セールス・コンサルタントと詐欺師は紙一重!忘れてはいけない「善意」!!
2019年4月に㈱食農夢創を設立して起業するまでに、私は野村證券㈱で営業を7年8ヵ月、出向先の野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱でコンサルタントを7年4ヵ月していた。そのうえで感じることは、営業マンとコンサルタントは詐欺師と紙一重だということ。今回はその理由を自由気ままに述べてみたい。
「自己責任」という言葉に守られている証券会社
証券投資を経験したことがある人は「自己責任」という言葉を一度は聞いたことがあると思う。「自己責任」とは、株や投資信託、債券等の金融商品に投資するのはあくまで投資するお客様個人の責任ということである。
自己責任原則
有価証券の取引等の投資は投資者自身の判断と責任において行うべきであるとの考え方のこと。自主規制規則において、投資勧誘に当たっては、顧客に対し、投資は投資者自身の判断と責任において行うべきものであることを理解させることを求めている。
確かに最終的には商品を購入するのはお客様である。現に私は自分で投資もしているが、儲けようが損をしようが「自己責任」ということで割り切っている。しかし、それはあくまで自分で興味を持った商品を調べて購入しているからである。
全てを「自己責任」で片づけてしまって良いのか?
ただ私はこの「自己責任」という言葉をはき違えているセールスが多い気がしてならない。セールスが「この商品は儲かると思います!」と紹介した金融商品をお客様が購入した場合、確かに最後に金融商品を購入すると「決断」したのはお客様である。その点では「自己責任」は間違っていないだろう。
一方で、大手企業の株式やリスクの低い投資信託や債券であればともかく、リスクの高い商品、例えば新興国の株式や債券、レバレッジのかかった仕組み債等については、その担当者があんないしなければお客様は知ることすらなかったのではないかと考えてしまう。つまり、いくら「自己責任」だからと言っても、そのリスクの高い、また複雑な金融商品を知る「きっかけ」を作ったセールスに本当に責任はないのか?という疑問を持っている。
「自己責任」に逃げずにお客様に寄り添ってほしい
「そんなことを言ったら営業なんてできない!」
そんな声が聞こえてきそうである。勘違いしないで欲しい。だから補償をするべきだと言いたいわけではないし、「きっかけ」を作ったことを否定しているのではない。その金融商品を本当にそのセールスが理解しているのか?今の相場に合っているのか?そのお客様の資産運用にとって必要なのか?ということを本気で考えて欲しいのである。
数字欲しさに数字を稼ぐためのセールストークを考えるセールスを散々見てきたし、私自身がそのような取引をしていないかというと胸を張って「していない!」と言える自信はない。ただ「自己責任」という言葉に逃げず、相場が悪化してお客様が損をしても逃げずにきちんとフォローをして欲しい。
コンサルティングは金の切れ目が縁の切れ目
上記のような理由も含め、自分のキャリアについて考えた上で、新設されたばかりの野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱の社内公募に応募し、幸運にも出向することができた。
野村アグリプランニング&アドバイザリー㈱は農林漁業分野の調査・コンサルタントを行う会社であり、当時在籍していたコンサルティング部の3名は㈱野村総合研究所(NRI)のコンサルティング本部から出向していた。その上司の下でNRIのコンサルティングを勉強させてもらえたのは本当にラッキーであった。
在籍した7年4ヵ月でたくさんのコンサル案件に携わった。しかし、コンサルティングの必要性も感じる一方で、証券営業以上に責任があいまいな業界であるようにも感じたことが多々あった。例えば、事業戦略策定コンサル支援を行ったとする。その成果物は事業計画書になる。そして、次のフェーズで実際に実行支援を行うという流れになるが、コンサル料が払えないと継続して支援はできない。
まさに「金の切れ目が縁の切れ目」である。そのような場合、たいてい作成した事業計画は実施されることはないし、コンサルが作った計画を実施したしてもクライアント本気で一緒に考えていなければ成功する確率は低い。しかし、言葉を濁さずに言えば、契約をきちんと履行さえすれば、そのクライアントがその後どうなろうとコンサルタントに責任はない。
曖昧だからこそいくらでも手を抜ける
コンサルティングの案件では複数のコンサル会社に提案(プレゼン)させて、内容や金額で判断するコンペがあることが多い。私もコンペで負けて悔しい想いをしたことが幾度とある。しかし、それは自分の実力不足なので仕方がない。
しかし、一つだけ忘れられない案件がある。ある行政のコンペで負けたのだが、その事業が終わって公開されたアウトプット(報告書)を見て愕然としたのである。それはあまりにレベルが低く、どう読んでも本気でその行政や生産者のことを考えた内容に感じられなかった。
後で聞いた話であるが、我々が負けた理由は「金額」であった。もちろん安く受注すること自体に文句を言うつもりはない。しかし、金額を安く受注しておいて、アウトプットの質を下げたら本末転倒ではないだろうか。(そのような会社は自分で自分の首を絞めているのだが・・・)
しかし、残念ながらこのようなことは実際に良くある。受注する前は大風呂敷を広げておいて、いざ受注した途端に「この金額では無理ですよ。」と開きなおるコンサルタントがいる。また、ノウハウがないのに「できますよ!」というコンサルタントもいるが、それは当然論外である・・・。
結局は「人」。「善意」を忘れてはならない。
最後に補足をしておくが、私は決してセールスやコンサルタントを否定しているわけではない。実際に野村證券にはお客様のことを考える優秀なセールスは多いし、今でも尊敬している上司もいる。もちろん、NRIや野村アグリプランニングにも優秀なコンサルタントが大勢いる。そして、今の私があるのは野村證券での営業時代と野村アグリプランニングのコンサル時代があったからこそである。
一方で、セールスやコンサルタントは「口(トーク)」が武器の一つであり、悪い言い方をすれば「口が上手い」人が多く、やろうと思えばいくらでも嘘をつくこともできるし、さらに言えばお客様を騙すことだってできてしまう。だからこそ、我々は「善意」を決して忘れてはならないのである。
もちろん、セールスでもコンサルタントでもサラリーマンであるなら収益責任(ノルマ)があるのは当たり前である。しかし、本当にお客様のためになっているのかは常に問い続けて欲しい。野村證券時代、上司に「自分の親にその商品を本当に案内できるのか?」と言われたことがある。確かに本当にお客様のためになるのであれば、自分の親にも購入してもらうべきである。
私もいくつかの金融商品を実際に親に購入してもららい、迷惑をかけたことも少なくない。しかし、「仲野は相場感や証券マンとしての素質がないのでは?」というのは今回の趣旨とは別な話・・・(笑)