フィルムスクールに留学すること(2)
フィルムスクールに留学することに興味を持っている人ってどれくらいいるのでしょうか。大学院レベルで高い学費を払ってまで、アメリカに映画の勉強をしに行く人というのは、毎年各大学に1〜2人ほどでしょうか。学費と卒業までに費やす時間を考えると、それが果たして割にあうものなのかは、その人次第だと思いますが、映像業界での経験がなかった僕に取っては、そういう対価を払ってでも行く価値があった、というのは以前の投稿でも書いた通りです。
僕は大学院に行く前は全く違う業界の仕事をしていたのですが、仕事を辞める前に一度フィルムスクールに出願し、受けた3校全て不合格だったので、改めて1年後に受け直し、無事に合格になりました。今考えると、落ちた後にもう一度受け直したからといって受かる保証なんてどこにもなかったのですが、一度落ちたからといって諦めなくてよかったなと思います。
大学院レベルのフィルムスクールを受けるために必要なこと、それはズバリ粘り強さです!!
いや、そんなことは全然ないのですが、実際何が必要かというのを、僕の経験から書いてみたいと思いますが、僕が受験したのは2014年なので、もうかれこれ5年前ということも、一応ご承知おき下さい。
僕が受験したのはUCLA, USC, NYU, Columbia, Chapman, London Film Schoolの6校。そして、合格したのはUCLA, Columbia, Chapman, LFSの4校で、NYUとUSCは書類すら通りませんでした。しかもUSCに至ってはご丁寧に不合格通知を2通も送りつけて来る始末!(怒)それはともかくとして、プロデューサーのプログラムでフィルムスクールを受けるにあたって、全ての学校で必要なのは、Statement of Purpose (personal statement)、それから自分で作りたい映画の企画です。(ちなみに監督コースとか脚本家コースは、また全く違う要件が必要ですので、ご注意ください)
Statement of Purposeというのは、自分のこれまでのバックグラウンド、経験、考え方、目標などについてのエッセーで、だいたいA4で2~3ページくらいでしょうか。自分がどんなバックグラウンドで育ったのか、それが今の自分にどういった影響を与えているのか、どういった経緯で映画に興味を持ち始めたのか、フィルムスクールで何を学びたいのか、なぜその学校なのか、そしてその学校で映画を学ぶことが、自分にとってどう重要なのか、そのようなことをまとめたものです。これを書くにあたって、恐らく自己分析と目標の具体化、学校のリサーチなど、それなりの時間をかけて行なうことが必要です。というのは、よくフィルムスクールを受けたいという日本人の人たちの口からでるのは「国際共同製作で、日本のコンテンツをハリウッドに持っていきたい」という言葉なのですが、その中で自分がどういう働きをするのか、日本のコンテンツとは何なのか、そういったことをもっと細かいレベルで理解することが必要なんだと思います。
自分の作りたい映画の企画、というのは英語でいうところのtreatmentというフォーマットにまとめて書く必要があります。これは、作品のコンセプトを1~2文にまとめたlogline、ジャンル、フォーマット、それにsynopsisと呼ばれるストーリー概要を1~3ページくらいにまとめたものです。ここで見られているのは、作品の強さやユニークさはもちろんこと、キャラクター開発、marketabilityに関する基本的な姿勢、それに映画やシリーズの構成の基本(例えば3幕構成とか、そういったこと)を理解しているのかという部分が見られているのではないかと思います。
僕が最初に出願した時は、そもそも映画プロデューサーがどういった仕事なのか、あるいはハリウッドで映画・ドラマのストーリーがどのように開発されていくかなんて全く知りませんでした。しかし、一度不合格になった後、自ら短編映画をプロデュースし、ハリウッドで活躍するプロデューサーはどんな人がいて、どういった仕事をしているのかを調べることで、何となくですがいろいろな部分が見えてきました。「プロデューサーになりたいのでアメリカで勉強したいんです」といって来る人は何人もいますが、「尊敬するプロデューサーは誰?」と聞いても、すぐに名前が出てくる人は意外にいなかったりします。そういったレベルだと、フィルムスクールに受かるまでには、もっと準備が必要だと思った方が良いかもしれません。
ちなみに学校によっては、2ページくらいの脚本を出せ、とかフォーマットはなんでも良いので自分で作ったアート作品を出せ、とか言ってきますが、基本的には自分がやりたい企画(=作りたいストーリー)を複数持ってさえいれば、その辺りはなんとか対応できるのではないでしょうか。プロデューサープログラムの場合は、実際に映画を作ったことがある必要はありません。もちろん、その経験は出願にあたって、あるいは入学後に大きなプラスにはなるのですが、僕のクラスメートにも入学してから初めてセットに入った、という人もいましたし、自分で作った映画の提出を出願要件にしている学校はありませんでした。
最後に、フィルムスクールに限らず、アメリカの大学院を受験するには必ずTOEFLが必要になります。大学院レベルになると、通常iBTで100点が必要です。UC(カリフォルニア大学)システムは確か少し甘くて80点くらいなのですが、実際問題、映画を勉強する上で「最低限通じれば良い」という英語力では、授業についていくのは到底不可能なので、やはり100点は絶対に欲しいところ。人を感動させる映像を作るにあたって、まだ出来ていない映像やストーリーの魅力を言葉で伝え、人を巻き込み、さらにお金を集める、というというプロセスを行なうプロデューサーの仕事を考えると、ネイティブにとっても、いかに言葉が重要かはすぐに想像がつくかと思います。
僕のクラスは全体で11人でしたが、その内僕を含めて4人が留学生で、中でも僕が一番英語が下手だったと思います。日本ではそれなりに自信があったのですが、こてんぱんでした。それでも大学(学部)の時に1年間交換留学していたおかげで、TOEFLの目標点数にはすぐ届いたので、出願締め切りギリギリまでTOEFLを受け続けなくてはならない、という状況にはならずにすみました。ですので、フィルムスクールを真剣に考えているという方は、まずTOEFLの点数をクリアすることをお勧めします。
ということで、さらっとフィルムスクールのプロデューサープログラムに出願する際の書類について書いてみました。他にも大学時代の成績など必要だったりするのですが、まだ大学生の方はともかく、社会人になってしまうともうそれは変えられないものなので。
では。
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