2024に読んだ49冊からベスト5
今年も残すところ、あと3日。毎年恒例の今年読んだ本の中から、心に残ったベスト5の本を紹介したいと思います。
最後にはTOP10も載せました。ご笑覧いただけると幸いです。
5. 世界の適切な保存 永井玲衣
出会いは渡邉康太朗さんのTakram Radioの永井さん回です。戦火・災禍時の広島原爆投下から逃げるときにカバンから投げた糸の色が綺麗だったという話や、ひめゆり記念館にある女生徒が特徴から先生にあだ名をつける話など、大きな意味の流れの中の確かにそこにあった感動や経験について、とても楽しそうに話しているのがとても印象的で、何度も聞き返しました。
世界を適切に保存するということはどういうことか。詩のような体験談で語られます。自分が見た忘れ去られてしまう世界を保存したい気持ちになりました。
こういった忘れ去られてる何気ないことを少なくとも文字で記録しておくとその時の気持ちがよみがえる。適切な保存かはわからないが、こういった日常の異化の大切さを訴えるような本だった。
4. 民俗学の旅 宮本常一
昨年に続き、宮本常一さんの本にグッときました。宮本常一さんの半生が記された本。有名な父親から送られた10個の教えや、大阪での教職時代、渋沢敬三とアッチクミュウゼアムの話など、宮本常一の優しい眼差し、考えや価値観がどう形成されたのかが、垣間見える本です。
文字を持つ武士や貴族から書き残された歴史の裏側に、はるかに多くの文字を持たない無文字社会の庶民の歴史が横たわっている。無文字社会の庶民の歴史に関心を寄せた柳田国男は、民俗学の祖として、各地に伝承されている民話などから、より抽象的な人々の潜在的な心を掘り下げていく活動を展開する。一方で、宮本常一は、民具などのものや実際に各地の人の話をそのままリアルに描き出すより具体的な活動を展開する。世界の適切な保存にもつながる宮本常一の目線、やっぱり好きだな。
3. 日本の曖昧力 呉善花(オ・ソンファン)
日本の中にいるとなかなか日本の独自性に目を向けづらい。本書は、日本の本質は曖昧力であるという韓国出身の研究者による実体験を伴う日本論。我々は、フェノロサ、ルースベネディクト、ルイスフロイス、など外からの眼を読み解くことで、自国の理解を深めた。本書もそんな著書の一つではないかと思う。全ての日本人に読んでもらいたい一冊です。
2.自分とか、ないから。 しんめいP
本当にヤバイ本。仏教と言うとっつきにくそうなものを、ド日常に接続させ、読めば読むほど、生きずらさ(=苦)から解脱されるような経験ができます。著者のエピソードも素晴らしい。東大を出て、スーパー期待の新人として入社した会社で全くチームプレイができずできないやつとバレて死に際の猫のようにそっと退職。田舎で最高の教育をと意気込んで九州に行ったがチームプレイができず大失敗。ピン芸人ならと芸人になるもR-1グランプリ1回戦敗退で、芸人になることすら応援してくれた奥さんに「こんなにつまらない人だとは思わなかった」と離婚されてしまう。著者曰く度重なる”社会的な死"を経験するたびに、自由になっていった(その時は超苦しいが)。
そして、東洋哲学の本を書くようになった。縁起、空、道、不立文字、最高にわかりやすく、最高におもしろく書かれていますので、哲学書、兼、滑稽本として是非手に取ってみてください!
1. 発酵文化人類学 小倉ヒラク
発酵とは何か。
目に見えない微生物。ただし、確かに存在する微生物。人類を発酵とともに生きるホモ・ファーメンタムとしてとらえ、人類と微生物の愛すべき関係性を知的かつユーモラスに語った本。
発酵と文化人類学をつなげて語るとこんなに面白いのか!と目から鱗でした。国内の発酵の可能性を追求する地域の発酵職人の話も掲載されていて、是非実際に行ってみて発酵のすばらしさを体感したいと思わせる旅行本でもあります。本格的に発酵紀行を書いた本もあるようなので、来年もヒラクさんワールドに浸りたいと思います!
最後に。ベスト10。
今年も49冊の本を読みました(10冊は歴史漫画)。来年もどんな本に巡り合えるか楽しみです。皆さんの2024ベスト本は何ですか?
2024 ベスト10('24/12/28現在)
1. 発酵文化人類学 小倉ヒラク
2. 自分とか、ないから しんめいP
3. 日本の曖昧力 呉善花(オ・ソンファン)
4. 民俗学の旅 宮本常一
5. 世界の適切な保存 永井玲衣
6. 天、共にあり 中村哲
7.感情はすぐに脳をジャックする 佐渡島庸平、他
8. 営業の科学 高橋浩一
9. なぜ働いていると本が読めないのか 三宅香帆
10.北条五代 火坂雅志/伊東潤