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読み出のある本『甘粕正彦 乱心の曠野』読書感想文

 いい本はたくさんある。今日読み終えた本、これもそのひとつ、
関東大震災発生の混乱時、憲兵隊甘粕大尉により無政府主義者大杉栄と妻子が虐殺された事件について、事件や裁判の経過、受刑そして仮出獄の状況、出所後の甘粕(敬称略)のその後を辿った書籍である。
 当時のエリートである陸軍士官学校、訓練で落馬、負傷した結果、陸軍の軍人としては昇進に限度が出たことから、憲兵へと活路を変えた。
 これが甘粕の人生を大きく変えた。
 人生、偶然によって、幸不幸、昇進に大きく影響が出る。何事につけて、運も実力のうち、出世や昇進、それは部外者や道を外れた者、あるいはやる気のない者、なくなった者が思うこと。当事者は、そうではない。
 事件の責任や影響をすべて独りが被り、裁判で懲役10年の判決を受けた。しかし、いまでいう受刑態度その他などで2年で仮釈放となっている。
いまそれはありだろうか、司法制度は戦前でも戦後でも、あまり変わらない。普通なら3人殺したら、たぶん死刑だろう。
 上からの命令があったのか、現場が勝手にやったのか、それも闇の中。
 いまでも、安部元総理を襲撃し、暗殺した山上哲也は、軽くても懲役15年はいくらしい。それで済むか、いくら進歩系文化人やマスコミが騒いだところで、日本の司法制度が、「無罪」なんてことは絶対ない、死刑もないだろう。判決確定には、10年以上はかかる。山上が刑務所出るころ、80歳ぐらいじゃなないか、重信房子と同じパターン。
 あれやこれやで大騒ぎの挙句で。
 もう安部さんは帰って来ない、これは事実。
 人殺しに人殺しとしての刑罰を受けなければならない。
 甘粕元憲兵大尉、出所後はパリへ行ったり、いろいろ苦労もした結果、満州映画に理事長で入り、経営を立て直したとのこと。
 まぁいろいろあったんだろう。
 そして敗戦、迫るソ連軍、青酸カリの服毒自殺、逃げようと思えば逃げられる。民間人なのだ、軍人でも状況を察して日本へ帰っている。
 大震災で混乱したなかで行われた虐殺、すべての責任を被って一生を送った甘粕元大尉、みんなたいへんな時代だったんだ。
 私も歴史好きではあるが、この件、体制側の憲兵が震災で左翼の中心人物を虐殺したとしか思わなかった。その裏、旧軍国主義体制下での思想犯取り締まり、いまとは全然、違う。実際は、知らんけど。
 私自身の大学入学の頃、大学構内では警察等は表面上は不介入、学生セクト各派で暴行が公然となされていた。一般学生は、知らん顔、無視、私もその一人だ。なにができよう。暴力団以下の連中だった、左派系の学生集団。
 そういう厳しい政治状況、いまの岸田総理の支持率どうのこうのなんて、まるきし平和そのものとは異なる。いまのガザでの一般市民とハマスの関係かもしれない。ハマスは武器を持った集団、一般市民は意思表示もなにもできないだろう。ひとりの力、全然、無力。大きな流れに流される。
 そんな時に、この甘粕大尉の本を読んだ。すべてを被り、刑務所で罪を償った。事実は明らかにされないまま時は過ぎ、短期間で釈放された。
 それなりの支援はあった。
 敗戦で自死した。
 ある意味で昔の侍のような生き方、いまはそのような人はいるのだろうか。あの財務省佐川局長も、一人ですべてを被った、上への忖度か。
いいか悪いか知らない。
 組織は怖い、どこでも、そうなんだろう。しかし社会で生きて行かないと、生活していけない、落伍者、落ちこぼれになる。
 ビッグモータースやジャニーズは、トップの犯罪が明らかにされた。
それでその組織は改善されるのか、されても悪は永遠に続く。人間の悲しさを感じた。
 いい本であった。人間の闇、みんなおおかれすくなかれ経験していることだ。いろいろ物を想った。
 

白い菊は哀悼の雰囲気がある。

 人間は哀しい。戦争はなくならない、それも哀しい、なんでだろう。戦争だけじゃない、人間、いいことより悪いことが多い。いい顔の裏に悪い、怖い顔がある。

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