狭い意味での素粒子理論・広い意味での素粒子理論
どうやら最初の記事が最後の記事になることは免れたようだ・・・ブログのときもそうだったけど、こういうのって始めたばっかのときは結構やる気があるんですよね。さて、私は理論物理学者で素粒子理論(素粒子論)を専門としていることになっているので、手始めに素粒子理論とは何かを自分の感じで説明してみようかと思う。ただ啓蒙書とかではあまり説明されない広い意味での素粒子理論のことも書こう。
素粒子理論は基本的には、素粒子物理学に理論的にアプローチする分野である。これはまったく正しい。正しいのだが、個人的には単にこう表現すると素粒子理論の全体像の何割かを取りこぼしている気がする・・・このあたりの微妙な感じを伝えられたらと思う。
狭い意味での素粒子理論
狭い意味での素粒子理論は、次のような問いに理論的にアプローチする分野と言って良いだろう:
モノ(宇宙?)の究極の構成要素(=”素粒子”)は何か?(※)
”素粒子”が従う物理法則は何か?
これは色々なところで説明されてるけど、一応説明しとくと、例えばネコが何からできてるか考える。細胞?細胞は何からできてる?原子?原子は何からできてる?電子と原子核?こういう問いをひたすら繰り返す。「ネコ」の部分も変えまくって同じ問いを繰り返す。そうすると色々なものに共通の基本的な材料が見えてくる。それが素粒子の候補。もちろん現時点での素粒子の候補はさらにより基本的な材料からできているかもしれない。だから素粒子が何かという認識は時代と共に変わってきた。素粒子の候補が従う(みかけの)物理法則も時代によって変わってきたので、今は他の分野の研究対象になっているものがかつての素粒子物理学の研究対象だったりする。こういったことをこれ以上より基本的なものがないだろうってところまでやりたい。(これは宇宙がどのように始まったのかという疑問にもつながるのだけど、それはまた今度書こう)
こういう風にどんどん基本的な構成要素を理論的に突き詰めていくのが、素粒子理論に対する典型的なイメージだと思う。あとは、素粒子の候補とそれが従う物理法則が大体これでしょってなったときに、それが本当に正しいかどうか検証する必要もありますよね。それも狭い意味での素粒子理論の範疇だと思う。例えば陽子と中性子はクォークっていう粒子からできてると思われてるけど、クォークの(暫定的な)物理法則から本当に陽子・中性子(あるいは原子核)に関して知られていることが導出できるのか調べるとか。
また、素粒子物理学は英語では(Elementary) Particle PhysicsとかHigh Energy Physicsと言われ、それに伴って素粒子理論も(Elementary) Particle TheoryとかHigh Energy Theoryと言われたりする(Theoretical Particle PhysicsとかTheoretical High Energy Physicsとか言われることも)。Particle Physics/Theoryは大体直訳だけど、High Energy Physics/Theoryはちょっとちがいますよね。これは素粒子のような”小さな”世界を探ることが結局”高エネルギー”を探ることにつながるからなんだけど、これも追々書くことにしよう(多分)。
※素粒子にちょんちょん(””)をつけたのは、究極の構成要素は粒子とは限らないから。「モノ(宇宙?)」の部分はよく「物質」と書かれるけど、世の中のもの全てが物質だけで構成されているとは限らないので、自分はこんな感じで表現するようにしている。
広い意味での素粒子理論
すみません、疲れてきたからまた今度(多分)書きます。こういうときに無理をしないのが長続きの秘訣。じゃあの。
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