夢見モグラは空を待ち侘びて 70日目
窓から見える小さな苗木が、
日々少しずつ背丈を伸ばすのを、
空はとても楽しみにしていた。
少女は欠かさず水やりをしてくれたし、
その度にこちらに向かって笑顔で手を振ってくれた。
すぐにその背丈を追い越してしまって、
少女もその成長速度には驚いていた。
ピーピーピーと、
機械から聞き慣れない音が部屋の中で鳴り響いた。
空の身体に沢山つがなっていた管のうち一本が、
じんわりと赤く染まるのが見えた。
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どこまでの世界を生きるか、という話。
どうやらこの緊急事態宣言もあと4日で解除されるらしい。
この緊急事態宣言、字面の破壊力からして、
僕の想像していたのはもっと、
夜になるとサイレンがウーウー鳴り響いて、
外を出歩いていると捕まって閉じ込められてしまう世界線であったのかもしれない(映画の見過ぎです)。
空は雲ひとつなく綺麗だし、
お日様はポカポカあったかいし、
家のベランダでのんびりと日向ぼっこをしながら、
今は飛行機が通り過ぎるのを見上げて、
くしゃみを連発しながら、
これ以上ない平穏の元、この原稿を描いている。
どこかで医療器具のアラームが、
サイレンのようにウーウーなるような状況があるのかもしれない。
逼迫、とは行き詰まって余裕のなくなること。
ずっとライブに行きたいのだけれど、
仕事柄、我慢しています、という文字を目にするたびに、
自分が本当に今すべきことは何なんだろう?と一度手が止まる。
俯瞰で地球を地球儀のようなサイズ感で見渡せば、
もっとウイルスが悪さをしている場所もあったり、
そもそも世界のどこかではそれ以前に銃弾が飛び交い争いが絶えない地域もある。
はて、どこまでの世界を生きるか、という話。
自分の手の届くところ。
この両足で歩いて、両手を広げて抱き寄せれられる範囲。
声の届くところ、文字、意識の届くところ。
住んでいる街、住んでいる都市、国。
それ以外の放っておいたら一生関わらないであろう出来事、世界。
自分の存在という、ポツンとペンで印を打った、
たったひとつの点から、
物理的に届く、意識的に届く、間接的に届く、
どこまで世界を広げて生きていくのか。
まだまだ遠い世界を見てみたいし、自分の部屋でただゴロゴロもしていたい。
交友関係なんてものは広ければいいってものでもないし、
近くにあるものも大切に出来ないと。
どこまでの世界を生きるか、
大胆に丁寧にいきたいよね、と思うところ。
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本日の表紙はamilk0720さんの写真を使用させていただいております。