ジュゼッペ・シノーポリの思い出
今月演奏される「エレクトラ」に関連する動画を漁っていたら、ジュゼッペ・シノーポリ指揮の来日公演の映像が出てきた。
調べてみたら、1995年にドレスデン国立歌劇場との来日でサントリーホールでの演奏会形式上演の模様だった。
私は当時26歳、この公演を観にいったわけでもなく、リヒャルト・シュトラウスはその前年に初めて「サロメ」に触れた時で、まだ熱をあげているわけでもなかった。
シノーポリはご存知のように、2001年4月20日ベルリンドイツオペラで「アイーダ」を指揮中、第3幕で心筋梗塞で倒れ急逝した。若干54歳という若さだ。自分の歳と近いことを思うと戦慄する。
そんなシノーポリを生で観たことが一度だけある。1987年12月20日にワールドフィルで行った両国国技館での公演である。ワールド・フィルハーモニック・オーケストラというのは、常設のオーケストラではなく、ユニセフのために全世界から集められた演奏者によって構成されたオケ。シノーポリ以外でもジュリーニやマゼールと共に演奏していたようだ。
当時私は18歳の高校三年生、おそらく親に連れられて行ったのだろう、オードリー・ヘップバーンが来るというのが親の興奮材料だったよう。私はオードリーがどんな凄い人なのかも何も知らずに国技館の座席に座っていた。
彼女のスピーチに続いて、シノーポリ/ワールドフィルで演奏されたのは
「シチリア島の夕べの祈り」序曲
だった。この演奏に関しては鮮烈に覚えている。冒頭の「タカターン」が国技館の残響に乗っかって拡がっていくのが印象的だったし、「しーーどしどしそみ」に入ってからのシノーポリの激しい指揮ぶりも脳裏に残っている。
ダフニスとクロエ、マーラー巨人も演奏されたようだが、あまり記憶にない。
シノーポリ、いま生きていれば76歳、世界の大巨匠であったはずなのに、あらためて惜しまれる。