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三宅香帆「好き」を言語化する技術を読んで

自分が大好きなもの(推し)について、友達に伝えたいときやSNSで語りたいとき、どう言葉にしていいかわからない。そんな悩みありませんか?


そんな悩みに対して、推しについて語る理由から、具体的な伝える方法まで
実例を交えながら、教えてくれる本書。

推しについて語る上で大切なことを一言でいうと、
「自分の言葉をつくること。」です。

もう少し詳しく言うと、ありきたりなそれっぽい表現を使わずに、自分だけの感情、考え、印象、思考を言葉にすること。それっぽいというのが、大切です。

SNSなど、我々は今他人の言葉に影響を受けやすい環境にいる。その中で、他人の意見を自分の意見として語ってしまったり、批判や批評を恐れ、それっぽい表現で終わってしまう。

例えば、「この漫画、泣けてやばい。すごく考えさせられた。」のような感想。これでは、漫画の魅力が伝わらなくてもったいない。このような表現を避けるために、以下3つが推奨されています。


①よかった箇所の具体例を挙げる。

例)ライブが良かった=>1 曲目にxxが来たのが良かった、xxの歌詞がよかった、ダンスが格段にうまくなっていたなど。

②感情を言語化する どこにかんどうして、どう感情が動いたのかを記述する。

面白さは、「共感」か「驚き」に分けられる。自分の過去の体験との共通点、好きなモノとの共通点、どこが新しいのかを考えると感情を捕まえやすくなる。ちなみに、ネガティブな感情は、「不快」か「退屈」だそうです。

③すぐにメモをする。

SNSで発信する前に、自分だけのメモに①と②を書き溜める。自分の感想が降り積もった先に、自分のオリジナルの言葉が作られる。



これら3つを実践した後に、実際に書き始めるのですが、書き始める前に実践した方が良いのが、①読者を決める、②伝えたいポイントを決める、ことです。
①の読者を決めるは、相手との情報差があるときは、背景情報を詳しく書いたり、専門用語を避けたりすることで伝わりやすくなります。逆に相手が詳しい人の場合は、専門用語でより深い共感を生み出すなどの工夫ができるようになります。
②の伝えたいポイントを決めるは、あれもこれもとなると、伝えたいことがぼやけるので、書く前に何を伝えたいのかを決めておくことが大切だとされています。

好きなものをいつまでも好きであるかはわからない。今の好きである気持ちを言葉にして残しておくことで、自分の価値観の履歴、ひいては自分の人生(の歩み)を愛せるようになるのではないか。そのためにも、自分の言葉で自分の好きを語りませんか?と、三宅さんは提案しています。

推しについて語ることは、自分の人生について語ること。自分の好きなものは、是非自分の言葉で語れるようになりたいと思いました。

最後に、村上春樹さんのほんの少しの理由についての文章を載せます。好きでいることをやめる理由はたくさんあるけど、それでも好きでいる理由を大切に磨き続けたいと思いました。


走り続けるための理由はほんの少ししかないけれど、走るのをやめるための理由なら大型トラックいっぱい分はあるからだ。僕らにできるのは、その「ほんの少しの理由」をひとつひとつ大事に磨き続けることだけだ。暇を見つけては、せっせととくまなく磨き続けること(村上春樹)。

村上春樹「走ることについて語るときに僕が語ること」


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