足摺七不思議~一夜建立の鳥居~より「鳥」
天邪鬼が真似た「鳥の声」
夜の「鳥の声」
お大師様からみて、「仕方のない奴」と長い目でみてしまう
「鳥の声」の物語があります。
「寒苦鳥の物語」です。
終夜雌は殺我寒故と鳴き、雄は夜明造巣と鳴也。夜明ぬれば朝日の暖なるに映じて巣をも造らず
(録内拾遺より)
インドの雪山。
夜。それはそれは寒気すさまじく草木も凍る。
昼。こりゃまた穏やかな陽光があり暖かい。
この雪山に、寒苦鳥と名付く鳥あり。
夜は寒苦に堪えず、がたがたとふるえながら、
めんたは、「さむい」「あんた」「さむい」「あんた」と他人任せに啼き
おんたは、「あした」「つくる」「あした」「つくる」と無責任に鳴く
「明日は必ず巣を作らん、明日は必ず巣を作らん」と鳴いて一夜を送り、
夜明くれば、朝日の暖かさにたちまち寒苦を忘れて一日を遊び呆け、
夜はまた寒苦に泣く。
そんな鳥です。
夜。決意する。誓いを立てる。
昼。忘れる。
一夜だけ居を建てる誓いを立てる鳥
そんな鳥の鳴き声をお信じになられて赦すお大師様
愚かな衆生を
何度も何度も信じる。
ならずとも、ならずとも、
ならずとも、信じて、なる。
人を育てる先達へ