渡辺淳一『無影燈』読後感
渡辺淳一全集第3巻、この著者、この全集シリーズで、4冊目。そのかなのメインの作品。読み終えた。面白かった。小説である、まず面白いのが一番不可欠な要素、読みごたえがあった。
東京の大き目の個人病院で勤務する外科医、30代なかば。腕がよく、少し前まで大学病院で将来を嘱望されていた感じの医師って感じ。
若い20代の看護師に、イケメンでクール、医療面の技術、経験、判断などから尊敬と男としての人気が高い。院長や関係者からも評判がいい、そんな雰囲気。
終末期の様々な病態の患者、癌であれ、血液関係の病気であれ、もはや治療の甲斐なし、というか回復の見込みがない患者への治療や措置、対し方、著者が医師でなければ、文書や経験での研究などでは、知り得ないものが、巧みに上手に、素人にもわかりやすく伝わってくる、すばらしい表現力だ。
いろいろな女性との出会い、病院関係者、飲食店、あるいはタレントなど登場し、女性として扱われる。私は、そっちの方は詳しくないので、小説での記載は、そのまま受け取るしかない。医師でイケメンとはいえ、羨ましい限りと思う。私の属した社会でも、似たようなことをしている人がいる、それは例外的な存在、ある意味危ない行動、普通は、そこまで、できない、ようせん。
渡辺淳一、ほんの数か月までは、官能小説家、エロ作家としか見ていないこともあった。小説家としてのデビューからすると、ある意味、社会派の作家が、どうして晩年には、愛欲中心になったのか疑念さえ持った。
日本人作家に、あまり興味がなかったこともあった。
まだ一年足らずだが、平野啓一郎から百田尚樹、いろいろ現代作家を読んでいる。いまのところ、渡辺淳一に、まだ全然、飽きない。
当分、渡辺淳一に凝っていくだろう。この角川文庫の古い渡辺淳一全集、再保に読んだのは、第20巻、それから第1巻、2巻、3巻と読み続けている。良い小説ばかりだった。
図書館から借出した本である。ぼろぼろ、それだけ多くの人に読まれている。それは納得できる。
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