liner note___「遠吠え」
朝方の淡い水色と、夜去の群青。
何かを作ること、そこに渦巻くはかりごとと意志。
背後にある大好きな80s、汲んでオマージュして受け継がれてきた鮮やかすぎる愛。
作ることの途中に生じる副次的な苦しさ。
街にまとわりつく退廃、いけ好かない空気、地獄みたいな雲。
誰かからもたらされた譲れないもの。
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かってえ言葉でニュアンスを伝えさせてもらいました。音楽の種明かしって難しいんですよ、言い過ぎて聴き手の願いを折るのは嫌だし、作り手より聴き手の方がその音楽のことわかっているし。
でも、そこに宿したほんの少しばかりの「自分」について話させてもらいますね。
まず前提、音楽を作るのはめちゃくちゃ楽しいです。けれどそれは恐ろしいくらい大変で、どうしていいかわからない事ばかり。人とイメージをすり合わせる事も、過去の自分と世界一無駄なレースをする事も、自分の良いと思うことが伝わらない事も、聴く人が通り過ぎたり、すれ違ったりしていく事も。
ストレスが半端じゃない。音楽を作る中で感じる一時的な無敵感すら太刀打ちできないほどに苦しい。けどやらざるを得ない。それをしたいから。(同情して欲しいわけじゃないです。)
そんな時にこの曲のメロディが出てきました。
輝いていた!どう見ても(聴いても)。これは思ってることを全部言わないといけない、今の自分が感じていることを直接的にでもぶつけないと、言葉が負ける、と思いました。
だから打ちひしがれた人にこそ聴いて欲しい。仲の良くしてくれている友人や、音楽を聴いてくれる人たちの足取りが少しでも軽くなってくれたらいいな。
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ちょっとだけ歌詞について。歌詞はすぐ下に書いておきますね。
AとBの抽象と具象の対比がとても気に入っています。ちなみにペッパーズミーという言葉はありません。ペッパーズゴーストという言葉からの造語です。
最後に「不安通りに」で終わっているのは、好奇心には不安が付きまとうものだと信じているから。どこかへ足を踏み出したり、できない事にぶつかる時には、大きな不安で身体が拒否します。その不安の向かう先へ行こうぜ、と最近思います。
あとは悔しさ?かな。記憶の中にある「負け」の様な形をしたものを飲み込むために人は歪んでいくと思うんですが、その悔しさ。真っ直ぐに見つめて、それを隠したり、壊したりをせずにいる事。受け入れて誰かの痛みをわかろうとする事のような。
遠吠え
蒼然に幽麗に
霧もなくならない埠頭に
僕なんて何もさ
きっと残せやしないと知ってる
偶然に黎明に
どこかに見えている苦労に
創造で相反し
日々すら増やせないかい?
きっと誰も辿り着いた事のない
場所がどこかにはあるはずなのよ
いつもどんな顔で暮らしてる?
君はどこに?
いつも掴んで抱いて離さない
いつか見た亡霊達と踊りましょ
君だけの苛立ちもフェイクも全部背負い込んで
使い古しも笑いましょ
いけ好かない街へHowl!
君を見てたいよ
好きの方に普段通りに
無限にある通り
有耶無耶にしてまた素通り
吐きそうで聴いたガーシュウィン
意味とかよりもただ楽しい
偶然の瞬間に
ただ会えようかペッパーズミー
湧き出る好きで腕まくりして
寝転んで で目隠し
名前より聴いたあの曲も
三本折れてさようならよ
哀しくなってしまうなんてさ
言い訳も増やせないかい?
きっと誰も辿り着いた事のない
場所がどこかにはあるはずなのよ
いつもどんな顔で暮らしてる?
君はどこにいるの
いつも不安で揺れてわからない
君がいた場所さえもう遠いでしょ?
言いかけの諍いも懸想も全部吐き出して
なし崩しで笑いましょ
いけ好かない街へ放る
意味もまだないような苦悩に
月明かり
好かれたいだけだって
泣きじゃくっていても
悔しさも味わって食ってしまえば
指切った昔に
遠吠えるような
「負け」に似た音
掻き消されてしまわないで
繋いで抱いて渡さない
もう譲れない亡霊達と踊りましょ
君だけの苛立ちもフェイクも全部背負い込んで
愛してると笑いましょ
いけ好かない街へHowl!
君と行きたいよ
好きの方に 不安通りに
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演奏は自分で全てやっています。少しずつベースが上手くなってきました。ギターソロやリフは変なことをせずコードトーン多めで実直に弾きました。2Aのラップメロ的なパートから、12小節でギターソロに行くのが生理的に歪で好きです。
ギターは音を作るのが難しかった。たまたまキーを調整してる時に残った、録り音からキーを下げたギターの倍音が心地よかったので、半音上げて録ってデータ毎一音下げてます。倍音の位置がテレキャス的な音なのにくぐもった感じが聴いて取れるかと思います。
歌は全体を5セント〜10セントほど(440Hzに対しては442Hzくらい?)高くしています。ピッチがジャストに当たると楽曲のムードというか意思が揺らいだのでそうしました。軽快でひらけていて、どこか真っ直ぐな印象になっていたら嬉しいです。
あとは2サビ2周目前後のコードは仕掛けています。歌詞の内容と照らしながら想いを辿ってくれると、きっと僕は喜びます。参考程度にコードを貼っておきますね。
あとこれだけ特筆させてください、
アートワークは1st EPの「逃避行の窓」の頃からお願いしているカチナツミさんなんですが、めちゃくちゃ良くないですか!清洌で本能的!!!
自分のアーティストページにこのアートワークがある事をとても幸せに思います。それくらい楽曲を掴めていると感じていて好きです。本当にありがとうございます。
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いろいろと書きましたが、読んでくれてありがとう。本音で話し過ぎたかもしれないです。これからたくさん動きます、気に留めて楽しんでくれたらよいです。
「遠吠え」について書きましたが、こういうセルフライナーノーツ的なものもまだまだ書いていくのでフォローなんかもよろしくお願いします。
「遠吠え」Credit
All instruments : Masato Omi
Vocal Recorded : Kosuke Sakata (bluesofa)
Mixed & Masterd : Shojiro Watanabe
Artwork : カチナツミ
MV Credit
Starring : Masato Omi
Director : Rintaro Miyawaki
DOP : Sho Nakajima
AD : Hana Koike
Cast(Bike) : Reiya Nakao
photo by Hana Koike