空き家を放置するとどうなる?現状と事前にできること
全国で放置された空き家が増え続け、問題となっていることを皆さんはご存知でしょうか。現在全住宅の1/7が空き家となり、右肩上がりとなっています。
問題点として取り上げられるのは、周辺地域への影響です。
例
・治安の悪化 不法侵入、不法投棄、放火による火災の危険性
・環境問題 倒壊しやすくなる、屋根や外壁が飛ぶ
・衛生状態の悪化 ごみの腐敗による悪臭、害虫の発生
・地域活力の低下 街の景観を損ね、人が寄り付かなくなる
ひょっとしたら『空き家ができてもすぐ処分するし大丈夫だろう』と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、事情を探っていくと決して他人事ではなく、私たちにとっても身近な問題が隠れています。
今回は、現在の空き家事情を把握するとともに、実際になってしまったらどうするか、事前にできることを解説していきます。
現在の空き家事情
空き家の増加は都市部に限ったことではありません。人口流出に苦しむ地方においても空き家率が高くなってきています。
なぜ増加しているのか、対策はあるのかを考えていきましょう。
はじめに、空き家問題の背景について触れます。
背景
一見、原因は単なる持ち主の管理責任とも考えられます。ところが背景には社会全体の問題が絡んでいます。
身近な事情
固定資産税を抑えられる
はじめに金銭面の理由が挙げられます。もともと住宅地は税制措置により固定資産税が優遇されており、更地の状態に比べ支払いを最大1/6までを抑えることができます。
ところが住宅のみならず、人が住まない空き家も対象となってしまうことで、放置を助長させているのです。
家を残したい親世代の意向
長く住んでいた自身の家を残したいと考える人は多いです。自身が住まなくなってからも、思い入れのある家を手放したくないのです。ですから、子世代が売却したいと主張しても後ろ向きとなってしまいます。
社会全体の問題
人口の多い団塊世代の相続が相次いでいる
空き家が増える一因として相続が挙げられます。
親は亡くなる際に自身の家を子世代に相続しますが、今の子世代は活用することが難しくなっています。なぜなら核家族化により親元を離れ、自身の家を持っていることが多いからです。
結果放置してしまう、という事態になっています。団塊世代は他の世代に比べ多いので、必然的に相続された空き家の件数も増加しています。
地域人口と買い手の減少
地域人口の減少が叫ばれて久しいですが、それに伴い中古物件を求める労働者世代も減少しています。
政府がとる対策
政府は空き家問題を受け、放置を取り締まり罰則を与える法律を制定しています。
空き家法
はじめに施行されたのが2015年空家等対策特別措置法(空家法)です。
空き家のまま放置しておくと、まず自治体の調査が入り、「特定空き家」として認定されます。空き家認定を受けた物件は税制措置が適用されず、固定資産税が更地と同額(6倍)になります。
勧告を受けたあとになお放置し続けた場合、
「10万円以下の罰金の徴収、強制措置である行政代執行」がなされます。
令和5年にも改正され、さらに措置を厳しくしています。政府としては、放置し状態が悪化する前の段階で適正管理を促そうとしているようです。
国土交通省の指針(ガイドライン)
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712338.pdf
3年以内に相続登記することを義務づけ
令和5年4月1日から相続登記が義務化され、“相続を知った日から3年以内”に手続きをしなければ10万円以下の罰金が科されるようになりました。
相続登記とは、相続で譲り受けたものに対する所有権を移す、つまり名義を変更する手続きのことです。
現金などの資産は名義がないため、登記の必要はありません。しかし不動産に関しては、所有の証明である名義がなければ手続きが滞ります。
例えば、相続で譲り受けた空き家を登記せずに売却しようとしても、名義がないため売却できない、という事態となってしまいます。
義務化される前に相続された土地も登記の対象となりますので、不動産の名義を見直しましょう。知ってから3年以内という期限がありますので、空き家を譲り受けたら忘れずに登記手続きをすませてください。
何か不明な点があればお近くの法務局や司法書士に相談しましょう。
出典: テレ東公式
相続登記の義務化と相続土地国庫帰属制度 ミライの歩き方
空き家となってしまったらどうするか
空き家の状況をご説明しましたが、私たちが同じ状況になった場合どうすればいいでしょうか。
ほとんどの方は、必要のなくなった家は売却することを考えるかと思います。家の売却は2つの方法のどちらかを選ぶ形になります。
空き家のまま or 解体して更地にする
それぞれのメリットとデメリットをまとめました。
空き家のまま売却する
メリット
解体費用がかからない
固定資産税を抑えられる
譲渡所得税(売却利益にかかる所得税)を特例により節税できる
デメリット
買い手にとって利用法が限られる
中古物件に抵抗がある人もいて買い手がつきにくい
値引きの要求が強い傾向がある
家に欠陥があれば、買い手から責任を追求される可能性
解体して更地にする
メリット
空き家と比べて買い手がつきやすい
売却するまでの期間、管理の手間がない
デメリット
固定資産税が空き家より高額になる
解体費用がかかる
決める要素
どちらを選択するかは状況によって異なりますが、判断できる要素をいくつかご紹介します。
ほとんどの住宅は築年数22年で価値が下がる
築年数の長さで住宅の価値は大きく左右されます。
住宅には災害に対しての強度である「耐用年数」が定められています。
逆に言えば耐用年数を超える年数がたつと、経年劣化で安全が保障されていないのです。売却にも影響があり、市場価格の平均は新築の20%以下まで下がってしまいます。
耐用年数の目安は、住宅の構造によって違いがあります。
木造 築22年まで
鉄筋 築47年まで
日本の住宅は約90%が木造ですので、基準となるラインは築22年を超えるかどうかと考えることができます。
以上により耐用年数を超えた住宅は、解体し更地の状態にした方が売れやすいと判断できます。
しかし、空き家のままでも全くお金にならないわけではありません。住宅は土地とセットで売ることになるからです。土地は年数が経っても価値が変わることはないので、少なくとも土地分の収入は期待できます。
査定金額を目安にする
不動産会社に査定してもらうことで、売却金額の目安を知ることができます。空き家の状態で納得のいく金額がつくのであれば、そのまま売却するのもよいでしょう。
住宅ローンがまだ残っているならば、売却収入で完済できるように、売るタイミングを図りましょう。
どこに依頼相談するか 不動産会社か自治体か
空き家の売却は不動産会社に依頼するほか、「空き家バンク」というサービスを利用することができます。
自治体が提供する「空き家バンク」のメリット・デメリット
空き家に対してはどの自治体も対策に力を入れています。自治体に相談し情報を登録することで「空き家バンク」という移住希望者とのマッチングサービスを利用することができます。
自治体の垣根を越えて全国で利用できるように、民間の会社に運営を委ねています。
ライフルホームズ 空き家バンク
https://www.homes.co.jp/akiyabank/
アットホーム 空き家バンク
https://www.akiya-athome.jp/
空き家バンク総合ホームページhttps://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000131.html
メリット
無料で利用できる
仲買業者を通さないため仲介手数料はかからない
不動産会社には断られてしまうような、市場価値の低い物件も掲載できる
空き家の中の家財をそのままにしても提供できる
自治体が運営サービスなので各種「補助金・助成金制度」が利用できる可能性がある
デメリット
不動産会社と違い、売り込みを自分でしなければならない
利用者が少ないため売れないリスクが高まる
基本的に売り手と買い手で直接交渉する必要があるため、条件が折り合わずトラブルに発展する可能性がある
空き家バンク利用の際の注意点
自治体の紹介する空き家バンクはまだそれほど浸透しておらず、利用者の少ないサービスです。また不動産会社と違い、自治体は売り込みをしてくれません。ですから物件の価値や需要の有無で、なかなか売却ができないこともあります。
自治体が関与するのは希望者とのマッチングまでです。契約の成立まで基本的に個人間の交渉となるため、途中で進捗が滞ったり、互いの要求によってはトラブルになる可能性もあります。
地域によっては仲介に宅建業者を紹介するところもありますが、自治体によりまちまちです。ご自分の地域の空き家バンクの概要を、自治体のホームページから調べたり、相談をしてみましょう。
空き家バンクのみの利用が不安であれば、不動産会社への依頼と併用することが望ましいでしょう。
↓ 不動産会社に依頼する詳しい方法・解説は別記事を参照してください。
空き家が残ってしまう前にできること
ここまで見てきた通り、空き家ができて時間が経つと対処がなかなか大変です。可能であれば、事前に対策を打っておきたいです。
具体的にしておきたい方法をいくつか述べます
相続される前にすぐ売ってしまう
一番楽な方法は、被相続人(財産を遺す側の人)の生前に空き家ができた時点で売ってしまうことです。メリットをご紹介します。
早期売却のメリット
金銭面
・経年劣化が進む前に売り、価値の低下を防ぐ
・固定資産税の支払いが短期間で済む
・相続をしないので相続税を納めずに済む
手間がかからない
・管理を必要とする期間がなくなる
・相続を挟むと時間も手間もかかるが、それらを省ける
相続し、空き家を持つこと自体が対処を複雑にしますので、できるのであればこの選択肢をとりたいです。
空き家を相続せざるを得ないのであれば、共有名義を避ける
空き家の所有者が亡くなり、相続人(相続される立場の人)が複数いる場合、遺産分割協議(遺産の取り分を決める協議)で所有者を決めることになります。この時気をつけなければいけないのは、相続人間の共有財産にしないことです。
なぜなら、共有財産は相続人全員の同意がなければ手続きをすることができないからです。
仮に、自身が空き家を売却したいとしても、他の相続人の了承を得なければ売却できません。権利関係が複雑で、大変な手間がかかります。
また、ちょっとした意向の違いで揉め事・トラブルになりかねません。
空き家を相続する際は所有者を必ず明確に定めるようにしましょう。
所有者が元気のうちに家族間で話し合うことが大切
問題を防ぐためには、親が元気なうちに話し合い、相続した後の方針を決めておくことが大切となります。
空き家の所有者
活用方法
どのように管理するか
が明確になるまで話し合っておきましょう。遺産分割や実際に空き家を処分する段階となったとき、スムーズに進められるようになります。
まとめ
近年空き家をめぐる動きが政府・自治体で活発となっています。
さらに取り締まりの強化や、空き家バンクをはじめとしたサービスが拡充されることが予想されます。
空き家ができそうな方はアンテナを張っておくことで、手続きを少しでも楽にできるようにしておきましょう。
親をはじめとした家族間での話し合いが何より大切ですので、会う機会に話す話題として頭の片隅に入れてみてはいかがでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?