教育未来フェスIN熊本から始まる未来
近代社会は、過去の経験から成功法則を発見し、それを未来へ投射するという方法論を確立した。それは、豊かな物質文明を生み出したが、どんなパラダイムにも影があるものだ。近代社会のパラダイム自体が作り出している問題が大きくなってきて、あらゆる分野で同様のあり様で機能不全化している。
参加型社会学会の理事長である橘川幸夫さんは、『参加型社会宣言』の冒頭で、
と書いた。先日、その真意を聞いたところ、橘川さんは、
と答えた。
私たち一人ひとりが、本当に思っている実感を表現すると、予想もできないほど、それぞれが色んなこと感じていることに気づく。
想いを受け取ると、身体がうずうずしてきて、何かを始めたくなる。
過去の経験を整理してうまくいくような計画を立てる近代社会のアルゴリズムの方法論とは違う。想いが感染して身体がうずうずして、よく分からないまま、直感的に何かをやり始める。参加型社会のライブの方法論だ。想いと直感を頼りに動いていくうちに、後から少しずつ意味が分かってくるのだ。
橘川さんが開発した未来フェスというワークショップは、一人一人が平等に同じ時間(例えば5分)、自分が実感していること、体験していることを話していくもの。年齢も立場も関係なく、同じ時代を生きている一人一人の感じている「本当のこと」が場にあふれ出す。
なぜ熊本市で教育未来フェスが行われたのか?
神田みゆきさんのコーディネート
新しいことが始まるとき、その背後には必ずキーパーソンがいる。今回の未来フェスが実現したきっかけは、神田みゆきさんだ。
熊本震災のときに、勤務していた中学校を育児休業中だった神田さんは、分野横断的に様々な人を繋げまくり、熊本のキーパーソンネットワークを個人で構築した。私は、SDGsカードゲームのコミュニティイベントで神田さんと知り合い、そのバイタリティと思考と実践の厚みにびっくりした。それ以来、「熊本に神田みゆきあり」と心に刻んできた。
7月に九州に行く機会があったため、神田さんに「教育関係のキーパーソンを紹介してほしい」とお願いしたところ、熊本市の教育長の遠藤洋路さんと、Wing Schoolの田上善浩さんを紹介してくれた。以前から教育の未来を一緒に模索しているALくまもとの溝上広樹さんも誘って会うことになった。
当日、熊本を台風が直撃したため、福岡からZoomで繋ぐことになり、対面でのミーティングは叶わなかったが、遠藤さんと田上さんの想いに触れることができ、今後に期待が持てる時間となった。
神田さんがいなければ、実現しなかったミーティングだった。
今回、配信を担当してくれた江良さんと小原さんとも、この時に会った。
Wing Schoolでの企画会議
台風のせいで対面で会えなかったのは、かえって良かった。次の九州行きのタイミングで、「今度こそ会おう!」という話になったからだ。
遠藤さんの著書『みんなの「今」を幸せにする学校』を熟読し、想いで共鳴していることを実感したので、その次の一歩を模索したくなったのだ。
再び神田さんに活躍してもらって対面ミーティングを企画することになった。せっかくだからオルタナティブ教育に取り組んでいるWing Schoolを見学しようということで、9月26日に、神田さん、遠藤さん、田上さん、田原の4人がWing Schoolの校舎に集結した。
現在の社会システムが直面している構造的な問題について、感じていることを話したところ、4人とも問題意識を共有しており、何かをやろうという機運が生まれた。
熊本市が掲げる子どもを中心に置いたエコシステムの構想は、大変共感できるものだ。
田上さんは、公教育からオルタナティブスクールにポジションを移したことで、情報のやり取りに不自由さを感じているということを伝えてくれた。
組織の枠を超えて個人と個人とが想いで繋がるようなイベントをやろうということで、未来フェスを提案した。「いいね!」ということで、その場で日程が決まり、場所が決まって電話で予約を入れた。遠藤さんのスピード感のあるリーダーシップに驚いた。
未来フェスの精神の共有
未来フェスを行う上で、未来フェスの神髄を考案者の橘川さんに説明してもらう機会を作ることにした。
一度もやったことのないイベントだから、どんなことになるのか、何が重要なポイントなのかがイメージしにくい。そのあたりを、橘川さんの言葉で語ってもらえれば、イメージの共有が進むと思ったのだ。
会場のオモケンパークを経営している面木さんも加わり、未来フェスのイメージが共有された。本質が分れば、応用はいくらでも効くのだ。ロックの精神から生まれた未来フェスの物語を橘川さんが語ってくれたことで、ラストピースがはまり、実現に向けてラストスパートを切ることになった。
イベントページが作られ、登壇者の募集がスタートした。
熊本未来フェスIN熊本開催
2020年11月26日、熊本市にあるオモケンパークとオンライン会場に登壇者と視聴者が集結した。
20名の登壇者のひとり一人の発表は、どれも現場の生の声であり、臨場感に溢れていた。まさにライブだった。
詳しい様子は、神田さんのブログに詳細なレポートが上がっているので読んでほしい。
過去の延長線上ではない未来が、この日、オモケンパークとオンラインとのハイブリッド空間で生まれてしまった。
「ライブとはこれからのこと」なのだ。
これが、どうなっていくのか分からないまま進んでいこう。
意味は、後から紡がれてくるものだから。