横浜から世界へ、おはじきを弾け!日本おはじきサッカー協会会長 鴻井建三さんインタビュー
横浜から世界へ!異国情緒漂う街・黄金町の一角で、一心不乱におはじきを弾き続ける人たちがいることをご存じでしょうか?手の指でプレーするサッカーは、趣と伝統あふれるフットボールカルチャーなのです!
みなさん、こんにちは。ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン第52回を担当します、スタッフの澤野です。よろしくお願いします。
ヨコハマ・フットボール映画祭 2022の会場内ギャラリーにて、フットボールカルチャーを愛する皆さんとの交流の場、フットボールエキスポ が開催されます。ギャラリーは入場無料なので、映画鑑賞やイベント参加と併せてお楽しみください!
ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジンでは、フットボールエキスポ へ出展される方へ特別インタビューを行い、読者の皆さまへお届け致します。
今回は、日本おはじきサッカー協会の会長である鴻井建三(こうい けんぞう)さんに、おはじきサッカーとは何か?その魅力と、W杯に向けた驚きのプランについてお話を伺いました。(2022年5月14日 オンラインにて取材)
おはじきは手指のリハビリに効果あり
ーーおはじきサッカーって名称、インパクトがあって面白いですよね。
鴻井 海外での正式名称は“Sports table football”です。昔はイギリスのSubbuteo(サブティオ)という玩具メーカーが製造・販売していたので、今でもそう呼んだりします。
それをおはじきサッカーと命名したのは、私が作業療法士という手のリハビリのセラピストだったことがきっかけなんです。
もともとおはじきを手の機能を高めるリハビリに使っていまして。指でおはじきをつまむ動作って原始的な運動なんですが、指でおはじきを弾く動作はそれよりも高次な運動なんですよ。
リハビリが必要な方の中には空間認知の力が衰えているケースが多いんです。空間認知と指の動作というのは比例関係にあるんですね。リハビリによって脳の細胞を再構成するためにその目的動作、つまりおはじきをたくさん弾くことが大切なんです。
それで2006年頃、ネットの情報でおはじきの上に選手のフィギュアを乗せたサッカーゲームがヨーロッパにあることを知りまして。当時で70年ぐらいの歴史があって、1970年代から80年代にすごく流行っていたと。これをリハビリに活用できないかな?と思ったんです。
ーー当時どうやってそのゲームを手に入れたのですか?
鴻井 玩具メーカーのSubbuteoは既に倒産していました。それでさらに調べてみたらスポーツとしてW杯を開催している団体を見つけまして、そこの会長さんに教えてもらってイタリアから取り寄せました。
病気になるとリハビリへのモチベーションが下がってしまうものですが、好きなことが前向きなきっかけになることがあります。それでサッカー好きな子どもたちにどうかと思って一緒にプレーしてみたら、これは素晴らしいぞと。
とはいえ日本ではまだ広まっていなかったものですから、作業療法士の仲間を中心に協会を立ち上げることにしたんです。馴染みのあるおはじきの名前を冠して、おはじきサッカーと命名しました。
知られざるおはじきサッカーの世界
ーーおはじきサッカーは普段どちらで行われているのですか?
鴻井 私が会長を務めている日本おはじきサッカー協会は横浜の黄金町にあります。以前アーティストを支援する取組みが行われた時にオーディションを受けて合格し、黄金町の施設を拠点にして活動を始めるようになりました。
W杯を開催しているFISTF(フィステフェ)という連盟がありまして、私たちはFISTFの大会を年6回、公式戦として国内で開催しています。W杯に日本が出場するには、アジアツアーやヨーロッパツアーにも参加して世界ランキングに入ることが必要です。
ヨーロッパにはチャンピオンズリーグとその下のヨーロッパリーグがあり、さらに各国にクラブのリーグがあって普段は団体戦を行っています。日本でも今は全国に13のクラブがあります。主に神奈川県が多いですね。
都内ですと足立区の地域学習センターにW杯の公式戦で使用するテーブルが置いてあります。おはじきサッカーの指導者資格があるんですが、各施設2名ぐらいずつ指導者がいるんですよ。
ーー私たちが初めておはじきサッカーをしたくなった時はどうしたらよいですか?
鴻井 黄金町の協会で初心者向けの講習会を開催しているので、そこで体験していただけます。もちろんフットボールエキスポでも体験できますよ。会場ではイタリアから輸入した家庭用の入門セットを販売する予定でいます。お値段は8千円くらいかな。
入門セットはW杯で使用するものと比べると、クオリティは決して高くはないです。でもご家庭でプレーする分にはスピード感のバランスが良いのでおすすめですね。
本格的にスキルを高めていくなら、プロ仕様のスポーツタイプの方が面白いです。大体2万円ぐらいします。フィギュアも海外のクラブのユニフォームの色が再現性高く塗られています。ヨーロッパのサポーターはフィギュアを収集して、仲間同士でプレーをするっていうのが一つの文化としてあるんですね。
ーーおはじきサッカーのプレーは初心者や子どもには結構難しい?
鴻井 本物のサッカーと同じでミスのスポーツです。プレーのコントロールも不確実ですし、連携プレーも不確実なものが組み合わさっていくので。指使いのスキルも求められますし、戦術をサッカーと同じく瞬間的に判断していかないといけないんですね。
おはじきサッカーはテーブルの真ん中に手が届かないとプレーが難しいので、7歳くらいから始める子が多いかな。そのくらいの年ですと、人差し指だけ指を弾く分離運動の動作がうまくできない子もまだ多いんです。でもプレーしていくうちに器用になってきます。
ごくまれに小学1年生ぐらいで、指使いがすごい綺麗な子がいるんですよ。そうするとスカウトするんですけど(笑)それで今の日本チャンピオンになった19歳の子がいます。本当に速いし上手いし目が良いし、相手の崩し方を見ても非常に頭が良いです。ずっと真摯にトレーニングを続けていた成果ですね。
次世代のW杯出場選手のスカウトプラン!?
ーーW杯の試合はどのような方式で行われるのでしょうか?
鴻井 W杯には一対一で戦う個人戦と、テーブルを四つ同時に並べて試合を行う団体戦があります。国の名誉を背負って戦うのは団体戦です。もちろん個人で勝つことも栄誉あることですが。
W杯には私もう8大会ぐらい出場してますけど、まだ1回も勝ててないんです。それくらい世界は強くて、全く歯が立たないです。
ーー世界との差はどのあたりにあると感じてらっしゃいますか?
鴻井 やっぱり圧倒的に選手層が違うんですよね。ヨーロッパって町ごとにクラブがあるんです。小さい時からの育成のプログラムなんかもしっかりしています。私たちが1年かかって経験するようなことをかなり早い段階で経験できてしまう。その差は大きいですね。
それでも、W杯に参加できるのは素晴らしいことです。2018年のジブラルタルで開催されたW杯は33カ国約400名の選手が集まりました。運営も素晴らしかったですし、日本を代表して出場する体験を味わえるのは、本物のサッカーのW杯に匹敵する感動があると思いますよ。
2020年がローマ大会の予定だったんですけど、それが2年延期になってようやく今年の9月17日から3日間開催されます。Youtubeで中継があると思いますので、ぜひご覧いただきたいです。
ーー最後にフットボールエキスポにお越しになる皆さまへ一言お願いします。
鴻井 皆さんにもおはじきサッカーを体験していただいて、才能を見出したらスカウトしたいと考えています。スカウトのプログラムがありまして。満点だったら賞品を出すテストがあるんですけど、それを実施しようかなと思っています。
映画が始まる前はいらっしゃる方も多いので、回転を早くして多くの方に体験してもらって。次の映画まで時間があって長めに滞在していただける方は、自由におはじきを弾いていただこうかなと。ぜひプレーしにお立ち寄りください!
「ヨコハマ・フットボール映画祭 2022」は6/4(土)-5(日)にかなっくホール(東神奈川)、6/6(月)-10(金)シネマ・ジャック&ベティにて開催します。
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