IPEF(アイペフ)
アメリカのバイデン大統領が提唱している「インド・太平洋経済枠組み(Indo-Pacific Economic Framework)」のことです。
今のアジア・太平洋には2つの「経済連携協定」(関税を撤廃・軽減したり、貿易以外の経済交流を国内並みに深めるための協定)があります。
1つはTPP(環太平洋経済パートナーシップ協定)です。これはもともとアメリカを中心とした経済連携協定として構築が目指されてきましたが、トランプ前アメリカ大統領が離脱したため、アメリカを除いた日本やカナダ・オーストラリアなど11カ国で構成されています。
もう1つはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)です。これはまだ聞き慣れない人も多いかも知れませんが、日中韓などを中心としたもので、今年(2022年)1月1日に発効しました。しかし、直前でインドが署名しないことになり、事実上離脱しました。
もともとは、アメリカ中心のTPP、中国中心のRCEPが構想されていました。日本やオーストラリアなど、両方への加入を目指した国もありました。
しかし、アメリカとインドの、TPP・RCEP離脱により、現在はこのような形になっています。アメリカはアジア・太平洋の経済枠組みから抜けてしまっていることになります。
アメリカのバイデン政権は、現状にIPEFを加えることにより、アメリカを中心とした経済枠組みを再び構築しようとしているわけです。
この枠組みで最も重視されることは「関税削減をしない」ということです。しないことが重視、というのは奇妙な気もしますが、アメリカ本国で、関税削減に拒否感を抱く人が強いからです。関税削減によるアジア諸国からの低価格商品の輸入増加によりアメリカの雇用が失われる、という不安を抱く人が多いからです。
そのため、IPEFにおいて目指されることは、デジタル貿易のルールづくりや、国際的な供給網(サプライ・チェーン)の強化などとされています。
ただそのこと以上に、安全保障の面からも、アジア・太平洋の経済が完全に中国中心にならないようにしたい、何とかしてアメリカの強い影響力を残したい、という思惑が、この構想には見え隠れします。そのため、IPEF構想から中国は除外されています。IPEFは「アメリカと中国の経済的覇権争いの産物」と考えることもできるでしょう。
ともかく、壮大なスケールの割には「メリットがよく分からない」IPEF。参加国がどれだけ集まるかが、まずは注目点となるでしょう。