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足摺岬 唐人駄場〜東サークル〜お散歩寓話

東サークル


ストーンサークルと呼ばれるもので、2つの中心の石を取り巻くように、円形状に石が配置されています。中心の石には人工的に加工したような形状が見られます。

「石環の約束」


高知県足摺岬近く、海を見下ろす「唐人石巨石群」の東サークル。古くから人々はこの地を神聖な場所として敬い、再生や命の絆を祈る儀式を行ってきた。そこに、ある家族が住んでいた。父・秀次(ひでつぐ)、母・綾(あや)、娘・美空(みそら)の三人家族である。

ある日、父が言った。
「今日は大切な儀式の日だ。この場所で私たちの未来を占うんだよ」

母は少し不安げに微笑み、娘は興味深げに目を輝かせた。この儀式は、唐人石の中心の石に刻まれた模様に日が当たる瞬間を見届けることで、未来の道筋を問うものだった。


美空は、家族と一緒に儀式の場へ向かったが、その心には疑念があった。
「未来を知ったところで、本当に何か変わるの?石が答えをくれるなんて信じられないよ」

しかし父はこう答える。
「美空、この石たちはただの石ではない。何世代にもわたる人々がここで祈りを捧げ、進むべき道を見つけてきた。私たちも、この場所で自分たちの道を見つけるんだ」

儀式が始まると、美空は中心の石に目を向けた。太陽が昇り、石の模様が輝き出す。しかしその瞬間、父と母が進むべき道について口論を始めてしまう。父は伝統を守るべきだと言い、母は時代に合わせた新しい選択を考えるべきだと主張した。

美空は苛立ちと不安の入り混じった心で二人を見つめていた。
「どちらが正しいのかなんて、誰にも分からないじゃない!」


娘の声が響き渡ると、太陽の光が石の表面に反射し、周囲を暖かく照らした。美空は石に近づき、そこに刻まれた模様をじっと見つめた。その模様は、どちらの道を選ぶべきか示すような明確な形ではなく、無数の線が絡み合ったものだった。

その時、美空は気づいた。
「この模様はどちらか一つの答えを示しているんじゃない。自分の進む道は、自分で決めるものなんだ」

彼女は父と母に向き直り、こう言った。
「お父さん、お母さん、どちらの道にも価値がある。でも、そのどちらを選ぶかは、私たち次第だよ」

父と母はその言葉に静かにうなずき、互いの意見を尊重しながら次の一歩を話し合い始めた。

のきてつづく教訓

「未来は予言されるものではなく、自ら選び取るもの」

人々は時に迷い、岐路に立たされる。しかし、どちらの道を選ぶにせよ、それは自分自身の決断にかかっている。他者の意見や過去の教えは、参考にはなるが答えそのものではない。ターニングポイントで重要なのは、自分の心に問いかけ、選んだ道を信じて歩むことである。

石環の約束は、家族が未来への道筋を共に考え、選択する大切さを教えてくれた。

「石環に刻まれた選択」


3人の女性――彩香(あやか)、千佳(ちか)、奈緒(なお)は、大学時代からの親友だった。それぞれ違う道を歩んできたが、久しぶりに集まり、高知県足摺岬の「唐人石巨石群」へ観光に訪れた。

東サークルにたどり着いた3人は、太陽の光が巨石群を照らす光景に感動しながらも、それぞれ心の中に秘めた悩みを抱えていた。

中心の石の周りに立つと、千佳が言った。
「この場所には、古代の人たちが未来への祈りを捧げたんだって。ここで願えば、何か道が見つかるかも。」

3人は中心の石を見つめ、太陽がその表面を照らす中で、過去と未来について語り合い始めた。


彩香は、仕事で成功を収めていたが、毎日の忙しさに疲れていた。彼女は今の道を続けるべきか、全く別の人生を選ぶべきか迷っていた。
「私、今の仕事を辞めるかどうか悩んでる。でも、やりたいことも見つからないし、辞めるのはただの逃げかもしれない」

千佳は、家庭を持つべきか自分のキャリアを優先すべきか悩んでいた。彼女は安定を求める気持ちと、まだ挑戦を諦めたくない気持ちの間で揺れていた。
「このまま仕事を頑張るべきなのか、それとも家庭を持つことを考えるべきなのか…。どちらも手に入れたいなんて、贅沢なのかな」

奈緒は、ずっと描いてきた夢が現実的ではないと感じ始めていた。夢を諦めるべきなのか、それとも最後まで挑戦するべきなのか決められずにいた。
「もう何年も夢にしがみついてきたけど、そろそろ現実を見て諦めたほうがいいのかもしれない」

それぞれの葛藤が交差する中、3人は答えを見つけられず、重たい沈黙が訪れた。


太陽が石の中心を照らし、3人の影が石環に映し出される。その時、奈緒がふとつぶやいた。
「この石たち、何千年もここに立ち続けてるんだよね。波風にさらされても、光を受け止めてここにある」

彩香は奈緒の言葉に目を開かされた。
「そうか…。道を変えるのも、同じ場所に留まるのも、どちらも間違いじゃない。大切なのは、どんな選択をしても自分の中に芯を持つことなんだ」

千佳も頷いた。
「私たちはそれぞれ違う道を歩んでるけど、この石みたいに、自分が決めた場所で輝くことができるのかもね」

3人はそれぞれの悩みに向き合い、自分の選択を信じる決意をした。そして、唐人石を後にする頃には、心に新たな光が差し込んでいた。

のきてつづく教訓

「選ぶ道に正解はない。重要なのは、その選択をどう生きるか」

人生には無数のターニングポイントがあるが、どの選択が正しいかを決めるのは自分自身。道を選んだ後、その道でどれだけ輝けるかは、自分の心次第である。唐人石のように、選んだ場所で光を受け止め、立ち続けることが真の強さである。

「石環に映る影」


高知県足摺岬の唐人石巨石群。神秘的な巨石の配置と太陽の光が作る幻想的な風景は、訪れる者を古代の祈りの空間へと誘う。

その日、東サークルを訪れたのは、不倫関係にある二人――篤志(あつし)と紗枝(さえ)。どちらも家庭を持ちながら、抑えきれない感情に突き動かされ、許されない愛に身を投じていた。

篤志が笑いながら言った。
「ここ、古代の人たちが祈りを捧げた場所らしいよ。再生とか命の絆とか…。俺たちにはぴったりだろ?」

紗枝は微笑んだが、その瞳にはどこか影があった。
「でも、この場所が求めるのは『絆』であって、嘘の関係じゃないかもしれないね」


石環の中心に立つ二人。太陽の光が中心の石に当たり、その光が二人の影を長く映し出す。
篤志は彼女の手を握りながら言った。
「紗枝、俺たちの関係だって本物だろ?どんな形だろうと、これが真実の愛じゃないか」

紗枝はその言葉に目を伏せた。
「篤志、あなたといるときは幸せ。でも、私たちの愛は誰かの犠牲の上に成り立ってる。それがずっと頭から離れないの」

篤志は反論しようとしたが、石環の中心で彼らの影が二つの石に分かれていくように見えた。
「影まで、俺たちの関係を拒絶してるみたいだな」

紗枝はその言葉に小さく笑ったが、涙が頬を伝った。彼女の心には、愛と罪悪感がせめぎ合っていた。


紗枝は石環を見渡し、ゆっくりと口を開いた。
「篤志、見て。この石たちは長い年月を耐えてきた。風にも雨にも耐えて、自分たちの場所を守ってきたのよ」

彼女は中心の石に触れながら続けた。
「でも私たちは違う。私たちは、どこかの誰かを傷つけながら、自分たちの居場所を作ろうとしてる。これが本物の絆だとは思えない」

篤志もまた石に目を落とした。しばらくの沈黙の後、彼は静かに頷いた。
「分かってる。俺たちの愛がどれだけ本物だと思っても、嘘の上には立てないってことだな」

二人は手を握りしめながらも、互いの手をそっと離した。それが、最後の愛の証だった。

のきてつづく教訓

「真実の愛は、誠実さと責任の上に築かれる」

いかなる愛も、美しい感情だけでは支えきれない。誠実さを欠いた愛は、いずれ自らを苦しめ、他者を傷つける。許されない愛に気づきながらも、勇気を持って正しい道を選ぶこと。それが大人としての真の誠実さである。

唐人石のように、長い時を耐える絆を築くには、土台となる信頼と誠実が必要だということを、二人は知ったのだった。

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