ザ関西ヤンキー 03
「だぁっとれ、ボケが。おのれが四本打てんのか。はよ帰って、少女達のおマンコの世話しとけ、どあほぅが」生駒は自分の打席で三本の本塁打を打っている。真っ直ぐの最速を時速一五〇キロに設定してある。球種はランダムで、スライダーとカーブ。
たかだかバッセンのマシン相手だが、二十球で、狙って直径五十センチの小さな的に三球当てることは、誰にでもできることではない。生駒の上を行くには、四発、あの的に打球をぶつけなければならない。
俺がケージの中に入り、打撃用の手袋をつけていると、ズボンのポケットで携帯が震えた。「ハイド」と表示されていた。無駄にテン張った表情が浮かんできて憂うつな気分になった。
「あー、わりぃー、今ちょっと手が離せん」
「成元先輩、この時間に抜けられると回らないっすよ、マジで。予約めっちゃ入ってるし」携帯の受話器越しにハイドの弱音がよく響く。
「それはそれは、商売繁盛でけっこうなことやで。今な、バッセン源田で、硬球打っとんのや。一五〇キロやぞ」
「マジッっすか、それ? ほんまにあるんですね」テン張った声が失せて、急に静かになった。
「ん? おお、ほんまやぞ。龍ヶ崎に生駒っておったやろ、クソ厳つい左バッター。あいつとサシの勝負中や。というわけで、後宜しく」理由を聞くと、ハイドは案外あっさりと引き下がって、電話を切った。
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