ひれ酒の夜、将棋は一勝、足がつった
歩いて10分くらいのに小さな飲み屋さんがあることは知っていたが、行ったことはなかった。昨今の居酒屋さんは手をかけないで食事を作るので、それなら家でなにか作ったほうがいい。
妻が女子会(女子とはいい難いが)に予約したが一回取り消してたことがあった。行かないと申し訳ないと言うことで、娘と三人で行くことになった。
娘は短大卒業して帰ってきて4年目である。昨今の風潮に違わず、に辛い仕事について当たり前に頑張っている。帰ってきた当時、何度か一緒に飲んだことはあるが、妻と「熟年離婚を視野に入れた諍い」の最中だったのであまり楽しい思い出ではなかった。
昨日は三人で池の雪囲いをした。今日はお店に行くことになった。
いい意味で予想が違った。
親父さんは、丁寧に味を守り、伝統的なプロセスを大事にした料理を作る。何時間もかけて仕込んだ出汁で作った牡蠣鍋やここでしか味わえない「ぬか漬け」、僕が味噌汁に入れても食べようともしないくせに二人共ぺろりと平らげた白子ポン酢、とにかく驚いた。
こんな近くに「食事の価値」を信じている頑固者がいたということにとても嬉しかった。
若い頃、中野の飲み屋さんでよく飲んだものである。
フグのヒレをお店の前で乾かしている風景を見たことがある。
二廻りくらい年上のKさんに「ひれ酒」の飲み方や料理の頼み方を習った。彼は今何しているだろうか。もはや知るすべはない。
ひれ酒は安い酒を美味しくしてくれるという。ゆっくりと冷めていく間に味が変わり、中だけ(熱燗を足してもらう)を注文するとまた嬉しい。3杯飲めばもう歩けないくらいになる。この日は2回お代わりした。何とか歩いて帰ることができた。
Kさんも何処かでヒレ酒を飲んでいるであろうや。
「赤乃れん」さんというお店である。
また今度お邪魔することにした。
「良かったなと「高いところにいる誰か」が言ってくれたのであろうや。