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#32 遺影に写るあなた

遺影に写るあなた。
目を見つめてみる。

まばたきをしそうなほど
リアルに残されている顔。

あなたの輪郭に沿って
触れられていたときを思う。

今はもう、輪郭とかは無く。

1枚の写真へとなったあなた。
あなたの持つ温度を忘れそうになる。

遺影がひんやりと冷たく。
まるで私の今の心のよう。

置いてゆかれた悲しみより、
先にゆかせた私が悪いのだと。

唇に触れる。
頬に触れる。
額に触れる。

どこに触れようとも、
感触は同じなわけで。

目の前に写されているのに。
もう触れることも出会うこともない人。

笑っているあなたが記憶として蘇る。
手を伸ばす、一生懸命。

届くことなく、届くことなく。

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