「学習は負けている」から考えるSHEのエデュテインメント戦略
SHEで夢を叶えた人がいる。
人生を変えた人がいる。
その一方で、
挫折し、途中で学習を終えた人もいる。
両者の差は、一体なんだろう。
目標の解像度が高かったから?学習のモチベーションを継続できたから?もちろん、それらも一つの要因だろうし、他にも様々な理由が挙げられるだろう。
では、どうすれば両者の差を埋めることができるのだろう。
はじめて学習する分野であっても、SHEで学べば、誰もが楽しく継続できる世界。自然とスキルが身につき、それを活かして自分らしい生き方が選択できる世界。「学ぶ」と「働く」が循環するキャリアプラットフォーム。そんな世界を本気で作りたいと思っている。
上記の記事のように、SHEを通してそれぞれの理想の生き方を実現できた方もいるが、まだまだ足りない。そして、それを埋めるために越えなければいけない壁の一つが、私たちのサービスのコアである、学習体験だ。
SHEの学習体験の特徴
SHEの学習体験の軸は、動画視聴である。加えて、コースによっては、課題や試験が用意されている。例えば、主要コースの一つである「webデザインコース」では、実際に手を動かす練習問題や実技試験、疑問解消のためにTA(ティーチングアシスタント)と呼ばれる講師に直接質問できる場が用意されており、「座学」「実技」「疑問解消」の3つの面からスキル習得を目指すことができる。ここまでは、他のスクールと比べても大きな変わりはないだろう。
SHEの学習体験のユニークさは、「受講生と同世代の講師陣」と「学べるコンテンツの幅の広さ」にある。講師は、第一線で活躍しているミレニアル世代のロールモデルであり、それゆえにリアリティを持って内容をインプットすることができる。コンテンツは、デザインに留まらずマーケティングやライティング、ブランディングや広報・PRなど、32のコース(※)から興味ある分野の知識を得ることができる。定期的に開催されるイベントを加えると、時間の使い方やパートナーシップ、体やバイオリズムに関するお話しなど、スキル習得に限らない、ライフ全般に関する幅広い知識を得ることができる。
(※)2022年10月時点のコース数
では、なぜ一つのジャンルに特化せずに幅広いラインナップを展開しているのか。一言で言えば、可能性を広げるためだ。
例えば、webデザインとマーケティング、webデザインとデータ分析、ブランディングとライティングのように、複数のスキルが掛け合わさることで出来ることの幅や視点が広がり、結果としてキャリアも広がる可能性が高くなる。そのため、利用者のニーズに加えて、可能性の広がりも考慮しながら様々なコースを展開してきた。最近では、データ分析やプログラミング入門など、市場の需要が高いスキルを学べるコースも新たにスタートしている。
学習は負けている
SHElikesでは、退会理由の約50%が「時間が取れない」であり、大きな課題の一つだ。学習をはじめると時間確保や疑問解消、モチベーション維持など、いくつかの挫折ポイントで学習が停滞することがあり、それが離脱につながる。
転職や仕事の繁忙期、ライフスタイルの変化など、人によって時間が取れない理由はあれど、多くの場合「(学習する意思はあるが)時間が取れなくなった」というよりも「(学習する意思がなくなり)学習を選択しなくなった」ということが退会者からのヒアリングから分かってきた。私たちはこうした退会理由を3つに分解して考えている。
つまるところ、学習は負けてしまったのだ。
学習することを選んでもらうためには、学習時間を確保してもらうための手助けやモチベーション維持のための応援ももちろん大切だ。しかし、選択されなくなってしまう以上、それよりも前に学習のあり方自体を見直す必要はないだろうか。もしも学習のあり方を根本的に変えることができたら、手助けや応援を内包できる可能性もあるはずだ。だから、私たちもコースを作るだけではなく、学習体験のあり方そのものについても考え、トライを続けてきた。
学習体験をエンターテインメントに
現時点での結論から言えば、必要なことの一つは「エデュテインメント化」だと考えている。
「エデュテインメント」とは、教育(Education)と娯楽(Entertainment)の造語だ。元々は、娯楽でありながら、娯楽と関係ない分野の教育として機能するようなエンターテインメントの形式を示す言葉であるが、ここでは「わくわくして、楽しくて、夢中になっていたら、新しいスキルが身についていた体験」と定義づけたい。
「座学」と「実技」だけでなく、わくわくする楽しい体験の創出によって、これまでの学習体験とは異なる価値を加え、学習を“選択したくなる”理由を生み出したいと思っている。
実際に今年から、コース自体の演出方法の変更やコーホート型学習のテスト導入など、いくつかの検証をはじめている。
2022年7月にスタートした起業コースでは、講師から一方的に情報を伝えるだけではなく、学習者を見立てた登場人物との会話による擬似体験の創出やより身近で具体的な課題による応用のしやすい体験作りなどを行っている。このコースは、受講者とのディスカッションを経て制作されており、はじめて共創を通して生まれたものだ。結果、直近で最も初速視聴が多いコースとなった。
コーホート型学習も検証内容のひとつだ。コーホート型学習とは、他者と一緒に教育プログラムを進める共同学習のこと。期間や人数を限定し、一つの課題やプロジェクト、ワークショップなどを通して学習を進める仕組みだ。学習者同士、学習者と講師やメンターとのコミュニケーションが生まれやすいため、コースの完了率が高く、学習内容が身につきやすいとも言われている。
コーホート型学習の検証の一つは、 #SHE大人の夏期講習 だ。#SHE大人の夏期講習では、WEBデザインコースをみんなで同時に受講するLIVE授業を実施。実際にコースを教えている講師と一緒に動画視聴し、講師自身の解説や質疑応答を挟みながら学習を深める体験を用意した。結果、関連するコースの課題提出は通常の数倍となった。
もう一つは、バディによる検証だ。どんなにサボりがちな人でも、一緒に進める仲間がいればデザイン実技試験提出まで辿り着ける人が増えるのではないかという仮説の元に検証した。結果、参加者の学習継続の意向度が上昇し、スキル定着への寄与が見られた。
コース自体の演出方法の変更やコーホート型学習以外にもエデュテイメント化に向けて、わくわくする体験をスピーディに仮説検証し、学習体験への導入を進めていく予定だ。
例えば、行動経済学と学習体験
エデュテインメント化に向けた取り組みは、eラーニング特有の課題へ向き合うことでもある。先に挙げた挫折ポイントは、自己管理が必要なeラーニング特有の課題であるとも言える。
自らの足で歩かなければ目的地にたどり着けないという意味で、ここでは「登山型学習」と名付ける。学校や塾であれば、学習カリキュラムや日時が決められていて、一緒に学習する仲間もいる。だからスキル習得の度合いは異なれど、エスカレーターに乗るかのごとく、学習を進めていくことが出来る。
こうしたeラーニング特有の課題は、個人の思考や習慣が大きな影響をもつため行動経済学の理論に基づくアプローチで解決を図っていきたいと考えている。
例えば、「登山型学習」で大切なことの一つは「決意表明」だ。行動経済学では、事前の決意表明が長期目標の達成に効果的であることが証明されている。さらに自分との約束よりも他者からの強制の方が効果的である。これを応用すると、学習する日を約束する、課題を出す日を宣言する、コーチングを受ける日を決める、といった目標達成に効果的な施策を検討することもできるだろう。
大事なことは、学習者以外の誰かとの約束やそれに代わる仕組みを用意して「〇〇までに〇〇する」という決意表明を行動に落とし込むことだ。今後、こうした検証も適宜進めていく予定だ。
学習にもイノベーションを
いまの時代は、一人では受け止めることが出来ないほどにコンテンツや情報に溢れ、人生の空白は一瞬にして埋めることが出来る。だからこそ、学習者が別の何かで空白を埋めるのではなく、学ぶことを選択してもらえるように私たちも体験に磨きを掛け続けなければならない。
「エデュテインメント」や「行動経済学」は、今の学習体験の負を直接解消するものではないかもしれないが学習のあり方そのものをより良い形にしてくれる可能性を秘めていると思う。これまでの常識に囚われずに学習体験にイノベーションを起こしたい。そのためには、大胆な仮説立案と複数の仮説検証の中から輝く粒を見つけ、それをスピーディにコースコンテンツやプロダクトに反映させていく必要がある。
ご紹介した内容はほんの一部だが、新たな体験を考え、設計し、実際の効果を直接感じられるこの仕事は、手前味噌だがとても面白いと思う。(実際に考え実行していくことが楽しい。)Visionはあるが、特定の道筋を用意しているわけではない。だからこそ、考える余白があり、これまでの経験を元に柔軟にトライができるはずだ。
人の行動の本質や学習体験について考えてきた方、学習そのものにWOWな体験を生み出したい方は間違いなく面白いタイミングだと思う。興味がある方は是非、一度応募概要をのぞいて見てほしい。
11月には、Mirrativさん、LayerXさん、SHEの3社でプロダクトに関するイベントも開催します。モデレータとして、プロダクト開発におけるあるあるや課題など、あまり表で語られないようなこと聞いていきたいと思っているので、ぜひご参加ください。イベントのご予約は【こちら】から。
代表の福田のnoteもぜひ!SHEへのイメージが変わるはずです。
そして11月20日(日)、東京日本橋でSHE初となる、日本最大級の女性リーダーサミット「INNOVATIVE WOMEN’S SUMMIT」を開催します。基調講演には小嶋陽菜さんや弘中綾香さんにご登壇していただきます!この日しか味わえない豪華ゲストとの濃密な時間をお楽しみください。
またこのサミットを共創する協賛パートナーを募集しているほか、法人チケットプランもございますのでご興味ある方はぜひ下記フォームからお問い合わせください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?