22歳でシングルオリジンコーヒーの専門店をはじめた理由
NOZY COFFEE のコンセプト
NOZY COFFEEは、2010年の創業からシングルオリジンコーヒーの専門店として営業してきた。シングルオリジンコーヒーを簡単に説明すると、生産国、生産地域、生産処理方法が明確で、それらが一切ブレンドされていない豆をいう。当時はブレンドコーヒーが主流で、何も考えずにブレンドを頼む人が多かった。喫茶店でよく見かけたストレートコーヒーはマニアが楽しむもの、なんて見方もあった。そんな時代に、ストレートコーヒーよりもさらに細分化されたシングルオリジンコーヒーを、マニア向けではなくより多くの人に飲んでもらうことを目指した。高品質なコーヒーを普及させ、コーヒーのもっともっと奥深い世界を楽しんでもらうために。
スペシャルティコーヒーの誕生と課題
スペシャルティコーヒーは1970年代後半にアメリカで誕生し、その後日本では2000年頃から普及し始める。
しかし私が初めてスペシャルティコーヒーを知った2007年、周りにスペシャルティコーヒーを知る者はいなかった。日本ではまだスペシャルティコーヒーは広まっていなかった。でもなぜだろう。一般市場品と比べて価格があまり変わらないのに品質がまるで違うスペシャルティコーヒーは、爆発的に人気が出るはずなのに。スペシャルティコーヒーを扱う自家焙煎店も増えているのに、なぜ広まらないのか。
そんな疑問を抱きながら自家焙煎コーヒー店を回っていると、あることに気づいた。私がブレンドコーヒーを一切飲んでいなかったのだ。スペシャルティコーヒーのもつキャラクターがどんな産地や品種、生産処理からきているのか、毎回変わる味わいを、まるで旅するかのようにシングルオリジンコーヒーで楽しんでいた。
ブレンドが弊害に?
昔からブレンドの文化が根強いというのはご周知の通り。スペシャルティコーヒーを扱うお店でも、必ずブレンドコーヒーが用意されていた。そして来店する人の多くがブレンドを頼んでいた。常連の方にとってはいつものブレンド、初めて訪れた人はなんとなくのブレンド。消費者はブレンドコーヒーを見つけると、思考回路が止まったかのように反射的にブレンドを頼んでいるように見えた。メニューすら見ずにブレンドを頼んでいる人もいた。ブレンドコーヒーを楽しんでいることは否定しないが、私はどこかもったいなさを感じていた。もっと違う楽しみ方があるのになと。もしかしたらブレンドコーヒーの存在が、シングルオリジンコーヒーの楽しさを知る弊害となり、スペシャルティコーヒーの普及を妨げているのではないか、そう感じるようになった。
大学を卒業してすぐに起業
そして行き着いた答えがシングルオリジンコーヒーの専門店。あえて"ブレンドしない"ということを打ち出し、それまでのコーヒーの概念を変えることで、新しいコーヒーの楽しみ方に気づいてもらうことを目指した。わたしは最初は30歳くらいで起業できたら…と考えていたが、導き出したシングルオリジンのムーヴメントを起こすことは正解なのかを確かめるため、また美味しいコーヒーを早く多くの人に知ってもらうため、大学卒業後、就職せずに起業する道を選んだ。
何も考えずにブレンドを頼むという消費行動を減らすためにブレンドは置かず、また豆を選ぶ楽しさを感じてもらうため、2種のシングルオリジンでエスプレッソを用意した。カフェラテを頼まれるお客様にも豆を選んでもらい、コーヒー豆に興味をもってもらう仕掛けをつくった。
そしてこれから
創業から10年以上が経ち、コーヒー文化は大きく変化したと感じている。シングルオリジンを提供する店舗が増え、スペシャルティコーヒーを知る人も楽しむ人も増えた。創業時に掲げた目標はある種達成できたのかもしれない。NOZY COFFEE は、これまでと変わらず品質を追い求め、お客様にコーヒーを楽しんでもらうべく活動している。まぁお客様に楽しんでもらうと言いながら、実はスタッフが一番コーヒーを楽しんでいるのだが。(これがNOZY COFFEEの真髄です)
また長くコーヒー事業を続ける中で、生産者の存在が大きくなってきた。信頼関係を構築するために継続的な買い付けを行ってきたわけだが、創業時に販売していた農園が今でも店頭に並ぶことがあり、わたしは密かに感動している。彼らは、今では私たちの家族のような存在となった。これからさらに高品質コーヒーの市場を成長させ、熱心にコーヒーづくりに取り組む生産者たちを応援していきたい。
創業からこれまで、私たちはいくつもの挑戦、成功、失敗を繰り返してきた。中でもわたしの一番の失敗は、2019年12月に会社を畳んだこと。それまで応援してくれた株主様やお取引先様、お客様、従業員、家族に迷惑をかけてしまった。ただそれまで懸命に情熱を注いでくれた従業員とそれにより成り立っていたブランドは、大学の先輩に助けていただきブランドは存続し、従業員も全員NOZY COFFEEに残ることができた。私自身も現在はNOZY COFFEEのファウンダーとしてブランディングに携わっている。(ご迷惑をおかけしてしまった皆様方、その節は大変申し訳ございませんでした)
また様々な人やコーヒーとの出会いもあった。その背景やストーリーをこれからこのnoteを通じて発信していきたい。この世界に美味しいコーヒーのファンが増えることを願って。