コントロールを脳科学から考察してみた。 Part2
Part1では体を思い通りに動かせるようになるまでに、脳の中でどんなことが起きているのか。
また、その脳の働きを生かして、コントロールをよくするために意識することについても触れました。
今回は、前回の内容を踏まえたうえで、実際に行われている練習について脳科学的に見たときに、
効果があるのか、はたまた逆効果なのか、考えていきたいと思います。
思いつきで例を挙げていくので、投稿後も思いつき次第、追記していきたいと思っています。
◆ キャッチボール
前回の内容にもあったように、キャッチボールは意識次第で、コントロールをよくするために、いい練習にも悪い練習にもなり得ます。
コントロールをよくするためには、当然ではありますが、まずはしっかりと狙って投げることが大切です(これが意外とできていない人が多い)。
相手のグラブなら、グラブの芯というところまで、細かく「的」をイメージしましょう。
細かく狙えば狙うほど、少しでもその的から外れたときに、脳内でモデルの修正が働き、次に投げるときに備えて神経回路が修正されます。
そのためには、キャッチボールの相手がしっかりとグラブを構えて「的」を作ってあげなければなりません。
また捕球時には、捕球した位置をしっかりと投げ手に見せてあげるように止めなければいけません。
投球がどれだけ「的」から外れていたのかをはっきりとわからせてあげることで、投げ手の脳内では今の失敗を次はしないように学習します。
逆に、キャッチボールを悪い練習にし得ることはなんでしょうか?
先に書いたことと逆のことをしたらいいのです。
まずは、漠然と相手に向かって投げること。的なんてものはイメージせずに、相手が捕れるところに投げられればOK。
自分の指のかかりさえよければ、相手がどこで捕ったかは気にしない。
あとは、自分のフォームに意識が集中しているときなんかも、コントロールに関しては悪影響を与えかねません。
そういう場合は、たいていボールの行方や回転、球速よりも自分の感覚に意識が向けられていて、そのときに納得のいくフォームで投げられたとしても、バッターとの勝負になると結局フォームは逆戻り、なんてことはよくあることだと思います。
まとめると、キャッチボールで大切なことは、「的」をしっかり狙う。捕球のときにグラブを止める。これだけで、あくまでもコントロールに関しては、よくなると思います。
しかし、注意したいのは、「的」を狙うと言っても、そこに投げられたらすべてOKというわけではありませし、投げられなかったらOUTというわけでもありません。
あくまでも、しっかりと全身を使って、バッターを抑えるボールを投げるときと同じフォームで、的を狙って投げるのです。
また、的から外れたときには、次は絶対に当てるなどと意気込まずに、次も同じ意識で同じように的を狙います。
そうすることで、脳が勝手に動きを修正してくれて、だんだんと狙ったところに投げられるようになるはずです。
◆ 遠投
遠投に関しては、人によっていろいろな考え方があると思います。
特に、体を傾けて高い軌道で遠くに投げるような遠投をすることはよくない。といった意見はよく聞きます。
たしかに、距離を重視して、投げ上げるようなフォームでいくらコントロールよく投げられたとしても、マウンドの上からキャッチャーに投げおろすコントロールはつきにくいかもしれません。
なので、今回は遠投とは言っても、イチロー選手が推奨するような、低い軌道でのものを指すことにします。
こんなイメージですね。(5:05)
長い距離を投げると、当然ですが狙ったところからのズレは大きくなります。
前回から言っているように、このズレが脳にはいい影響を与えるのです。
そのため遠投は、近い距離では意外と気づけていない的からのズレを、大きくしてはっきりと捉えやすくすることができるのです。
コントロールをよくすることが目的であれば、遠投のときにもしっかりと「的」を狙いましょう。
◆ パラボリックスロー
パラボリックスローとは、筑波大学准教授、川村卓氏が推奨する練習法で、10m先のゴミ箱にボールを投げ入れるというものです。
この練習法は、バスケットボールで、
ところから、野球にもその考え方を応用したものだとのことです。
参考:(ピッチングの科学、洋泉社)
これに関しては、今回のテーマからは少し逸れたものになりますが、実際に筑波大学野球部の選手のコントロールはよくなっているそうです。
ちなみに、イップスの改善にもつながるそうで、やってみて損はなさそうです。
◆ ネットスロー
ネットスローといえば、ひとりでボールを投げる練習をするときや、ケガをしたときのリハビリなんかで使われることが多いと思います。
最大のメリットは、相手が必要ないというところです。
しかし、個人的にはネットスローはおすすめできません。
ネットスローで使われるようなネットは、ボールを後ろに逸らしてはいけないので広く大きいものだと思います。また、ボールを回収しやすくするために、袋状のネットがついています。
このことは、コントロールを悪くすることに大いに関係します。
まず、大きいこと。
これは何度も言いますが、「的」が大きいということは、「的」に当たればいいという心理を生み出して、許容範囲を広げてしまいます。脳のモデルの修正は「失敗」したと思わなければ起きないのです。狙ったところに行かなかったという「失敗」経験をすることがネットスローでは難しくなるというのが、一つ目の理由です。
つぎに、袋状のネットであること。
野球で使用するネットには大きく分けて2種類あります。
単純にボールを防ぐためのものと、ボールを回収するために袋状のネットがついているものです。
主にネットスローで使われるものは後者だと思います。
この形状によって、ボールが当たったときに、衝撃が吸収され袋の中に集まるようになっています。
ネットスローをした経験がある人はイメージできると思いますが、ボールがネットに当たると、袋の中をシュルシュルとすべるようにして1か所に集まっていきます。
これがコントロールを悪くすることに繋がるのです。
この動きは、ボールの着弾点をあいまいにして、自分の投球の結果をわかりにくくしてしまいます。
これが二つ目の理由です。
つまり、ネットスローは投球の結果があいまいになってしまうのです。
例えば、キャッチャーに対して投げていたら、外角低めに構えられたミットを狙って投げたとして、内角高めに行ってしまったら、ミットは大きく動いていまの投球は失敗だったとわかるでしょう。
しかし、ネットスローだと狙った場所に行かなかったとしても、同じようにネットに回収されるだけなのです。
そもそもネットスローで1点を狙って投げる人はほとんどいないでしょう。
しかし、フォームを固めるために一人で投げ込みたい。リハビリでゆっくりと自分のペースで投げたい。
そんな人が、自分のわがままな投球をこころよく受けてくれる相手を探すことは一苦労だと思います。
そんな悩みを解決するかもしれないヒントがありました。(3:08)
ネットスローのデメリットは「的」がないこと。
だったら「的」を作ってしまえばいいのです。
これだったら、違うことに集中していたとしても、自分の投げたボールが狙ったとこに行ったかどうかくらいはわかります。
学校にあるほとんどのネットにはこんなものはついていないと思うので、ネットスローをしたかったらガムテープで的を作っておきましょう。
◆ おわり
今のところはここらへんで終わりにしておきます。
他に思いついたらまた追記します。
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