渡辺淳一という小説家、ほんとうに面白い
この作家は、もういない。
あまりフィクションを読まなかった私。それでも、高校生の頃は、たくさん、他の人より読んだ感慨はある。
この年齢(69歳)になって、感心している小説家の一人。
たいていの小説家は、読んでいる。ほとんど男性作家だけど。女性と葉、視点や観点が違うので、あまり読みたくもなし、興味もない。
だからといって、当初、官能小説家と思っていた渡辺淳一(敬称略)の小説を愛読!するまでに至ってしまった。
全集の表題で、『うたかた』
これが始まり。
昔、映画『失楽園』、新聞小説でも読んだのか、特に、黒木瞳が主演で好きだったのか、その程度のファン・読者で、特に、この作家が好きという訳ではなかった。
この『うたかた』から病みつきになった。
フィクション、個人的には、物語、いわば暇潰しの作り話と思って軽く考えていた。それ以上のなんの根拠もない。
そのうえ、男女の性的な愛欲がらみ、誰しも好きなテーマである。
それを売りにしているのかと、そうも思った。
それ自体の表現なども技法的に素晴らしいものはある。
それやこれやで、角川書店発行の古い全集、すでに20巻をスタート、
1巻から再度始めて、いまや第6巻となってしまった。このままずっと最後まで行くって感じ。
映画の主演男優 役所広司がすごい猛吹雪のなかのシーン、黒木瞳との最後の場面、いまとはまた違った印象がある。
そういった場面が、映画以前に渡辺淳一の作品には、素晴らしく表現されている。
また社会的小説の半面もある。心臓移植や娼婦をテーマとした、これまた、素晴らしいとかいいようのない、淡々と、あるいは医師としての見方、その他なんとも言い難い様々な場面が現れる。
ほとんどが作者渡辺の育ち、また過ごした北海道を舞台にし、かつ自らの経験かと思われるような題材を小説にしている。
『阿寒に果つ』も若くして自死した天才画家ともいうべき純子、自らを、その同級生として初恋とも思われる女性として描写している。
誰しも初恋はある。まだ女性を女として考えも見もしない年ごろ、気に入った好きな女性、一生の女性観となる。
何らかのきっかけで結婚して、夫婦となり、子をなし、家庭として維持して、永く暮らす女性、妻とは、また違った印象を持つものである。
それが男の女性観であろう。
官能小説家でもいい、男には、それが必要なのだ。
初恋の女性、愛欲の女性その他いろいろな女性、小説に限らず、社会生活でも、その他あらゆるところで、男と女、基本である。
当分、渡辺淳一を読んでみたい。