見出し画像

小話(6)ミロのカラバサ

ついさっき、 2年前に下書きをしていた記事を発見したので、一人でビール缶2本をあけた
勢いで書き上げます。

夏(2022)に富山県立美術館で開催されていたジョアン・ミロの展示会に行ったときに最も感動した作品について書きます。

ジョアン・ミロ(1993-1982)は、抽象絵画と具象絵画のあいだと称される独自の画風で著名なスペインの画家です。それほど絵画に詳しいわけではありませんが、大学生の頃、作品「月に吠える犬」見て衝撃を受けて以来、TOP5には入る好きな画家のひとりです。

そんなジョアン・ミロの展示会が富山でやっているということで、東北から関西へ帰省途中、家族に行先も告げず、ハンドル握っていることをいいことに、富山美術館へ行きました(家族は展示を見ずに、富山美術館の周りで時を過ごしておりました)。

ミロの作品

どうしてそう言う絵になったの?線や形や色がデフォルメされて、何を書いているかわかりそうでわからない。そんな素敵な絵や陶芸が並ぶ中、目に入ったのは、一つのひょうたんのような置物でした。

ミロの作品


ミロのカラバサ

日本人の芸術評論家の瀧口修三は、ミロに関する書籍を世界で初めて出版するくらい、いち早くミロの才能を見出し、認めていました。そんなこともあり、二人は固い絆で結ばれ、1966年には、瀧口はミロを日本に招待することができました。そんな親交の深い瀧口にミロが贈ったとされるのが、このミロのカラバサです。

ミロのカラバサ

カラバサは、スペインのいわゆるひょうたんで自然物です。その自然物の中から造形の美しいもの(一説には首を曲げる癖のある瀧口に似たもの)をミロ自身が選定し、瀧口に送ったそう。瀧口は、そのカラバサを嬉しそうに周囲に自慢し、死ぬまで家宝として大切にしたと言われています。

世界的なアーティストのミロが作った作品でもなく、どこにでもある自然物を、ミロはその審美眼で選び、瀧口はそれをミロとの関係性の象徴として生涯大切にした。なんて粋な価値・意味の付け方と受け取り方、そして美しい関係性なんだと、2年前の夏に感動した。

そこらへんに転がっていそうな一見価値のないものを、自らの審美眼で選び、意味や価値を付け、一生大切にしたり、されたりするような体験が人生のうちに起こるといいなと思う2024/9/3の夜でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?