[図解] 自動運転と企業間提携(完結編:7/7)
第7回にわたって投稿してきた「自動運転と企業間提携」ですが、人工知能、電気自動車、GPU、高精度地図、などの周辺技術と自動運転のサービス化をめぐる動きが非常に明らかになり、企業間提携には2種類存在することがわかりました。「ポジション構築型」と「エコシステム構築型」。完結編ではその説明と全体の総まとめとです!
[図解] 自動運転と企業間提携 全8回
トヨタ編
「自動車メーカー、部品メーカーは、トヨタファミリーで基盤を固め、多種多様な業界でサービス化という出口を模索する!」
まずは、日本を代表する自動車メーカーのトヨタについてまとめました。トヨタは、ビジネスの基盤である完成車の量産は部品メーカーも含めトヨタ系列でまとめつつも、GPUやネットワーク、サービス等の自社開発で網羅しきれない部分は、物流、配車、配送等の業界トップを手を組み、エコシステムを形成しようとしています。例えば、トヨタコネクティッドという会社は、マイクロソフト、セールスフォースとの合弁会社であり、他社とバランスを取りながら開発を進めています。いわゆる、バランス型ですね。
最近のニュースで、「主役はドライバー」との発言もありましたが、トヨタは無人配車、無人配送サービスに完全に舵を切るのではなく、サービスも量産ビジネスもバランスを取り成長していく意思が見えてくるような気がします。
グーグル ウェイモ編
「自動車メーカーの量産技術でコストを抑え、世界一の無人配車サービスで必ず収益を出す!」
第2回目は、グーグルの次世代技術開発プロジェクトから派生してできたウェイモの企業間提携についてまとめました。第1回目のトヨタとは対照的に、無人配車サービス一点に特化して開発及び提携を行っていることがわかりました。自動車メーカーには無人配車用車両の量産を依頼し、サービス層では、配車サービスを行う上で必要不可欠な保守、修理、保険を補うための提携であり、役割は非常に明確です。無人配車サービスを現実化させるための歯車を一つ一つ揃えているウェイモは、2018年下旬に実証実験ではなく、収益化のためのサービスを始めるとアナウンスしています。ウェイモが開発する無人配車サービスに絶対の自信を持っていることが企業間提携で明らかになりました。
エヌビディア編
「GPUとディープラーニング技術をセンシングと高性能地図開発に生かし、車載コンピューターのプラットフォーマーになる!」
第3回目では、ゲーム業界から世界を代表する自動運転開発企業への飛躍的に成長したエヌビディアの企業間提携についてまとめました。エヌビディアの提携先は、脅威の370を超え、GPUを主軸とする車載コンピューターの分野で唯一無二のポジションを確立しています。あまりにも数が多いので、企業間の戦略的提携というよりエヌビディア車載コンピューターの提供先と言った方が腑に落ちる気がしますが、自動車メーカー、部品メーカー、ネットワーク、サービス、すべての層のキープレーヤーがエヌビディアの周りに集まっているのは紛れもない事実です。このように、車載コンピューターにおいては、独占状態に近いエヌビディアは、自動運転社会の実現に非常に重要な企業であることがわかりました。
インテル モービルアイ編
「車載カメラ+高精度地図+半導体技術を主軸に、自動運転の世界市場を席巻する」
第4回目では、インテル モービルアイについてまとめました。2017年3月にインテルは1兆7,000億円でモービルアイを買収し、自動車業界への参入を宣言し、業界に衝撃を与えました。現在、インテルとモービルアイが主軸として投資しているのが、BMWグループと組んでいいる自動運転開発連合。今では、フィアット、コンチネンタル、デルファイなども参画し、独自のエコシステムを構築しています。また、サービスの層では、映画やゲームで有名なワーナーとの提携を発表し、完全自動運転車用のVR/ARエンターテイメントの作成に乗り出しています。インテル モービルアイの開発領域は、エヌビディアと同じ領域で、今後、2社間の開発競争が激化していく可能性が高いですが、インテルとモービルアイは足元の開発と将来への投資をバランスよく行い、今後の戦いに備えているような印象を受けました。
VWグループ編
「自動運転機能を量産車へ実装し、早期収益化を目指す!」
第5回目は、ドイツ自動車メーカー大手のフォルクスワーゲングループについてまとめました。ここ数年、トヨタと生産台数争いをしているフォルクスワーゲングループですが、自動運転に関しては、明らかに向いているベクトルが違うことが企業間提携を整理することで明らかになりました。フォルクスワーゲングループはアウディを中心に積極的な自社開発を行っており、また、必要技術であるシミュレーション分野のベンチャーにも投資をしたりしています。今年に入って、レベル3のトラフィックジャムパイロット機能付きのモデルを世界で初めて発表し、大きな衝撃を与えました。ここで、重要なのは世界初などの称号ではなく、あくまで、サービスとしてではなく、量産車に自動運転機能を搭載することで、早期収益化を図ろうとしていることです。このように、世界トップの完成車の生産能力を誇るフォルクスワーゲングループは手堅い戦略を見せています。世界トップだからこそかもしれませんが笑
中国編
「政府のNEV規制をきっかけに、電気自動車とその自動運転化に投資する中国市場」
第6回目では、中国市場に的を絞り、自動運転に関連するプレーヤーがどの程度いるのかをまとめました。日本では有名ではないですが、中国には200を超える自動車メーカーが存在し、上海汽車など1950年代に設立した歴史ある企業もあります。一方で、中国政府がリードする新エネルギー政策(NEV)が、市場を後押し、多くの電気自動車新興企業が次々に設立されて市場が活性化している事がわかりました。
ネットワーク層、サービス層には中国を代表するIT企業が次々と自動運転、および車両のネットワーク化の分野に参画し市場を盛り上げていることが明らかになりました。中でもバイドゥが立ち上げたアポロ計画などは、自動運転全ての情報をオープンソース化する取り組みで中国しかできない戦略を打ち出し、世界をリードしています。自動車部品メーカー層が手薄なところや、大手自動車メーカーの約70%が海外のモデル生産に依存していることなど、市場として未成熟な部分は多く見受けられますが、むしろ、それを逆手に国を挙げて電気自動車に投資をし、逆転劇を図ろうと動いていることがわかりました。実は、テスラ以降にIPOした電気自動車メーカーは、実は中国企業のみ笑。これって、ある意味将来を予兆しているように感じます。
まとめ
以上、自動運転に関して世界を代表する企業をピックアップし、企業間提携をまとめてきましたが、企業間提携には2種類あるのかなと。
1.ポジション構築型の提携戦略
エヌビディアが一番分かりやすいですが、自動運転に必要な一部の層を独占的に支配しようとする提携戦略
エヌビディア:GPU&高精度地図分野の支配化
バイドゥ:サービス化実現のためのオープンプラットフォーム
インテル モービルアイ:車載カメラと半導体分野の独占
2.エコシステム構築型の提携戦略
自動運転での収益化を図る際の、歯車をそろえるため、不足部分を補うための提携戦略
トヨタ:汎用無人サービス向けの巨大エコシステム
グーグル ウェイモ:無人配車サービス向けエコシステム
VWグループ:量産車向け自動運転機能の搭載のためのエコシステム
まあ、いたって当たり前のまとめですが、これは非常に重要な指標で、自動運転という複雑&高度な技術統合が行われる分野では、ポジション構築をし、この技術といえばこの企業!という風に立場を決めること、また、エコシステムというチームを形成し、収益化に向けた歯車をそろえるリーダーになること。それらのどちらかができた企業だけ残り、できない企業は死んでいく。それに尽きるのではないかと思います。
自動運転業界に身を置く自分ですが、技術的ブレイクスルーや社会に及ぼす影響力を日々痛感し、不完全であるがゆえにビジネスチャンスに溢れているのだと、毎日ブルブル震えています!笑
自動運転車が東京の街並みにあふれる日が楽しみです。
番外編 アップル
本題とは別に、アップルの自動運転開発の全貌を、自動運転テスト車両の登録情報やパテント、求人、投資情報よりひも解いてみたいと思います。
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