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スプラトゥーンで楽しむゲームサウンドの世界
Takramの野見山です。
実は最近、ゲームの企画や開発に携わる機会がありまして、人気のゲームについて「なぜここまで没入できるのか / 楽しめるのか」という分析を行っていました。
その中でも特に、スプラトゥーンのゲームサウンドがなかなか興味深かったので、ぜひ紹介させてください。
スプラトゥーンとは
スプラトゥーンは4対4のオンラインシューティングゲームです。
「床や壁をインクで塗って、そのなかを潜って移動する」というアクション要素が特徴的で、縦横無尽に立体的な構造物のなかを移動しては隠れ、不意を突いて相手を倒すのが最高に楽しいです!
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ゲームサウンドって何?
ゲームサウンドとは、ゲームを構成するさまざまな音の総称です。
背景で流れるBGMから、キャラクターのアクションを演出するSE(Sound Effects:効果音)まで、様々な音が機能的かつ情動的にデザインされています。スプラトゥーンでも、イカたちの世界がBGMやSEによって豊かに演出されています。
ここがすごい、スプラトゥーンのゲームサウンド
1. ゲームを彩るBGM
スプラトゥーンといえば、対戦中に流れる爽快なバンドサウンドのBGM。
実はこれらのBGMは、スプラトゥーンの世界で生きているアーティストたちによって作られています。
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ロックバンド、スリーピースバンド、アイドル。方向性のまったく異なるアーティストたちが様々な楽曲制作に取り組んでいます。
公式Webではアーティストの紹介ページがあり、イカ & タコ界のカルチャーを感じられるのがおもしろいです。
イカ(以下)、個人的なおすすめ曲を紹介します🦑
BGM(1/2):Splattack!
初代Splatoonからのメインテーマ。かっこいい。
初代スプラトゥーン発売時、ボーカルが突然イカ語で歌いだしたのが衝撃的でした。Splatoon 3バージョンのSplattack!ではボーカルと弦楽器がユニゾンしてさらに心地よい一曲です。
BGM(2/2):運鈍根
サーモンラン(通称バイト)の異常発生時に流れる音楽。8/8拍子からはじまり、25/8拍子まで1小節ごとに拍子が増えていく変拍子曲。まったく意味がわからない…。
曲として成立しているだけでなく、拍子が増えるごとに「早く敵のシャケを倒さなきゃ…」「早くクリア条件のイクラを集めなきゃ…」という気持ちをかき立てられます。ゲームの制限時間と同期して、音楽のBPMも一緒に上がっていくのが秀逸です。
2. インクの効果音
スプラトゥーンでは、さまざまなインクのSE(Sound Effects:効果音)が制作されています。
シューティングゲーム全般に言えることですが、足音や射撃音などのSEは、相手の行動を予測するための重要なヒントです。そのため多くのシューティングゲームでは、SEがしっかり聞こえるようにBGMを控えめにすることが多いです。
しかし、スプラトゥーンでは対戦中にBGMが大音量で流れている…!
それでもゲームが成立するのは、インクのSEがただの演出ではなく、アクションを理解するために機能的に作られているからです。
イカ(以下)、様々なアクション系のSEを紹介します🦑
アクション系のSE(1/3):足音
インクの上を歩くピチャピチャという音と、相手のインクを踏むときのへばりつくような音。インクに潜れることやダメージを食らっていることがわかります。
アクション系のSE(2/3):射撃音
タタタッという軽めの高音から、トットットッという重めの低音まで。弾の大きさやダメージ量、弾の当たりやすさなどが直感的にわかります。また射撃音とともに鳴るインクの滴る音は、プレイヤーに床にインクの塗りが発生したことを知らせてくれます。
アクション系のSE(3/3):潜伏音
チャポンというインクに潜る音と、ブクっという浮かび上がる音。またインクに潜っている間は、ブクブクブクという音が鳴ると同時にBGMが曇ります。たとえ画面を見なくても、音だけで潜伏のタイミングや状態が直感的にわかります。よく作られている…。
番外編:フォントやUIにも用いられるインク表現
スプラトゥーンではSE以外にもインク表現が用いられています。たとえばフォントは、インクらしい有機的な動きのある曲線と、スポーツらしい太さが特徴的です。
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他にもUIは、インクが垂れたり、揺らいだり、撥ねたり。インクを使った遊び心のある表現が特徴的です。
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3. ゲーム世界のなかの音 / Diegetic Sound
スプラトゥーンでは、ゲーム世界の外側で流れるBGMだけでなく、ゲーム世界の内側で流れる音も充実しています。このような音は「物語のなかで流れる音」という意味でDiegetic Soundと呼ばれます。
「Diegetic」という言葉は、もともと映画分野で使われていた概念らしいですが、IEZA Frameworkというゲームサウンドを定義するフレームワークでも用いられています。
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一般的にゲームで流れるBGMは左下の「Affect」として構成されることが多いですが、スプラトゥーンでは一部のBGMを「Zone」や「Effect」として構成して、ゲーム世界への没入感を高めています。
イカ(以下)、Diegetic Soundの例を紹介します🦑
Diegetic Sound(1/2):ロビー
対戦相手とマッチングするロビーでは、ドーム上部に3つのスピーカーが設置され、そこからBGMが流れています。ロビーを構成するすべての音はオブジェクトベースで配置されているため、スピーカーに背を向けると音が小さくなり、スピーカーに近づくと音が大きくなります。
また空間の広さで音の聞こえ方が変わるのも秀逸です。広いドーム内では硬い壁や鉄骨に音がぶつかって反響しますが、狭い室内に入ると柔らかい床やソファに吸音され籠もっている様子がわかります。自販機からはシューッという音も。あまり意識されない細かい演出ですが、室内の空間を強く印象付けています。
Diegetic Sound(2/2):広場
広場を歩いていると、店内のBGMや飛行機の飛ぶ音、モノレールの走る音などが聞こえます。こちらもオブジェクトベースの音で、空間への没入感を高めてくれます。街やイカ/タコたちの喧騒が、広場らしい開放感や臨場感を与えてくれます。
まとめ
スプラトゥーンのゲームサウンドについて様々な視点から解剖してみました。爽快なアクションやポップなグラフィックについ目が行ってしまいますが、没入感とゲームの理解度を深めてくれるゲームサウンドの重要性を改めて感じました。