liner note___ep.2「嗄れ」
嗄れ(シワガレ)
繋いで離してしまったら
もう戻れないらしくて 雨粒が見えて
夜の終わりが朝に変わって
溶けてしまったら欠伸を交わすんだ
反射した雨音 消えるまで抱いていて
その温度の奥 意味すら遠い
いつか夜が終わってしまうまでに
君が満たす優しさを
どんな風に話せば伝わるかな
わからないまま
朝が 音が側で笑っている
鈍色に照らすカーテン
耳に残る声 さりげなく
焦って放してしまえたら
どんなに良かったんだろうね わからず仕舞いで
いつも触れられない肌 無性に 情けなくて苦笑して
振り返らないで そのままで
雨傘 通り過ぐ 指先はざらざらして
生まれる陽ざしに翳して
いつか気持ちは去ってしまうから
君がいない味気なさを
どんな風に話せば伝わるかな
わからない ただ
そんな君が僕を救っている
嗄れた街並みに涙を塗る
いつか夜が終わってしまうまでに
君が満たす優しさを
どんな風に話せば伝わるかな
わからないまま
雨は彼方 君は笑っている
後ろめたく通る風
耳に残る声 さりげなく
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白んでいく朝方に、例えば誰かと話をしていたとして、とても素直になることがある。
でも、そこでその相手に、何かを伝えられずに、そのまま、まるで熱された硝子のように引き延ばしていく時間がぷつりと切れ、宙に溶ける。
ああ、また重大な何かを伝え忘れた。そう思う。
「あなたがいなくなる事より、あなたがいなくなる事を信じてた自分が嫌よ。」
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爽やかの裏側に潜む、暗がりというか、素直さの奥にある歪みというか。
人の気持ちは単一的でなくて、それは自分で認識している以上にシンプルではなくて。時に真逆の感情が同時に存在することすらある。
なんとなく、そんなことを朝日が上る前の時間帯に感じていました。深夜3時から朝の6時頃によく近所を散歩するんですが、そんな時間には限りない死の気配と、始まりの活力満ちるのびやかさみたいなものが同居している、と。
それは形にしなければいけないほど、愛おしい時間で、そんな時に脳内に流れるのはどんな音楽だろう?というところから始まりました。
もともとデモの時点での仮タイトルは「夏の宵」というもので、言葉の響きからつけました。意味は置いておいて「夏」という漢字がすごく好きで、フォルムに疲れを感じるというか、帰り道のサラリーマンの背中っぽいというか、、。「嗄れ」という曲名は「夏」という漢字がありつつ、隠と陽のバランスが絶妙な、気に入っている曲名です。
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聴いて欲しいポイントも記しておきます。
まずBメロ(0:55〜)。頭のDM7に対して、歌のラインがE♭という、はちゃめちゃな不協和なんですが、気持ち低めに歌うことで、良い雰囲気になったのでそのままにしてます。ちゃんと気持ち悪さがあって、「モヤっ!!」とする。それがサビ頭での心地よさ、開放感に繋がっていると感じてくれたら僕も同意見です。
そして、奏者として入ってくれているのはDr.高橋直希さん、Ba.山本修也さんという素晴らしいお二人。各々の試しと考えを擦り合わせながら、楽曲の核に一緒に迫りつつレコーディングさせてもらいました。演奏は特に2番Aメロ(2:10〜)の圧倒的グルーヴに呻きました。演奏だけで何度でも聴きたい。いやあ素晴らしい。
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読んで頂きありがとうございました。誰かの相反した時間が、不思議に優しく包まれたなら、これ以上ない幸せです。
SPARKLE / 山下達郎
最終列車は25時 / Lamp
恋はリズムに乗って feat.大木美佐子 / 口ロロ
to the moon / Yogee New Waves
最後に、上記四曲の参考楽曲とその制作に携わった方々に、多大なる感謝を。
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