欠席事件は密約であるサウジ滞在によるものだという噂も)
2022年5月には第2の都市ジッダを訪問し、
2023年2月にはC・ロナウド率いるアル・ナスルと対戦したことに
表れている。(スポーツツアー、世界的なタレント)
また、サウジアラビア国内では約7,000億円がfootballに投資され
近代的なスタジアム建設やトレーニング施設の建設に充てられている。
また、VISION2030内の健康分野でもfootball自体が推奨されており、
”Football School"という
若者のスポーツ参加を推進する取り組みも行われている。
それだけでなはない。
2018年のロシア大会を目の前にし、サウジアラビアサッカー連盟は
ラ・リーガに対し、国内選手9名の移籍を行っている。
その移籍形式が独特で、
ビジャレアルやレガネスにレンタル移籍をさせるのだが、
移籍金や給与はサウジアラビア側が負担している。
選手の強化を行いつつも、ラ・リーガにメリットを提示しながら
スペインの注目を確実にサウジアラビアに向けさせていた。
その結果が、
スペインスーパーカップ決勝のサウジアラビア開催だと筆者は睨んでいる。
スペイン国内タイトルをサウジアラビアで開催したのは、やはり
観光客の促進もあると考えている。
また、国際情勢的にはフランスと親交があり、
マクロン大統領のサウジ訪問、
サルマン皇太子のフランス訪問はまさにその結晶であると言える。
ここにさらに昨今の移籍騒動が絡んでくるのだが、それはまた後で話そう。
その証拠にフランスを中心に
サウジ資本のアカデミー開設などが行われている。
その実は、
Saudi French business concilというパートナーシップの存在が大きい。
つまり、
フランスがサウジのfootball支援を行っていると言っても過言ではないのだ。
PIFのサルマン皇太子
実際にVISION2030に向け、活動的なのは首相兼皇太子兼経済開発評議会議長のムハンマド・ビン・サルマン氏である。
サルマン皇太子は政府系投資ファンドであるPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)の代表を務めているのだが、
このPIFこそがVISION2030のfootball部門の真の遂行者であると言ってよい。
このPIFこそニューカッスル・ユナイテッドの買収遂行者であり、
国有クラブ(アル・ナスル、アル・ヒラルなど4クラブ)の民営化の主導者であるのだ。
football以外にも、PIFのサルマン皇太子は日本のアニメやゲーム業界にも投資を行っている。カプコンやスクエアエニックスの企業株も保有しており、
任天堂などは5.01%の株式まで保有している。
その影響か、2023年4月~6月に、第2の都市ジッダにて、
日本のカルチャーを体験するイベント「アニメビレッジ」を開催している。
移籍騒動と来日ツアーの考察
いろいろと長い話になってしまったが、
サウジアラビアのfootballの勢い、サルマン皇太子の執念、VISION2030への執着など知っていただけただろうか。
さて、アラブの衝撃を分解して考えれば、
よく理解できる部分がある。
一つは、サウジアラビアのfootballは一過性ではなく戦略的であるということだ。
C・ロナウドはさておき、カリム・ベンゼマ、エンゴロ・カンテの移籍についての考察は上記の内容でも説明がつくだろう。
ベンゼマは、
ムスリムの生活環境を考慮した上であるとコメントをしていたが、
それは移民問題に突き当たるフランスには
相性の良い環境であると言えまいか。
フランスとサウジの深い繋がり、サルマン皇太子のfootballへの投資、
W杯で見られたマクロンのfootballの政治的利用を考えれば
これからフランス人フットボーラーのサウジ転入は俄然当たり前になる。
スーパースターの獲得はサウジアラビアの経済に繋がる。
本当によくできた戦略である。
そして、多くの人々は今夏のジャパンツアーに疑問を持っていることだろう。著者の妄想話を当然の如く考察として聞いてほしい。
アル・ナスルを保有しているのは先ほども述べたようにPIFだ。
また、アル・ナスルの日本での日程は以下のようだ。
7/25 vs PSG (ヤンマースタジアム長居)
7/27 vs インテル(ヤンマースタジアム長居)
注目していただきたいのは、
PSGとインテルとの対戦がどちらもセレッソ大阪のホームスタジアムである
ヤンマースタジアム長居であるということだ。
さきほども述べたように、PIFは日本のアニメ、ゲームにも投資している。
カプコンにもだ。
CAPCOMである。
ご存じの通り、CAPCOMはセレッソ大阪のオフィシャルスポンサーである。
つまり、このジャパンツアーの中心はPIFであると著者は考えている。
また、インテルについても1年前にはサルマン皇太子の買収報道が報じられた。
加えて、
今年にはクロアチア代表マルセル・ブロゾヴィッチに対する
アル・ナスルのオファーが報道された。
ルカクに対するサウジ勢のオファーもある。
C・ロナウド単体でいえば、
7月末にSIXPAD最新モデルの披露が大阪で行われる。
あくまでも、
アル・ナスルとそこに所属しているC・ロナウドが中心とした
イベントマッチではないかと思ってしまう。
ロナウドの契約条件に自身のプロデュースする製品のPR権利などが保障されていればなおのことである。
最近の移籍騒動とジャパンツアーに関して、
私の考察を述べさせていただいた。
信じるか信じないか、あなた次第です!
最後に
このように、盛り上がりつつあるサウジアラビアのfootballであるが、
彼らのようなスーパースターの獲得などはスポーツウォッシングではないかという見方も存在する。
カタールW杯の開催前も、スタジアム建設に関わる労働者の死亡や人権侵害についてとやかくと各方面から批判を浴びていた。
中東の文化というのはヨーロッパ諸国からすればあり得ないものだろう。
本当の悪が中東に存在するか否かは私にはわからないが、
批判に対する対応策としてその負の部分から目を遠ざける手法を採用しているのかもしれない。
だが、サウジアラビアが本当のfootball強豪国になるときには、
その声はどうなっているだろうか。
footballの覇権だけでなく、
世界経済の覇権もその頃には掌握しているかもしれない。
2030年に向けて、サウジアラビアは着々と準備を進めている。
万博の開催、W杯の開催などに名乗りを上げていた。
一方我々日本は、このままスポーツを
ただのエンタメとして見てしまってよいのだろうか。
経済構造が変化し続ける今、
スポーツやfootballの可能性を
真剣に議論する必要があるのではないだろうか。
頭がくらくらする。
私は誰とでも語り合いたい。
議論をしたい。
連絡待っています。