これは現実の話・僕がバイトをやめるまで②
第1章 そうだ、京都に行こう(住んどる)
ツイッターでフォローしてくださってる方は僕が、ちょっと前から旅に出たいのなんのと呟いているのにお気づきだったかもしれません。
子供の頃
『夏休みと言えば登山さ。歩くんだ。ともかく歩くんだ。もう家から歩き始めるんだ。軽くは六甲・強めに立山・八ヶ岳。坂道が嫌なら鯖街道縦断若しくは琵琶湖一周だ! これが夏休みの正しい過ごし方だよ!』
と父に叩き込まれた僕です。
旅、徒歩によるそれに愛着が有ったのです。野営の経験はそんなにありませんでしたが5月に風邪ひくこともないと思ったし、お金もないなりにゼロではないし。
いや、正直に申し上げますと、旅に出るとか言い出した時点でそれは……
① 取りあえず無目的に歩き続ける。
② お金に余裕があれば食事・宿泊もする(今、民宿は値崩れしてると聞いてたし)
③ お金が無くなれば歩けなくなるまで歩けばいいさ
④ 歩けなくなれば倒れればいさ。
⑤ そう、皮や肉も朽ち果て、骨に成るまでな!
と言うプランニングだったんですね。
スマホは捨て、借りてる家とか仕事のことは一切無視して(親に丸投げ)自分自身のことも含めて一切合切捨ててしまいたかったのです。
勿論こりゃどうかしてらあ。仕事と不眠のストレスで行かれてるだけだなぁと思ってました。マサトもう37だから。ことしで。
でも働き続けた結果プッツン脳に来てノックアウト(これも後に笑いごとでないことが明らかに)か、職場で大暴れして破壊の限りを尽くすの二択かしかないのはそれはそれでヤバイ。絶対二択しかないことないのに、無い気がしてるのがおかしい。
一番スマートなのは職場にオイラ辞めますと言って一ヶ月後に辞めるのが人として、40近い大人として正しい選択なんだけど、パートの人達にたいしてそうせいも
「てやんでぇ。はっきり『辞めろ!無能!バカ!』とか言ってくるくせに人の話を聞きやしねえ連中だ。しかもレイシストが大半とくらぁ。かける礼儀はありゃしねぇぜ!」
と江戸っ子口調で思ってたんですね。
さて、こういうとき一人で考えててもろくなことにならない。誰かに相談しよう。
誰に相談しようか、一番気易くて、しかも大人と呼べる人が良いな、と思った僕は、もうじき子供が生まれてパパになると言う双子の兄貴に、仕事とスマホを捨てて旅に出たいと相談と言うか、ラインを通じてはきすてたんでさぁ。
するてぇと、兄貴の返事ってのがですね。勿論やめろバカからはじまりまして
『生まれてくる子供に』
『オジサンはどこかに行ってしまったんだよ』
『と言わせるつもりか』
と来たもんだ。
想像してみよう。
兄が幼い娘か息子に、なんかの拍子でオジサンの話になり
「お前のおじさんはお前が生まれるちょっと前、どこかへ、行ってしまったんだよ……」
うーん。悲しい。じゃあ、止めようか。
と、99パーセントは思ったが、なんかカッコよくね? と思ってしまった1パーセントは否定できない。1パーセント、第1話における初号機の起動確率より高い。
「オジサンはどこかへいってしまったんだよ。そして……この空の下で、笑って居るよ!」
おお好き嫌いは抜きとしてそれなりそれなりにである。
なんとかボックスかキャラメルなんとかのイメージですね。
と、いらぬ方向にテンションが上がった事にギリギリ自覚できたので、色んな人に相談してみました。
沢山の仲間が、しんどいなら会おうと言ってくれたけど、会ってもらうのが申し訳なくてしんどくなったし、実際会ってうるちは楽しくても、独りになってからのぶり返しが酷くて仕方なかった。
「万が一野垂れ死んだら『SSSS,ゴッドゼノン』や見られませんよ!」
と言ってくれたなかまもいたけれど、、多分絶対面白いだろ僕が観なくても。
グリッドマンは実写版ファンとして面白くなくても見守りたかったが、おもしろかったもの。絶対大丈夫!
『シン・ウルトラマン』はどうするんだと言う意見も頂きましたが、夢にまでみたタイマーなしの成田デザイン準拠ですよ。面白くなくても全肯定するね俺は!と言うのが僕のスタンス。どうせ絶対面白いし!(今では勿論どっちも楽しみです)
さて、5月8日午前4時半。
わりと明るいなぁ。もう5月だもんなかと思いつつ、思っているうちに
「あれ? 今から仕事行くの僕? それってなんか変じゃない?」
と、思えて仕方なくなってたのです。
変なわけないだろ、まぁまぁ落ち着こうと日課であるとことの落書き=大学ノートに僕の考え方怪獣、ウルトラマン、架空のセクシー女優(現在は引退して脚本家に転身)、実在しないヨーロッパ某国のアクションスター(実力派ピカ一)など描いていても、なんか今までと違って、全然楽しくない。
午前5時には寝間着を着替えていたけど、自転車の鍵をポケットに入れるだけのことがたまらなくしんどい。自転車の事は嫌いじゃないし、載らなきゃ職場には行けないのに。
起きる前から、止めて欲しいとも後押しして欲しいともつかないツイートをしていたが、読み返せば読み返すほど、みんな優しい気持ちで旅を進めてくれてるにちがいない! と確信してきた。
午前5時半。バイト先には8時前につかなきゃならず、7時には家を出たい。
が、僕はリュックに洗濯した制服を詰めることなく、大きな旅行用カバンにシャツと靴下とパンツ、上着になる物にタオル、その他の生活用品を入れていた。
一応ノートを二冊ほどと、筆記用具も突っ込んだ。
もう入る余地は無さそうだったが、歩けなくなる前の旅なら時間もあるだろうと本も持っていくことにした。
最初は所謂四大奇書を持っていくつもりだったのだが、『匣の中の失楽』はノベルズでしか持ってないのでどうしてもかさばる。そして『虚無への供物』を諦めてでも世界一優しい声の持ち主こと井上喜久子17歳さんが31歳の頃発行された(未来の書物やんけ)写真集『DreamTime』をお守り代わりに持っていきたかった。
そして、ホントに道すがら死んでしまったとしたら、手元にどうしても置いておきたかった本がある。切通理作の『怪獣使いと少年』だ。
そんなわけでこの2冊と『黒死館殺人事件』と『ドグラマグラ』を道中のお供に……、とこの2冊が両方とも創元の日本探偵小説全集のそれでなければ四大奇書全部入れられたかもだがと今気が付いたけど、河出文庫のや角川の持ってないし。
ところで信じて貰えないかもしれないが、右脳と左脳? なんてはっきりとしたもんでは無いだろうけど、この旅支度、半分くらい無意識で行ってました。本を選んでる時でさえです。
荷物を積み終わった時には頭の中でカッカカッカと、血液なり思考なりが沸騰し、後戻りする必要ないね? ありませんね? とだれともなしに言えば『イエス!』とどこからともなく聞こえてきたものです。
ツイッターに旅立ちを宣言し、家族友人には前々から「ひょっとして旅立つかも」と言っては止められていたので、「ごめーん」とだけ言ってスマホをベッドに叩きつけ、散らかったゴミ、生ゴミだらけの炊事場もそのままにドアを開け、一応と言う気持ちで家を出ました。
そっから先は、しばらく記憶が曖昧です。実家から送られた布マスクで口元を覆うと、なるほど実家の匂いがして泣きそうになったり、腹が減ったがギリギリまで何も食うまいと決意したりしましたがともかく、ともかくバイト先へとは違う方向へ歩こう!と、しか考えず歩き出しました。
で、JR二条に向かっていたのは確かでしょう。気づいたら電車だったし、7時前には京都駅に、途方に暮れた顔立っていました。
ここでスマホを置いてきてさえ居なければ、大きく展開は違っていたのでしょう……。
つづく