見出し画像

農家が就業規則を作った話

米田ファームでは社会保険労務士と顧問契約をしています。就業規則や、労働条件通知書、雇用契約書などを6年前に作成しました。同時に雇用保険と労災保険にも加入しています。
農家では大規模経営が増えてきているとは言いつつも、他産業と比べるとあまり雇用している人は少なく、労務に関する書類も作成している農家は多くはありません。
なぜこれらの書類を整えようと思ったか、その後どうなったかをまとめてみます。

経営規模とともに労務に関することを考えることが増えてきた。

5年目を迎えるにあたって、売上は2000万を超えてきて、雇用もフルタイムでは無いものの4名のスタッフがいました。その頃は飲食業界での経験や、知人に聞くなりして雇用契約書は作っていたものの「何となく」「勘で」な部分が多かったです。
栽培面積は約4ha。栽培に関しても忙しくなてきていました。昨年は何に失敗して、どう対策すれば良いのか。上手く取れた要因は何か?どの品目を増やして、新たに栽培する品目は何が良いか。など頭を使います。
それ以外にも作業場はまだビニールハウスでしたからこれからさらに拡大していくにあたって作業場はどうするか、拠点が必要だなと考えたり、トラクターは中古で程度の良いものないか、新品なら何か使える補助金はないかなど考える要素は無数にあります。
事業を前に進めるために頭を全開で使って行かなければいけないのに、労務に関してこれほんまに大丈夫なんかな。事故起きたらどのくらいまでの責任があるんだろうなどと考えることも増えてきました。

千葉県の専門家派遣事業

とはいえ誰に相談すれば良いかなー、とか考えているうちにそのまま時間は過ぎていったのですが、あるとき県の職員さんに米田さんこんな事業あるんですけど興味ないですか?とお話しを頂きました。
それは県からさまざまな分野の専門家を農家に派遣して相談できるという事業でした。
税理士、中小企業診断士、6次産業、輸出、社会労務管理士など様々な分野があったと思います。
そこで社労士さんをお願いして労務に関する相談をさせていただくことにしました。

社労士との打ち合わせ

それから数日して社労士さんとの打ち合わせをします。
事故が起きた時の対応や、労務に関して勘でやってしまっていることなどありのままを相談します。
社労士さんからは、雇用保険、労災保険、就業規則を作ること、それに沿った内容で労働条件通知書、雇用契約書を作ることなどを進められました。
金額は就業規則20万、もろもろ手続き20万くらいだったと思います。
必要なこととは思いつつもちょっと高いかなと思ったし、税理士もお願いするタイミングだったのでいやーお金かかるなーと思いましたが、折角なのでお願いすることにしました。
これが6年目。6年目の後半には全ての書類を整えました。

「前の職場ではやってなかった」

それから求人の問い合わせがある時には、有給休暇のこと、健康診断受けられること、年間の労働時間数、など説明をしたのちに雇用契約に進むのですが、「前の職場ではこんなことやっていなかったので」と言われることが何回かありました。
農業界ではまだまだ少数派です。
今いるスタッフもやっぱりちゃんとしているなという安心感がある。と話してくれました。
思えばそれまでは怪我した時にどこまで保障されて、どの程度お金が支払われるのか。失業保険や育児休暇にお金は支払われるのかなど自分でもわかっていませんでした。年間の労働時間数も把握できておらず、有給もありませんでした。
労務に関する部分を整えてから若いスタッフが徐々に増えました。
今の日本人主力メンバーは、19才、23才、23才、26才、40代です。
昨年退職した2名も20代でした。
労務環境を整えたからだけではないですが、1つの要因であることは間違いないと感じています。

就業規則は事業主と従業員との約束

就業規則は事業主とスタッフとの約束です。
法律に関する部分、年間の労働時間数、残業の有無、有給休暇の日数、様々な手当など法律の部分はもちろん明記してある事は守る必要があります。
私はサラリーマン時代に有給休暇を使ったことがないので、書いてあるけど使わないものくらいに軽く考えていましたが、みなさん普通に使っています。。。消化率は80%くらいです。
とか、書いてあるとうやむやにできないので、若干のプレッシャーのようなものは最初感じました。
しかし、約束は双方に対してです。
私も向上心を持って働くこと、セクハラをしない、挨拶をすること、物を壊さないこと、無くしたら伝えること、個人賠償に関することなどを表記してあり要求することができます。
「俺は雇用した際にした約束は守っているぞ。お前はどうなの?」
と言えるのです。面接の時は頑張ります!と言っていたがちゃんと向上心持ってやっているか?と言えます。
車をぶつけた人に対して、始末書を書いてもらった上で次一定の期間内にまたぶつけたら今度は法律の範囲内で自己負担お願いします。といえます。
こちらが約束を守るから、相手側がやっていないことに対して要求できます。
よくSNS上で労働側の権利を主張している人がいますが、その人は雇用側が要求した約束は守っているのでしょうか?疑問です。

事業に集中できる

それから元々容量の少ない自分の頭をフルに事業を前に進めることに使えるようになりました。
その頃から売上は2.5倍になっています。新規事業として宿も開業できました。
以前の私は16GBのスマホなのに半分余計な写真で容量を使っているようなものでした。
当時、相談させていただいた社労士さんは今は顧問として事業を支えてくれています。良い人が増えたみたいなのも含めて農場の状態は良くなりました。
労務環境整えようと考えている農家の皆さん!絶対やった方が良いです。おすすめです!

いいなと思ったら応援しよう!