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都留文科大学で小説「ジミー」ワークショップをやってきました

コロナをきっかけに旧来の社会システムが大きく揺らいでいる今、過去の実績に基づいた評価軸よりも、「今」を生きている私たちの実感に基づいて行動することが重要になってきています。

出版社メタ・ブレーンと一緒に進めている参加型出版の取り組みは、本を書きたい人が原稿を書き、それを世に出そうという人が応援し、出版の機運が高まったらクラファンをやって初刷りの印刷代を集めて、著者と応援者が協力して世に出していこうというものです。

参加型出版の取り組みとして、橘川幸夫著『参加型社会宣言』、田原真人著『出現する参加型社会』を出版し、それに続く形で、青海エイミー著『ジミー』を出版しました。

参加型出版のラインナップのはじめての小説ということで、原稿が出てきてから出版に至るまで、試行錯誤の連続でしたが、クラウドファンディングで200名を超える皆さんに応援してもらい、無事に出版することができました。(「ジミー」が出版に至った物語は、こちら↓)

都留文科大学で比較文化を担当している中西須美さんが、大学の授業の課題図書に『ジミー』を採用して下さり、約20名の大学1年生の学生さんたちが、『ジミー』をていねいに読みこみながら議論を重ねてきました。

7月8日、ゲスト講師として田原が都留文科大学を訪問し、90分間のワークショップを実施してきました。本記事では、ワークショップをどのように実施してきたかを報告します。

事前ミーティング

まず最初に、講師とのパイプ役を担当する2人の学生さんと事前ミーティングを行いました。

前期が始まってからワークショップを行うまでに、すでに10回の授業が行われているので、それまでの授業の中でどのように理解が深まっているのか、学生さんたちが『ジミー』をどのように捉えているのかを知り、ワークショップの設計の手がかりにしたかったのです。

事前ミーティングでは、授業担当の二人に、登場人物の中で、自分と近いと感じたキャラクター、遠いと感じたキャラクターについてそれぞれ質問しました。そのやり取りを通して、20歳前後の学生さんたちが、リアリティを持って『ジミー』を読んでくれていることが分かりました。

それで、当日は、「所属」「名前」「アイデンティティ」の3つのキーワードを軸に、学生さんたちが日常で感じていることと、『ジミー』の世界とを結びつけながら対話する設計にしました。

ワークショップ当日

教室の机を一方に寄せてスペースを作ってもらい、椅子を丸く並べて対話する形にしました。

「今日、何を得たいか?」というお題のチェックインをすると、80%以上から、「レポートの参考にしたい」という声が。2週間後に控えたレポート提出のことが、みんな気になっているようでした。

事前に、私のブログやnoteなどで「田原真人とはどんな人か?」というのを調べているということだったので、「どんなことが分かりましたか?」と質問すると、「ファシリテーター」「マレーシアに住んでいる」などといった回答が返ってきました。それを補足するように自己紹介をして、ワークショップをスタートしました。

チェックインをしながら、全体的に小声になっているのを感じました。コロナの影響で大声を出さない習慣がついているのかもしれないし、全員がマスクをしているからかもしれないなと思いました。声の大きさの調整の必要性を感じて、サークルの対面(一番遠くにいる人)同士を一組選び、「今日の昼ごはんに何を食べたかを話してみて」とお願いしました。一番遠くの人とやりとりができる声の大きさを確認し、「このくらいを基準にして話していきましょう」と言って始めました。

対話を始めるにあたり、「経験から気づきを得ること」「お互いの違いから学ぶこと」の2つをマインドセットとして確認した後、「所属」「名前」「アイデンティティ」をテーマに、『ジミー』と関連付けて10分ほど話しました。これらは、『ジミー』の主題でもあるし、学生にとっても身近なテーマでもあります。学生が自分ごとに引き付けて考えやすいようなガイドをした後、3人ずつのグループで意見交換してもらいました。

学生からは、「都留文科大学らしい人というステレオタイプ」「部活動に所属していることで感じていた自分らしさ」「主人公のマイは自分にとって苦手なタイプ」など、具体的な話が次々と出てきて、それを素材にテーマに対する理解を深めていきました。

チェックアウトでも、一人ひとりに様々な気づきがあったことが感じられました。

リフレクションで学生が書いたワークショップの感想です。

学生の感想

事後ミーティング

ワークショップ終了後、担当の学生2名と振り返りをしました。「ワークショップが初めてだったが、お互いから学べるということを体感した」という声があり、コミュニケーションを通して意味のある体験だったことを感じ取ることができました。

『ジミー』は、平易な文章でありながら多層的な内容を含むため、学生を対象としたワークショップで課題図書として用いるのに向いていると感じました。

高校や大学、各種団体の講義などへ出張ワークショップ行いますので、関心のある方はご連絡ください。

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