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足摺七不思議〜一夜建立不成の鳥居〜お四国参りお遍路さんの紙芝居
大師と天邪鬼の夜明けの試練
弘法大師は、熊野権現を遥拝するため、一夜で荘厳な鳥居を建立しようと決意しました。この鳥居は、神仏への敬意を表すものであり、地域の人々を守護する象徴でもありました。そのため、大師の挑戦は崇高な目的を持つものでした。
大師の挑戦を知った天邪鬼は、これを面白がり妨害を企てます。天邪鬼は鳥の鳴き真似をして夜明けを偽装し、大師が目的を果たせないようにするつもりでした。
夜半、大師は祈りとともに柱を立て始めました。天邪鬼は遠くから鳥の声を真似し、「夜が明けた」と思わせようとします。しかし、鳥居を立てる手を止めるどころか、大師はその声を聞くたびに微笑み、さらに集中して作業を進めます。
天邪鬼は次第に焦り始めました。「なぜ気づかないのか? いや、気づいているのに止めないのか?」そう思いつつ、天邪鬼はさらに声を高くし、あたりを騒がしくしました。それでも大師は静かに作業を続けます。ついに、夜明けが近づき、空が白み始めるころ、大師は鳥居を完成させる寸前になりました。
その瞬間、大師は手を止め、天邪鬼の方を向き、穏やかにこう言いました。
「夜明けを偽る声は、私を惑わせるものではない。それは私の心を試し、この挑戦の価値をさらに高めるものだ。試練がなければ、この鳥居もただの柱で終わる。しかし、君の声のおかげで、私はこの鳥居に祈りと忍耐を込めることができた」
天邪鬼はその言葉に戸惑いました。自分の妨害が、大師の目的を妨げるどころか、逆に意志を強める結果になったのです。最終的に天邪鬼は観念し、大師の挑戦の崇高さを認め、静かに立ち去りました。
のきてつづく教訓
1. 困難が目的を際立たせる
試練や妨害があるからこそ、挑戦の価値が高まり、成果が輝く
2. 妨害は試練であり成長の糧
天邪鬼の妨害が、大師にとっては心の鍛錬であり、忍耐力を試す試練
3. 柔軟性と忍耐の重要性
大師は、天邪鬼の妨害を知りつつ動揺せず、冷静かつ柔軟に対応する姿勢
4. 崇高な目的は必ず困難を伴う
鳥居の建立という目的が崇高であるからこそ、困難が付きまとう
挑戦の道にある困難を恐れるのではなく、それを受け入れ、乗り越えることで目的が達成される。
大師と天邪鬼の共鳴
弘法大師は、熊野権現を祀るため、一夜で荘厳な鳥居を建立しようと決意しました。その挑戦には、神仏への祈りだけでなく、人々への導きと守護という深い意義が込められていました。
その話を聞きつけた天邪鬼は、「人間の限界を思い知らせてやろう」と考え、大師を妨害する計画を立てました。天邪鬼は夜中に鳥の声を真似て、「夜明けが訪れた」と大師を錯覚させ、作業を中断させようとしたのです。
夜半、大師は静かに柱を立て始めました。天邪鬼は遠くから鳥の声を真似しましたが、大師は作業を止めませんでした。それどころか、大師は微笑みを浮かべ、言葉を一言も発することなく作業を続けました。
やがて天邪鬼は、大師が自分の嘘を見抜いていることに気づきました。それでも天邪鬼は、「ならば本気で惑わせてみせよう」と声を変え、さらに巧みに鳴き真似を続けました。大師は作業を続ける中、ふと手を止め、鳥居の半ばで作業を終えました。そして、空を仰ぎ、天邪鬼に向かって穏やかにこう語りかけました。
「天邪鬼よ、私は君の声を楽しんでいた。君のいたずらには意味があり、私はその声により自分の心の揺らぎを知ることができたのだ。鳥居を完成させることが全てではない。この未完成の鳥居もまた、神仏に奉げる祈りの形であり、君の存在がその祈りの一部となった」
天邪鬼はその言葉に驚きました。自分の妨害が大師にとって妨害ではなく、「学び」として受け入れられたことを初めて知り、戸惑いながらも思わず問いました。
「私の嘘や悪意に、なぜそんな意味を見出せるのだ?私はただ妨害しただけだというのに」
大師は穏やかに答えました。
「悪意もまた学びの一部であり、全ての存在には役割がある。君の声がなければ、私は自分の心を試す機会を得られなかっただろう。君がいたからこそ、この鳥居は未完成でありながらも、完成以上の意味を持つものとなったのだ」
天邪鬼はしばし黙り込みました。そして、初めて自分の存在に別の意味があると感じ、大師の寛容さと深い智慧に触れて静かにその場を去りました。
のきてつづく教訓
相手の悪意や妨害さえも学びと成長に変える寛容さと智慧の重要性をより深く伝えています。
大師と天邪鬼の問いかけ
弘法大師は、熊野権現を祀るため、一夜で荘厳な鳥居を建立しようと決意しました。人々の願いと祈りを込めたこの挑戦は、神聖で崇高なものでした。しかし、その噂を聞きつけた天邪鬼は、大師の試みに興味を持ち、「自分の力で妨害してみせよう」と企みました。
深夜、大師が柱を立て始めると、天邪鬼は鳥の鳴き真似をして「夜が明けた」と錯覚させようとしました。しかし、大師はそれに気づきながらも作業を続けます。天邪鬼は次第に苛立ち、さらに巧みに鳴き真似を繰り返しましたが、大師は静かに作業を続けました。
やがて天邪鬼は、鳴き声を続ける自分に対し、大師がなぜ動じないのか理解できず、ついに目の前に姿を現しました。天邪鬼は大師に問いました。
「なぜだ? 私が嘘をついていることを知りながら、なぜそれを信じて手を止めるのだ? 私の行為には悪意がある。なのに、どうしてその悪意に応じる?」
大師は手を止め、微笑みながら天邪鬼に向かって答えました。
「君の声に私は気づいていた。だが、君の嘘を咎めることはしなかった。むしろ、君の声を通じて、私は自分自身の限界を知ることができたのだ。夜明けだと思い手を止めたのは、私がこの鳥居を完成させること以上に、君と対話し、理解し合う機会を大切にしたいと思ったからだ」
天邪鬼は驚きました。自分の妨害が大師にとって「対話のきっかけ」として受け止められていたとは思いもよらなかったのです。
「私の嘘や悪意が、対話につながるだと? そんなことを考える者がいるなんて……」
大師はさらに言葉を続けました。
「人は誰しも、自分の意図がすべて他者に伝わるとは限らない。君が嘘をついた理由を知りたいし、私が手を止めた理由も君に伝えたい。互いに意図を理解することができれば、この未完成の鳥居もまた、完全なものとなるだろう」
天邪鬼はその言葉に打たれ、少しの沈黙の後、初めて自分の行為を振り返り、大師に問いました。
「私がしたことにどんな価値があるのか、私にはまだわからない。だが、あなたのように私を否定しない者がいるなら、私も何かを変えられるのかもしれない」
こうして天邪鬼と大師は対話を続け、お互いの意図や価値観を理解し合うことで、鳥居が完成すること以上の成果を得ることができました。
のきてつづく教訓
互いの意図を理解しようとする対話の大切さを通じて、悪意や誤解を乗り越え、より深い絆や成果を得ることの重要性を伝えています。